本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年11月26日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、記事中の初出地名は、Google Maps上の該当箇所とリンクしてある。
アウジーウカ方面の戦況
報告書原文の一部引用(英文)
日本語訳
11月26日、ロシア軍がアウジーウカから見て北西及び南東にある地点で前進したことが確認されている。撮影地点特定済みの11月26日公開の動画に、ロシア軍がクラスノホリウカ(アウジーウカから北西に7km)から見て北西にある地点と、アウジーウカ南東外周部の工業地区内東部で、わずかだが前進した様子が映っている。撮影地点特定済みの11月26日付動画には、アウジーウカ南東外周部の工業地区内北部のウクライナ軍陣地を、ロシア軍装甲車両が攻撃する様子が映っている。ロシア軍は11月26日にヤシヌヴァタ2鉄道駅付近の工業地区全体を占領し、その前の11月25日にこの地区で最後まで残っていた建築物の掃討を済ませたと、ほとんどのロシア軍事ブロガーが主張した。だが、今のところ、この主張を裏付ける映像を、ISWは確認していない。ロシア軍事ブロガーの主張によると、工業地区は小高い丘に位置しており、その結果、アウジーウカ外周部のウクライナ軍に向けてロシア軍が砲撃することが可能になり、そこから攻勢作戦をさらに進展させていくことも可能になることが見込まれるとのことだ。一方で、ロシア側情報筋のなかには、工業地区の占領はロシア軍のさらなる攻勢作戦遂行を容易にしないだろうし、そのため、アウジーウカのほかの側面で攻勢を進めていく必要性、もしくは、迅速かつ決定的な結果を達成するためにもっと多くの兵員を動員する必要性がロシア軍に生じるだろうと、主張した者もいる。ロシア軍事ブロガーはまた、ロシア軍がアウジーウカ・コークス工場に隣接する鉄道線の近くで足場を得たと主張している。ロシアの有名軍事ブロガー・アカウントの一つは、11月26日に行われたアウジーウカ・コークス工場へのロシア軍の攻撃と、ステポヴェ(アウジーウカから北西に3km)付近へのロシア軍の攻撃すべてが、ウクライナ軍によって撃退されたと主張したうえで、ロシア軍は過去1週間で東側からのアウジーウカへの進入経路とノヴォカリノヴェ(アウジーウカから北に7km)付近で前進したという見解を示した。この軍事ブロガーの見立てによると、ここ1週間のロシア軍の進撃はウクライナ軍に対して差し迫った脅威を与えておらず、アウジーウカ占領を目指すロシア側の取り組みへの効果もなく、ただ前線を広げる結果になっただけであるとのことだ。また、ウクライナ軍参謀本部は次の地点でロシア軍の強襲攻撃を撃退したことを伝えている。その場所は、ノヴォバフムティウカ(アウジーウカから北西に9km)から見て東方の地点、ノヴォカリノヴェから見て南方の地点、シェヴェルネ(アウジーウカから西に6km)付近、ステポヴェ付近、アウジーウカ付近、ペルヴォマイシケ(アウジーウカから南西に11km)付近とのことだ。
ウクライナ軍は11月26日にアウジーウカ戦線での反撃を続けた模様だが、前進成功の主張、もしくは、確認された前進はなかった。あるロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍はステポヴェ付近の強化防御陣地から撤退したが、反撃を継続しているとのことだ。また、別のロシア軍事ブロガーの主張によると、ウクライナ軍はアウジーウカ南東外周部の工業地区で反撃を仕掛けたものの、この地区で喪失した陣地を取り戻すことに失敗したとのことだ。