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【報告抄訳】ISW ロシアによる攻勢戦役評価 1630 ET 09.08.2023 “ベラルーシのワグネル、ロシアへ撤収か”

以下は、ISW(戦争研究所)の2023年8月9日付ウクライナ情勢報告の一部(添付した文書画像箇所)を、日本語に訳したものになります。なお、今回の訳出範囲は添付文書画像のマーカー箇所のみになります。


https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Aug%209%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF_0.pdf

ワグネル・グループがベラルーシから撤収するという憶測があり、このことから6月24日のワグネル武装蜂起後のウラジーミル・プーチン露大統領とワグネル・グループ資金提供者エフゲニー・プリゴジンとの取引内容の何かが破綻したことが示唆される。ロシアのインサイダー情報源の一つは8月8日、ワグネル部隊はベラルーシからの撤収の第一段階に取りかかっており、バス輸送で500〜600人の要員がベラルーシからクラスノダール地方、ヴォロネジ州、ロストフ州に向かったと主張した。また、8月13日以降、第二段階が始まる予定だとも主張した。このインサイダー情報源とワグネル傘下の情報源の推測によると、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、明確に予期していたように、ロシアがワグネルのために資金を出すつもりがない模様であることを知った際、ワグネルへの資金投与を拒否し、それが原因でワグネルはベラルーシからの撤収を進めている可能性があるとのことだ。プーチンとルカシェンコは、ワグネル部隊とプリゴジンが武装蜂起後にベラルーシで活動を継続することを許可した。インサイダー情報源は、小グループのワグネル教官はベラルーシに残り、ベラルーシ軍の訓練にあたることになるだろうと主張した。一方でISWは、ワグネル部隊がベラルーシから移動する映像資料をまだ確認していない。8月6日のこのインサイダー情報源の主張によると、「緊急で」リビアに投入されなかったワグネル部隊はロシアで休暇に入ったとのことだ。また、ワグネル指揮官たちはその戦闘要員に対して、いつ何時、新命令が出されるか分からないので、連絡を絶やさないようにと呼びかけたともいう。ワグネル傘下の情報源は、ワグネル主力部隊は8月末に「活動開始する」予定だと主張したが、その声明の詳細は語らなかった。ワグネルとプリゴジンにとって相対的に安全地帯といえるベラルーシだが、そこからワグネルがロシアへと移動しつつあるという主張、ワグネル指揮官の新命令に関する言及、8月末にワグネル部隊が今後「活動開始」するという主張、それらが示唆している可能性が高いのは、ワグネルのベラルーシ行きを可能にし、ベラルーシとアフリカでの活動継続を可能にした取引内容の何らかの側面が破綻してしまったことだ。

上述の主張の妥当性及びワグネル・グループの今後に関しては、本報告公開時点において、依然として不透明なままである。
[以下略]

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Aug%209%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF_0.pdf

プーチンは、彼の長期的な目標に対してプリゴジンが脅威が及ぼすことを、今でも懸念している可能性が高く、プリゴジンとワグネルを徹底的に分離させることに注力し続けている。
[中略]
プリゴジンをワグネルから引き離したうえで、再建したワグネル戦闘要員の維持を試みることにプーチンは優先度を高く置いているが、このことはロシア国防相セルゲイ・ショイグの目論見とは対立しているようにみえる。
[中略]
別の見方として、プーチンはワグネルを解体すること、もしくは組織をつくり直すことを促進する目的で、ワグネル部隊をロシアに戻そうとしている可能性がある。
[中略]
かつてのウクライナにおける作戦行動を彷彿とさせるような一体的に統制のとれた戦闘部隊としてワグネルが再建されるという結末も、他の可能性として存在する。だが、ISWはこの結末を示唆する情報を確認しておらず、入手可能な情報に基づくと、このような結末の可能性は低いようにみえる。
[以下略]

https://www.understandingwar.org/sites/default/files/Aug%209%20Russian%20Offensive%20Campaign%20Assessment%20PDF_0.pdf

ワグネル・プーチン・ルカシェンコ間の取引内容が何らか面で破綻した可能性が高いが、そのことが示しているのは、6月24日のワグネル反乱後にプリゴジンとワグネルが生み出した問題を、プーチンが完全に解決できていないということだ。
[中略]
プリゴジンもしくは他のワグネル指導層からの直接的な発言がないことが示すように、混迷の度合いを深めている情報環境のなかで、この情勢は流動的に進展している。ISWは引き続き今回の仮説やほかの仮説、またほかの評価分析内容を、もっと多くの情報が手に入り次第、検討していくつもりだ。

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