本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年12月19日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
ルハンシク州方面
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
最近、ロシア軍がクプヤンシクから北東の方向でわずかに前進したことが確認されている。撮影地点特定済みの12月18日公開動画によって、ロシア軍がシンキウカ(クプヤンシクから北東方向)の北方でわずかに前進したことが分かる。ロシア・ウクライナ双方の情報筋は、クプヤンシクから北東方向のシンキウカ付近とペトロパヴリウカ付近で戦闘が続いていることに言及している。
12月19日はロシア・ウクライナ両軍ともにスヴァトヴェ〜クレミンナ線上で前進できず、双方ともに陣地をめぐる交戦に終始した。ウクライナ・ロシア双方の情報筋は、クレミンナから北東方向及び西方で戦闘が続いていると述べており、具体的な場所は、マキイウカ付近、テルニー付近、セレブリャンシケ森林地帯である。また、第24スペツナズ旅団所属部隊と第20諸兵科連合軍所属部隊(西部軍管区)がこの地域で作戦行動中であることが伝えられている。
バフムート方面(ドネツィク州)
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍が最近、バフムートの北方で前進したことが確認されている。撮影地点特定済みの12月12日公開動画によって、ロシア軍がドネツィク州ビロホリウカから北西の方向で前進したことが分かる。ここはバフムートから15km北東に位置する集落である。ロシア国防省の主張によると、ウクライナ軍は、バフムートから15km北に位置するパゼノ付近で攻撃を仕掛けたが、成功しなかったとのことだ。
ロシア軍がバフムートから北西の方向と南西の方向で前進した模様だ。複数のロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がバフムートの南方に位置するチュロノビレツ[Chronobilets]・コミュニティ・ガーデンを占領したと主張したが、ISWは現時点でこの主張を裏付ける映像を確認できていない。複数のロシア側情報筋の主張によると、ウクライナ軍はバフムート市西部外周部とバフムートから南西方向のクリシチーウカ付近で攻撃を行ったが、成功しなかったとのことだ。ロシア・ウクライナ双方の情報筋が言及した交戦箇所は、バフムートから北西方向のボフダニウカ付近、バフムート西方のイヴァニウシケ付近、バフムートから南西方向のクリシチーウカ付近及びアンドリーウカ付近である。ウクライナ軍当局者からの発表によると、ロシア軍統帥部は最も戦闘能力のある空挺(VDV)部隊及び海軍歩兵部隊、そして主に受刑者から集めた兵士で構成される「シュトルムZ」「シュトルムV」部隊を、バフムート方面に投入しているとのことで、ロシア軍の目標はチャシウ・ヤール(バフムートから10km西)攻撃にあるとのことだ。ロシア国防省は、ロシア軍第98VDV師団所属部隊がバフムート北方で作戦行動中であると述べ、第200自動車化狙撃旅団(北方艦隊)所属部隊がおおむねバフムート方面で作戦行動中であると述べた。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍第4自動車化狙撃旅団(ルハンシク人民共和国[LNR]第2軍団)所属部隊がバフムートから南西の方向で行動中だと主張した。
アウジーウカ方面(ドネツィク州)
報告書原文の引用(英文)
日本語訳
ロシア軍が最近、アウジーウカ付近で前進したことが確認されている。撮影地点特定済みの12月18日投稿の動画に、12月15日頃にロシア軍がペルヴォマイシケ(アウジーウカから約10km南西)のすぐ北でわずかな戦果をあげた様子が映っている。12月19日に投稿された別の動画で、撮影地点が特定されているものに、ロシア軍がアウジーウカから南西の方向の採石場地区内でもわずかに前進した様子が映っている。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、ロシア軍がアウジーウカから南西の方向で戦術的成功をおさめたと主張した。ロシア側情報筋の一部はさらに、ロシア軍がアウジーウカ・コークス工場(アウジーウカ市北西外周部)にある陣地からウクライナ軍を押し出そうと試みており、ロシア軍はアウジーウカ方面北翼のステポヴェ付近で前進中であると主張した。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はアウジーウカ市へのロシア軍の攻撃と、同市から北西方向、南西方向、真西の方向でのロシア軍の攻撃を撃退したとのことだ。ロシア側情報筋の一つは、第41諸兵科連合軍所属部隊(中央軍管区)がアウジーウカ地域で作戦行動中であると主張した。