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【SNS投稿和訳】ウクライナが迎える暗い春(Emil Kastehelmi氏のウクライナ情勢分析)

上記リンク先から始まるX連続投稿(日本時間2024年2月24日03:09投稿)は、フィンランドのOSINTアナリスト・軍事史家のエミール・カステヘルミ氏によるウクライナ情勢分析です。戦争3年目に突入するなか、ウクライナが抱える問題、ウクライナが直面する脅威、そしてウクライナの今後を簡潔にまとめています。

以下は、このX連続投稿の日本語訳になります。なお、このnote記事のサムネイル画像は、カステヘルミ氏の投稿に添付されている画像を用いています。

日本語訳:カステヘルミ氏のX連続投稿(日本時間2024年2月24日03:09投稿)

これから先の数カ月間は、ウクライナにとって暗いものだ。

ロシアによる全面侵略は3年目に入り、そして、ウクライナは目下、さまざまな困難に直面している。ここに楽観主義が立ち入る余地はない。なぜなら、これからの数カ月間で多くの問題を解決することはできないからだ。

このスレッドで取り上げるのは、さまざまな課題と脅威、そして、今後の展望だ。

2023年にウクライナが攻勢を進めていた間に、ロシアは密かにかなり大きな戦力を集積させた。10月中旬以降、ロシア軍は複数の戦線で攻撃を進めている。それと同時に、ウクライナは内外の困難に直面している。ウクライナが抱える問題から始めよう。

2023年、ウクライナは不幸な損失を被った。夏季攻勢の損失は大きく、それにも関わらず、戦略目標はひとつも達成できなかった。夏が終わったのち、この損失を完全に埋め合わせるのは、ますます難しくなった。軍指導部はその後に直面する問題を把握していた可能性が高い。

2023年の年末に向かうなか、新たな動員法に関する公然たる議論が表面化した。動員すべき男性の人数について、軍指導部とゼレンシキー大統領との間で一致をみることはなかった。マンパワーの問題は解決されねばならないことだったにも関わらず、政策決定には緊急性が欠いていた。

ウクライナは現在、新たな動員法の準備を進めてはいるが、その立法化は晩春までかかる見込みだ。召集された兵士が軍務に就く前に諸々準備するのに1〜2カ月はかかるものと考えられ、新兵の訓練は最低でも2カ月は必要になるだろう。

だが、2カ月間の軍事訓練は十分ではない。最低限の訓練は、準備不足の兵士と不必要な損失という結果を招くことになるだろう。新しい兵力が前線に到着し始めるのは夏の終わり頃になる可能性が高く、そのことはロシア軍がこの春にチャンスを掴むことを意味する。

国外からの支援に影響を及ぼすウクライナの能力は限られたものであり、多くの変動要素が長期にわたる支援に影を投げかけている。特にこれからの米大統領選挙はその一つだ。EUは生産能力の向上を進めており、使える備蓄の活用も進めている。しかし、それはウクライナの需要をすべて満たすには、いまだ不十分である。

ウクライナのマンパワーに関する問題は、同国が自ら招いたものだ。兵力増強の必要は明白であり続けたにも関わらず、政治的優先度と軍事的優先度の一致は、いまだになされていない。動員に伴う多大なコストに関する懸念は理解できるものではあるが、核心的な問題に答えを示すことを避けることはできない。

ウクライナが抱える諸課題をロシアは理解しており、それらにつけ込んでいくことを、もうすでに熱心に行っている。今進めている冬季攻勢の当初の成果は芳しくなかったが、1月後半に向かうなか、ますます多くの村落や都市が侵略者の手に落ちた。そのなかで最も注目されたのが、アウジーウカだ。

ロシアは同時並行的に戦線上のさまざまな箇所で攻撃を進めつつ、弱点を見つけようとしている。このようなアプローチは損失が大きい。だが、ロシアには甚大な損失に耐える用意がある。ウクライナの動員後、同じような好ましい成功条件が再びあらわれることはないかもしれない。

ロシア側からみて戦線上のある地区が、大きな損失の結果、弱体化したとしても、ウクライナが思いがけない大規模反撃を行って、その状況を利用することができないことも、ロシア軍は知っている。なぜなら、今後数カ月の間、ウクライナにはそうするリソースがないからだ。

10月以降、攻撃を続けているが、ロシアはいまだに縦深突破を成し得ていない。局地的な防衛拠点の一部が破れたり陥落したりはしているものの、広範なウクライナ軍の崩壊は確認されていない。最終的に消耗戦がさらに多くの成果をもたらすことを、ロシア軍が想定している可能性は高い。

また、注意すべき点に、ロシア軍にはまだ戦闘に投入していない大きな戦力があるという点がある。何週間も何カ月も攻勢が続く可能性を、ロシア軍が計算に入れている可能性は高く、どこかでより大きな進展がみられた場合、ロシア軍にはそれを支える準備がある。

大規模な崩壊を予測するつもりはないが、2022年ハルキウ反攻の再来を思わせるものがある。ただし、その立場は当時とは逆ではある。緊急性の高い重要課題に対する遅い対応、敵側能力の増大、ウクライナ国外の関係者が関わる困難さは、危機的状況を生み出しており、マイナスの結果をもたらす可能性がある。

今年の春は生き残りの春だ。今でもウクライナは国家存立を脅かす脅威に直面しており、今後の展望には、依然としてさまざまな可能性が考えられる。政策決定者の導き手は悲観主義であるべきで、とりわけあらゆる支援計画は、最悪のシナリオに沿ったものであるべきだ。2022年初頭と同じくらいの危機意識をもつべきだ。

結論:何カ月かの間、ウクライナ軍の各旅団は定員不足のまま戦わなければならないだろうし、リソースが乏しいため、多くのことを成し遂げることもできない。ロシアは自分たちが兵力・装備・火力の面で優越していることを知っており、手に入れられる土地があれば、ロシアが損失を気にすることはない。

Black Bird Groupの私たちのチームは、ウクライナでの戦争のマッピングと分析を、従来メディアとSNSの双方でこれからも続けていきます。ジョン・ヘリンパシ・パロイネンの二人が、素晴らしい内容の投稿を準備していますので、彼らをフォローしてください。

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