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【SNS投稿和訳】前線分析:現在の戦況評価 アウジーウカ、マリインカ、バフムート ー 今後の展望(FRONTELLIGENCE INSIGHT)

本記事はウクライナ軍予備役将校Tatarigami氏によるX投稿(日本時間2023年12月12日05:12)を日本語に翻訳したものである。その内容は、現在のウクライナ戦線の戦況分析とこれからの見通しである。

また、このX投稿は、以下リンク先の有料記事の概略版という位置づけになっている。

(*注:本翻訳記事で使用した画像は、Tatarigami氏のX投稿から転載した)


日本語訳 “前線分析:現在の戦況評価  アウジーウカ、マリインカ、バフムート ー 今後の展望”

現在の前線の動きが明らかにしているのは、ロシア軍による積極的な行動の試みであり、特にクプヤンシク〜リマン方面でそれが目立ち、同様にバフムートの南北翼エリア、アウジーウカ、マリインカでも目立っている。そして、ロシア軍の意図は、戦術的状況を改善することにある。

圧倒的な優位さに欠き、攻勢遂行能力の面での限界に直面しているにも関わらず、この夏と秋の戦役でウクライナ軍が得た成果を縮小させるという点で、ロシア軍は部分的な成功をおさめることができるかもしれないとFrontelligence Insightは予想している。

Frontelligence Insightはまた、ロシア軍がシュトルムV部隊を創設していることを示唆する複数の文書を入手している。これらの文書によると、この部隊は軍務に適した受刑者で主に構成されることになるとのことで、これら受刑者は国防省と契約しているとのことだ。シュトルムVの募兵優先度はロシア空挺軍(VDV)に置かれているが、自動車化狙撃部隊のなかにシュトルムVが組み込まれる場合も生じるようでもある。この部隊が既存のシュトルムZ中隊とどう異なるのかは、今のところ、はっきりとしていない。

アウジーウカ

ウクライナ軍の全般的状況は安定化しつつある一方、ロシア軍は攻勢限界に達しつつあるようにみえる。ロシア軍は攻撃への熱意を欠きつつあり、作戦任務用の装備はひどく減少しつつある。ロシア軍はまた、アウジーウカ南方の工業地区でおさめた成功を発展させることができなかった。

それと同時に、アウジーウカにおけるウクライナ軍の兵站状況は悪化しつつある。各種報告が裏付けていることとして、ロシア軍が赤外線カメラもしくは夜間暗視カメラ付きのFPV[一人称視点]ドローンを投入しているということがあり、それによって、夜間の補給作業が困難になっている。結果として、全般的な軍事状況が安定しているにも関わらず、兵站上の難題が継続している。

マリインカ

マリインカ情勢は危機的である。具体的な詳細は開示できないが、私たちの分析は、マリインカ陥落が時間の問題であることを示している。マリインカ陥落は、ロシア軍がクラホヴェ及びヴフレダルに向かう作戦上の好機を生み出すことになりうる。ロシア軍がヴフレダル守備隊を撤退に追い込める場合、ロシア軍は死活的に重要な兵站鉄道線を回復することができるようになる。そうなると、ロシア軍の輸送時間は大幅に削減され、部隊の移動をよりいっそう盛んに行うことができるようになる。

バフムート地区

バフムート地区では、フロモヴェ付近とクリチーウカ付近でのロシア軍の限定的かつ局地的な成功が続いており、困難な問題がつきまとっている。ロシア軍の攻撃のほとんどを、損失を出しながらも上手く撃退できているとはいえ、全般的な見通しは明るいものではない。潜在的なリスクとして、ウクライナが以前の夏から秋の戦役で取り戻した地点を、ロシアに譲り渡すことになるかもしれないというリスクがある。ただし、現在の情勢をみると、大規模に突破される可能性や戦線が崩壊してしまう可能性は、現状低い。

スピルネ

過去1週間、スピルネ地区において、ロシア軍は小規模な戦術部隊を用いた強襲攻撃を実施し続け、何ら実質的な戦果をあげることなく、損失を出している。この地区の全般的情勢は、安定しているようにみえる。

リマン〜クプヤンシク地区

リマン方面とクプヤンシク方面に向けたロシア軍の圧力がしつこく続いている。現状、ロシア側の取り組みは大きな結果をもたらしておらず、ロシア軍は明らかに損失を出している。私たちの分析は、ロシアがこの方面を二義的なものとみなしていることを示している。それにも関わらず、リマンとクプヤンシクの両方面において継続的な攻撃がしつこく行われている。ロシア軍がバフムート地区での成功を認識した場合、リマン〜クプヤンシク方面での圧力が増大する可能性があると、私たちは予測している。

まとめ

ウクライナ軍は厳しい冬の季節に向かうなか、いくつかの課題に直面している最中にある。その課題とは、砲弾不足であり、夏と秋の大規模戦役後の疲弊であり、米国議会による支援の差し控えである。また、欧州の支援国が必要な数量の砲弾を供与できていないという課題もあり、それ以外にもさまざまな要因が存在する。ウクライナ軍にとって全体的に好ましくない情勢であるとはいえ、ロシア軍が軍[*部隊編制単位としての“軍”]規模でのさらなる攻勢を実行する可能性は低いものと、私たちは評価分析している。装甲部隊と歩兵部隊を相当投入しても、わずかな戦果しかあげられなかったアウジーウカの事例から得た知見を踏まえると、近い時期に[ロシア側の]大規模な突破が起こる、もしくは[ウクライナ側の]防衛網崩壊が起こることを、私たちは予想していない。

現状のロシア軍のリソース配置及び割り当てをみると、戦術的状況の改善と2023年夏秋に失った地点の回復を目的とした大隊・旅団・軍団規模の作戦が起こる可能性は存在する。このような作戦の成功は、新たに編成した部隊を損なうことなく成功した場合、2024年にさらに規模の大きな春季攻勢を行う踏台になる可能性を生じさせることにもなりうる。

明らかに厳しい状況ではあるが、現実的にみて、ロシア軍がこの冬の間に、もしくは次の春でさえ、戦略的に戦争を決定的なほど動かす可能性は低いままだ。ただし、この状況は、ウクライナとその連携国が優位に立つための決定的な措置を実行することの緊急性を消し去るものではない。

附記

好意的であれ否定的であれ、今回の分析記事に価値を見出した方は、この投稿に“いいね”したり、この投稿を“リポスト”したりすることを考えていただけると幸いです。ウクライナ戦況報道は、X上で見えにくくなっています。私たちのチームFrontelligence Insightは、二つの重要なプロジェクトに積極的に取り組んでいます。その一つとして、アウジーウカで数百両のロシア軍車両が破壊されたことをはっきりと示した衛星画像にテーマをあてたものを、今週、発表する予定です。皆さまのご支援には感謝しております。そして、Buy Me a Coffeeを通して寄付ができますし、そのリンク先は私のプロフィールに掲載してあります。そして、私たちは同時に複数のプロジェクトに取り組んでおり、皆さまのご支援を心から必要としています。

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