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【抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 2030 ET 21.02.2024 “アウジーウカ撤退時のウクライナ側損失に関するウクライナ軍当局の見解”

本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年2月21日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。

[*記事サムネイル画像:ウォール・ストリート・ジャーナル紙のYouTube動画より]

アウジーウカ撤退時のウクライナ側損失に関するウクライナ軍当局の見解

報告書原文からの引用(英文)

A Ukrainian official denied a recent New York Times (NYT) report that Russian forces may have captured “hundreds” of Ukrainian soldiers during Ukraine’s withdrawal from Avdiivka, Donetsk Oblast. Ukrainian Tavriisk Group of Forces Spokesperson Dmytro Lykhovyi acknowledged on February 21 that Russian forces did capture some Ukrainian soldiers during Ukrainian forces’ withdrawal from Avdiivka, but stated that reports about “hundreds” of Ukrainian soldiers being taken prisoner or otherwise being unaccounted for are false. Lykhovyi suggested that the NYT’s February 20 report is an extension of Russian information operations aimed at demoralizing the Ukrainian military and noted that Russian propagandists would have shared footage of large numbers of Ukrainian prisoners of war (POWs) if Russia had actually captured that many Ukrainian soldiers. Lykhovyi noted that Russian media widely shared footage of large numbers of Ukrainian POWs after Russian forces seized Azovstal in Mariupol, Donetsk Oblast in 2022. ISW recently noted that “unaccounted for” personnel include those killed, wounded, and missing in action as well as captured, and ISW has still not observed any open-source evidence of Russian forces taking large numbers of Ukrainian forces prisoner. ISW will continue to monitor the information space for evidence and will adjust its assessment as more evidence becomes available.

Russian Offensive Campaign Assessment, February 21, 2024, ISW

日本語訳

ドネツィク州アウジーウカからウクライナ軍が撤退する際に「数百人の」ウクライナ軍兵士がロシア軍の捕虜になったとニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が先頃、報じたが、ウクライナ当局者の一人はこの報道の内容を否定した。

2月21日、ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団ドミトロ・リホウィー報道官は、アウジーウカからのウクライナ軍撤退の際にウクライナ兵の一部が確かにロシア軍の捕虜になったことを認めつつも、「数百人の」ウクライナ兵が捕虜になった、もしくは、行方不明になったという報道は誤りであると語った。2月20日付NYT紙報道は、ウクライナ軍の士気低下を狙ったロシアによる情報工作の伸長であることを、リホウィーは示唆したうえで、仮にロシアが実際にこれほど多くのウクライナ兵を捕虜にした場合、ロシアのプロパガンダ発信者は、たくさんのウクライナ人戦争捕虜(POW)が映った動画を拡散させただろうと指摘した。また、ロシア軍が2022年にドネツィク州マリウポリのアゾフスターリを占領したのち、ロシア・メディアは多数のウクライナ人戦争捕虜が映った動画を広く拡散させたことにリホウィーは触れた。「行方不明の」将兵には、戦死者・負傷者・作戦行動中行方不明者、そして捕虜になった者が含まれることを、ISWは直近の報告で指摘した。そして、ロシア軍が多数のウクライナ軍人を捕虜にしたことを示す証拠となる公開情報を、ISWは今のところ、確認していない。ISWは証拠となる情報を得るために、今後も情報空間のモニターを続け、より多くの証拠情報が入手できるようになり次第、評価判断内容を修正する予定でいる。

補足

ウクライナ軍のアウジーウカ撤退がすべて順調なものではなかったことを、ウクライナ・メディアも伝えています。以下にリンク先を示したキーウ・インディペンデント紙の記事は、アウジーウカ方面からの撤退の際、ウクライナ軍に組織的とはいえない撤退行動があり、その結果、多くの損失を被った部隊があったことを伝えています。

以下、上記記事からの引用です。

アウジーウカからの撤退は遅かったし、組織的ではなかった。だから、多くの兵士が激しい砲火のなか、徒歩で脱出するしかない結果になった。キーウ・インディペンデントにこう語ったのは、ウクライナ軍第110独立機械化旅団の隊員4名だ。なお、この部隊はアウジーウカ防衛戦に投じられた大規模な部隊であった。

アウジーウカ防衛は、他地区に投じられる可能性があったロシア側攻勢遂行能力をすり減らしていったという点で有効であったことに関しては同意しつつも、複数の西側の軍事専門家は、撤退の実施が遅すぎたことへの批判もしている。ウクライナがバフムート、ソレダール、シェヴェロドネツィクにおいて、同じように犠牲の大きなミスをしてきたことを、軍事専門家は指摘した。

“Ukrainian soldiers recall retreat from Avdiivka – on foot, leaving their wounded behind”, The Kyiv Independent

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