Russian Offensive Campaign Assessment, June 18, 2024, ISW ⬇️
[*記事画像:BanjaLuka.net 記事掲載画像より]
ロシア軍事ブログ「ルイバリ」設立者ミハイル・ズヴィンチュク、インタビューに応じて戦況を語る
戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
クレムリンとつながりのあるテレグラム・チャンネル「ルイバリ[Rybar]」の設立者ミハイル・ズヴィンチュクは、この1カ月間で2回目となる公のインタヴューに応じた。なお、彼がこのようなインタビューに応じるのは異例なことである。そして、今回のインタビューのなかで、ズヴィンチュクはウクライナにおけるロシアの戦争遂行状況を批判し、西側による制裁が、ロシア経済と産業にマイナスの影響を及ぼしていることを認めた。スルプスカ共和国(ボスニア・ヘルツェゴビナ国内のセルビア人統治機構)のポータル・メディア「BanjaLuka.net」は6月18日に、ズヴィンチュクへのインタビュー記事を公開した。このインタビューの目的は、ズヴィンチュクがバルカン方面で最近設立した「ルイバリ・メディア・スクール」の宣伝にある。ズヴィンチュクは、ウクライナでのロシアの戦況に関する意見を質問された際、ロシア軍に対する、例外的といえる率直かつ批判的な見解を示した。彼はこの戦争がロシア軍の計画通りに進んでいないと述べ、その理由の一端として、ロシア側の不適切な計画立案をあげた。これに加えて、ロシア軍は小隊・中隊・大隊レベルで戦うことをこれまで身につけてきたが、これらより上の指揮階梯で戦う能力を、ロシア軍は今でも欠いているという見解も示した。ズヴィンチュクの指摘によると、ロシア軍は戦場での主導権を握ることを「学んでいる」が、それはある一部の場所でしか達成できておらず、ロシア軍は戦術レベルの戦果をゆっくりとしか達成できていないとのことだ。仮にロシアが戦略的主導権を握ることができるならば、その場合のロシア軍は「一週間で一つの家屋や一つの村ではなく、一週間で一つの都市」を制圧するだろうと、ズヴィンチュクは主張した。また、彼の評価分析によると、戦略的主導権を奪取するのに必要な物資がロシアには十分にないとのことだ。また、ロシアが国防産業基盤(DIB)の生産規模の増大を、加速させようと試みている最中にあることを認めた。ロシアに対する国際的な制裁によって、技術的能力を維持していくロシアの能力が阻害されていることをズヴィンチュクは認めた。また、ロシアの石油精製施設の一部が機能しなくなっており、その結果、燃料価格の10%上昇を招くことになったとも指摘した。5月18日にズヴィンチュクは、ロシア国外在住のロシア語話者に焦点をあてた報道メディア「RTVi」のインタビューに応じている。5月18日というタイミングは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が国防相の地位をセルゲイ・ショイグからアンドレイ・ベロウソフに交代させた直後の時期にあたる。この5月18日のインタビューにおいて、ズヴィンチュクはロシア国防省を批判し、国防省内の変化の可能性について憶測を巡らしている。ISW[戦争研究所]の評価分析は、ズヴィンチュクが公にされるインタビューを用いて、批判的な見解に対するクレムリンの反応を推し量ろうとしている可能性があるというもの、あるいは、クレムリンがズヴィンチュクの発言内容と批判の程度を指示しつつ、ロシア国防省を公に批判する任務を彼に与えている可能性があるというものだ。1カ月間で2回目となる公開前提のインタビューを、スルプスカ共和国のポータル・メディアに対して応じることをズヴィンチュクが決めたことは、欧州に親ロシア的情報の影響を拡散させるという彼の取り組みを喧伝することに彼の関心があることを示しており、また、ボスニア・ヘルツェゴビナにおける西側仲介のデイトン合意体制を不安定化させようとする長期的なロシア側の努力を支援するズヴィンチュクの取り組みを喧伝することにも彼の関心があることを示している。
報告書原文の日本語訳箇所(英文)