本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年1月21日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
クプヤンシク方面
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
クプヤンシク〜スヴァトヴェ線沿いでの陣地戦が続くなか、ロシア軍が1月21日にスヴァトヴェから北西の方向で前進したことが伝えられている。クレムリンに後援されている有名軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がクロフマルネ(スヴァトヴェから北西)から南西の方向で前進し、ベレストヴェ(スヴァトヴェから北西)の東側外周部に接近したと主張した。この軍事ブロガーの主張によると、R-07(スヴァトヴェ〜クプヤンシク)高速道路の区間のうち、クロフマルネ付近の4km幅の区間とノヴォセリウシケ付近の詳細不明の区間を、ロシア軍が最近占領したとのことだ。ただし、ISWはこれらの主張を裏付ける情報を確認していない。ロシア国防省は、ロシア軍がクロフマルネを占領したと主張しており、ウクライナ陸軍司令部報道官ウォロディミル・フィティオ中佐も、この集落からウクライナ軍が撤退したことを認めた。ISWは1月20日公開の撮影地点特定済みの画像を確認しており、その画像にロシア軍のクロフマルネ占領が示されている。また、複数のロシア側情報筋は、この画像に映っているのは、クロフマルネ集落内にいるロシア軍第47親衛戦車師団(西部軍管区第1親衛戦車軍)所属部隊だと主張した。1月21日、ロシア・ウクライナ双方の情報筋はこの方面で陣地戦が続いていることを指摘しており、具体的な戦闘場所は、クプヤンシクから北西の方向のシンキウカ付近とリマン湖付近、クプヤンシク東方のペトロパヴリウカ付近、スヴァトヴェから北西の方向のクロフマルネ付近とステルマヒウカ付近、スヴァトヴェ西方のコロミーチハ付近であるとのことだ。フィティオ報道官によると、2024年1月の期間、現時点でロシア軍はクプヤンシクとリマンの両方面において7,055人の兵力を失っており、この両方面において2023年12月の1カ月間で、ロシア軍は約14,000人の兵力を喪失したとのことだ。
アウジーウカ方面
報告書原文からの引用(英文)
日本語訳
ロシア軍が最近、アウジーウカの南方及び南西の方向で前進したことが確認された。1月21日公開の撮影地点特定済みの動画に、「ツァールスカ・オホタ」料理店エリアで、ソボルナ通り(アウジーウカ南方)と、アウジーウカから南西の方向に位置する樹木線に沿って、ロシア軍が前進した様子が映っている。ウクライナ人軍事ウォッチャーのコスチャンティン・マショヴェツは、ロシア軍がコロソヴァ通りとレルメントヴァ通りに沿って前進したと主張したが、ISWはこの前進の主張を裏付ける映像を確認していない。ロシア・ウクライナ双方の情報筋によると、この方面で陣地戦的交戦が続いているとのことで、具体的な戦闘場所は、アウジーウカから北西の方向のノヴォバフムティウカ付近とステポヴェ付近、アウジーウカ市北西に位置するアウジーウカ・コークス工場付近、アウジーウカ西方のシェヴェルネ付近、アウジーウカから南西の方向のペルヴォマイシケ付近、ヴォディヤネ付近、ネヴェルシケ付近とのことだ。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団司令官オレクサンドル・タルナウシキー准将と同部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐によると、ロシア軍はアウジーウカ方面での動きを激化させる準備を整えているところで、この地区に40,000人を超える兵力を集結させているとのことだ。また、タルナウシキーは、ロシア軍が過去2日間、タヴリーシク方面(アウジーウカからザポリージャ州西部まで)でまったく空爆を行わなかったことも指摘した。マショヴェツによると、アウジーウカ南方で作戦行動中のロシア軍は、第1自動車化狙撃旅団(ドネツク人民共和国[DNR]第1軍団)、第55自動車化狙撃旅団(中央軍管区第41諸兵科連合軍)、「ヴェテラニ」偵察突撃旅団(志願兵突撃軍団)のそれぞれに所属する部隊であるとのことだ。また、ロシア軍第9自動車化狙撃旅団(DNR第1軍団)所属部隊がアウジーウカ付近で作戦行動を続けていることが伝えられている。