本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月10日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
(記事サムネイル画像:ウクライナ軍参謀本部投稿動画より)
バフムート方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍は12月10日、バフムートから北東の方向で地上攻撃を実施したが、裏付けのとれた前進は確認されていない。ウクライナ軍参謀本部は、ヴェセレ(バフムートから北東に18km)付近でのロシア軍の攻撃を撃退したと報告した。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍第106親衛VDV(空挺)師団所属部隊が、詳細は分からないが、10箇所の陣地を占領し、ヴェセレ付近で最大で縦深3.5km分、前進したと主張した。クレムリンと関係のある軍事ブロガー・アカウントの一つは12月9日に、ロシア軍がヴェセレ付近で前進し、この集落の包囲を試みているところだと主張した。
12月10日もロシア軍はバフムートの西方と南方で攻勢的な動きを続けた。また、最近のロシア軍の前進が確認されている。撮影地点特定済みの12月10日公開の動画によって、ロシア軍がフロモヴェ(バフムートのすぐ西)の北方で前進したことが分かる。撮影地点特定済みの12月9日公開の動画で、上述とは別の動画によって、ロシア軍がボフダニウカ(バフムートから北西に6km)から北と南東の方向で前進したことが分かる。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍第200自動車化狙撃旅団(北方艦隊第14軍団)所属部隊がボフダニウカ付近で前進したと主張し、ロシア軍がボフダニウカから北東の方向で最大580m前進したという詳細不明のウクライナ人軍事ウォッチャーからの報告とされるものを強調して伝えた。ほかのロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がイヴァニウシケ(バフムートから西に6km)方向で前進したと主張した。ロシア軍事ブロガーたちの12月10日の主張によると、ロシア軍はクリシチーウカ(バフムートから南に9km)から北西に位置する一際高い高台へと前進し、チャシウ・ヤール(バフムートから西に12km)の方向で攻撃を行っており、その意図はバフムートへ続くウクライナ側GLOC(地上連絡線)の遮断にあるとのことだ。ウクライナ人軍事評論家コンスタンティン・マショヴェツは、ロシア軍がチャシウ・ヤール方面の戦闘に追加兵力を投入したと主張し、その兵力には第200自動車化狙撃旅団所属部隊や、具体的な部隊は分からないがVDV部隊が含まれていると指摘した。ウクライナ軍参謀本部は、フリホリウカ(バフムートから北西に9km)付近、ボフダニウカ付近、イヴァニウシケ付近、クリシチーウカ付近、アンドリーウカ(バフムートから南西に10km)付近で、ウクライナ軍が少なくとも14回のロシア軍の攻撃を撃退したと報告した。一方でロシア国防省は、クリシチーウカ付近とピウニチネ(バフムートから南西に20km、ホルリウカのすぐ西)付近で、ロシア軍がウクライナ軍の攻撃を撃退したと主張した。
ドネツィク市方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
12月10日もロシア軍はアウジーウカ周辺での攻勢作戦を続けた。また、ロシア軍の最近の前進が確認されている。撮影地点特定済みの12月9日公開の動画によって、ロシア軍がステポヴェ(アウジーウカから北西に3km)の東方で前進したことが分かる。複数のロシア軍事ブロガーの主張によると、ステポヴェの集落内部、アウジーウカ・コークス工場(アウジーウカ北西外周部に隣接)の北方、アウジーウカの南東に位置するアウジーウカ工業地区内部で、ロシア軍は前進し、ノヴォカリノヴェ(アウジーウカから北西に13km)方向で攻撃を行ったとのことだ。ウクライナ軍参謀本部は、ウクライナ軍がロシア軍の攻撃を少なくとも39回撃退したと報告し、その撃退地点として、ノヴォバフムティウカ(アウジーウカから北西に9km)の東方、ステポヴェ付近、アウジーウカ付近、ペルヴォマイシケ(アウジーウカから南西に10km)付近、トネンケ(アウジーウカから西に5km)の南方、シェヴェルネ(アウジーウカから西に6km)の南方をあげた。ウクライナのアウジーウカ市軍政当局長官ヴィタリー・バラバシは、天候の状況を問わず、ロシア軍がアウジーウカ付近のウクライナ側陣地に対して、継続的に攻撃を仕掛けたり、火力打撃を加えたりしていると述べた。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、アウジーウカ戦線の特徴を「バフムートの肉挽き器の軽いバージョン」と描写したが、このコメントから、ロシア軍がアウジーウカのウクライナ側強化防御陣地に向けて、多くの犠牲を払って、消耗度の高い歩兵主体の正面突撃を実行していることが推察できる。クレムリンと関係のあるロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、具体的な場所は不明だが、ステポヴェ付近にある森林地帯でウクライナ軍が前進したと主張した。
12月10日もロシア軍はドネツィク市から西と南西の方向で強襲攻撃を続けた。また、ロシア軍の最近の前進が確認されている。撮影地点特定済みの12月10日公開の動画に、マリインカ(ドネツィク市のすぐ西)の西側外周部で旗を立てるロシア軍が映っており、ロシア軍がわずかではあるが、マリインカ内部でさらに前進したことを示している。複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がマリインカの「ほとんどすべて」を制圧下に置いていると主張し、ウクライナ軍がこの集落の西に位置する陣地へと退いたと主張した。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、マリインカ付近、ポビエダ(ドネツィク市から南西に5km)付近、ノヴォミハイリウカ(ドネツィク市から南西に10km)付近、ヴフレダル(ドネツィク市から南西に26km)から南東の方向で、ウクライナ軍は少なくとも14回のロシア軍の攻撃を撃退したとのことだ。一方でロシア国防省は、ロシア軍がマリインカ付近とポピエダ付近でウクライナ軍の攻撃を撃退したと主張した。