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【SNS英文投稿和訳】ウクライナ勝利への道。そして、それに必要なもの。(ウクライナ軍元将校Tatarigami氏 | 日本時間2024.09.11 04:59)

本記事は、上記リンク先のロシア・ウクライナ戦争に関する見解を述べたSNS英文投稿の日本語訳です。

投稿者のTatarigami氏はウクライナ軍元将校で、戦争・紛争分析チーム「フロンテリジェンス・インサイト」を創設し、ウクライナ戦況等の分析を発表されている方です。

なお、翻訳記事中の[  ]内の記述は、訳者による補足になります。

日本語訳

勝利への道は、私が考えるところ、たとえばF-16やATACMS[陸軍戦術ミサイル・システム]といった単一の兵器システム、あるいは、単一の兵器プラットフォームに依存しているわけではない。勝利への鍵は、私がみるところ、ウクライナ軍の質的向上と漸進的な戦力構築、そして、ウクライナの経済的適応を、長距離兵器システムの供与と組み合わせる点にある。

新しい能力を得ることはインパクトを与えてきたが、ごく一部の例外を除けば、新能力獲得の全般的影響は、実体の伴う外交努力やその努力を求める世論と比較すると限定的なものであり続けた。新能力をもたらす兵器プラットフォームの供与が小規模なときは、なおさらそうである。ウクライナが実際に必要なものは、中核的な戦闘アセットを組織的に構築し、更新していくことであり、また、作戦戦略レベルでの計画立案水準を向上させることでもある。

たとえば、"ブラッドレー"IFV[歩兵戦闘車]の追加供与は、瑣末な戦術次元の話にみえるかもしれないが、必要とされる装甲車両のたった10%程度しか装備していない機械化旅団しかもてないことは、たとえ新たな長距離攻撃能力が与えられたとしても、作戦面での深刻な不利を生み出す。このような状況下でIFVやほかの装甲戦闘車両を供与することは、機械化旅団の能力を、効果的な機動戦を遂行できるレベルまで回復させることになる。この問題を象徴的に示すよい例として、まるでウクライナには戦闘能力のある旅団がほかにまったくないかの如く、特定の有名な旅団だけがいつも同じように、戦線上の最も困難な地域へと、何度も何度も繰り返し派遣されているというものがある。

ほかの例も示そう。この戦いの舞台における重要兵器である火砲システムを、ウクライナが最後に大規模な数で受け取ったのはいつのことだったか?  この侵略の3年目に、ウクライナが必要とする砲弾需要は満たされているのか?  読者の皆さんは供与された数量と、Oryxのような情報源が記録した損失数をいつでも比べてみることができる。2022年に何かが供与されたことが、その供与物資が今でも機能していることの理由にはならない。おそらくは、だめになっているものと思われる。

マンパワー問題はしぶとく続いている。主な原因は国内的なものだ。だが一方で、この問題は適切に武装し、適切に訓練を受けた部隊が不足していることによって悪化している。この結果、死傷率はますます高くなり、募兵活動にネガティブな影響が及んでいる。

ウクライナが必要としているのは、全領域における包括的かつ継続的な支援である。具体的には、野戦病院装備品、救急救命車両、迫撃砲、野砲、IFV、対砲兵戦システム、電子戦デバイスと通信デバイス、対戦車兵器と対空兵器、地雷、ドローンといったものに関する支援だ。ATACMSやF-16といった新しい兵器システムは、価値のある能力を提供している。たとえば、兵站拠点や指揮センターへの攻撃といったことだ。だが、このような攻撃は、その後に生み出されたチャンスを活かすべく、機械化部隊や空中強襲部隊による機動作戦が続かなければ、限られた影響しか及ぼせないだろう。

この戦争におけるほかの重要な側面は、ウクライナ国内の生産にある。この分野でウクライナは2022年と比較して、かなり大きな進歩を示している。2022年当時、ノヴォロシースクやモスクワ、もしくはプスコフのような、かなり離れたところにあるロシア領内の地点に届く攻撃を毎週行うという考えは、非現実的だとみなされるものだった。

国内の軍需生産を加速させる目的でウクライナ戦略産業省が着手した"ズブロヤリ"のようなプロジェクトは、必要な牽引力や国際的な支援をまだ獲得するに至っていない。この取り組みはATACMSの供与以上に、関心とリソースが注がれるべきものだった。というのも、十分に発展し、十分に守られたウクライナ国内の生産と比べ、ATACMSの供与は戦略的観点でみて、重要さの程度が落ちるからだ。結局のところ、石油精製所への作戦をとてもうまく成功させて、ゲームを変え始めたのは、ウクライナ製ドローンなのだ。その理由は、これには西側からの許可が必要なかったからだ。

最後に大切なことだが、作戦-戦術レベルと作戦-戦略レベルの双方における指揮の水準を大きく向上させる必要が、私たちウクライナにはある。残念なことに、既存の指揮体制は前線に深刻な問題を引き起こしており、それはドネツィク州において顕著になっている。これは取り組むのが最も難しい問題の一つである。なぜなら、現在の制度は、人的なコネクション、政治、忠誠心といったものに基づいており、有益さや結果に基づいた制度ではないからだ。このレベルでの変革は、西側からの単なる助言や訓練では対処できず、まずは問題認識から始めることになるが、政治指導部と軍上層部の関与が必要になる。

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