今年の攻勢作戦を進めていくなか、ウクライナ軍が抱える問題も明らかになっています。これらの問題に関しては、兵器支援の数量や供与される兵器の性能といった計量可能な側面にばかり目が向く傾向があります。ですが、それ以上に訓練・部隊運用能力といった無形的要素が重要であることを、上記リンク先のX投稿でジョン・ヘリン氏が指摘しています。
なお、ヘリン氏はフィンランドのウクライナ戦争OSINTチーム「Black Bird Group」で活動している人物です。
また、本記事のサムネイル画像は、ウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿写真を転載して、使用しました。
ウクライナ支援に関するX連続投稿(ジョン・ヘリン氏)
日本語訳
ウクライナの最終的な勝利が、西側からの支援の継続と増加にかかっていることについては、当然ながら同意するけれども、それでも私は技術と装備を過度に重視することの問題は大きいと考えている。
ウクライナは訓練と指揮に関する多くの課題を抱えており、これらの課題が物資の有効使用を妨げている。
ただ単に物質的な問題だけであったのなら、ウクライナは今年の攻勢において、もっと多くの成果を達成できたはずだ。実際、西側のコメンテーターたちは、ウクライナが受け取った援助物質を誇大に持ちあげ、6月までに供与されていた装備を使って、ウクライナがすばやく突破できるという予想を示した。
実際のところ、「十分に与えられなかった」という言説があらわれたのは、夏季攻勢が明らかに上手くいかなくなり始めたあとになってからのことだ。そして、この手の発言は、春の間、作戦の勝機を過度に喧伝したのと同じ人物によるものであることが多かった。
これは不誠実な姿勢だと思う。
ウクライナはもっと多くの物資を必要としており、もっと多くの物資を使えたはずで、西側の受け身の政策によって、ずっと困らされているけれども、私たちはまた、この夏季攻勢に関する問題の多くが、ウクライナ軍に内在した問題であることを認めることもできるはずだ。
8月に私は、「私たちはウクライナが犯した過ちに対処できていない」というタイトルの記事を書いた。
よく普及している議論において、いまだにこの状況が続いているようだ。
地上攻撃と長距離射撃の冴えない連携は、ウクライナに長距離火力をもっと流し込むことだけでは解決しない。
旅団レベルで、そして大隊レベルでさえ、まとまった戦力として行動できずにいることは、ウクライナにもっと多くの戦車と歩兵戦闘車を与えることだけでは解決しない。
地上攻撃を支援するための、連携のとれた集中的な砲兵運用ができずにいることは、もっと多くの砲弾の供与では解決しない。
ウクライナ軍は十分に適切な訓練がなされていなかったし、もっと時間が必要だったと指摘することはできる。しかし、そのような発言は、次の事実を無視している。少なくとも私の情報源によると、夏季攻勢のスケジュールは、西側友好国の関与と同程度に、もしかするとそれ以上に、ウクライナ軍自身によって設定されたという事実だ。
要するに、私たちが攻撃の時期をウクライナに強要したわけではなかったということだ。これに反する確固たる証拠をもっている人がいれば、私は進んで間違いを認めよう。
間違いないことだが、西側製装備を新兵部隊に与える一方で、経験豊富な部隊をバフムートで消耗させるように、私たちがウクライナに強要したわけではない。
そして、私たちがウクライナにバフムートと南部攻勢軸への戦力分割を強要したわけではないのはほぼ確実であるし、ウクライナ軍攻勢から作戦的奇襲効果を奪ったことに、私たちはほぼ間違いなく関わっていない。
私が主張したいことは、8月時点から変わっていない。ウクライナには物資が必要だ。だが一方で、本当に必要とされているのは、西側による訓練であり、西側の指導が伴う広範な制度的改革を実施する意志だ。
他方、西側諸国がお手軽な解決策を与えて済む話でもない。
私たちはウクライナ軍と一緒になって、何を改革しなければならないのか、どんな訓練が必要とされているのか、どのような種類の教義面での訓練が必要なのか、軍〜軍団及び師団レベルの組織全般で欠いているものを整え直していくのに必要な参謀将校訓練はどのようなものなのか、等々を解決しなければならない。
つまり、ウクライナがこの戦争に勝つために必要な無形の手段はどのようなものなのかについて、有形の手段も含めて、ウクライナ軍と一緒に探って解決していく必要があるのだ。
簡単な問題ではないだろう。互いに謙虚になって折り合いをつけるための協力関係が、双方に必要とされるのは間違いない。
絶対に必要なのは、皆がそのプライドの多くをぐっと飲み込むことだ。また、ウクライナの政治家が自国の失敗に対してもっと率直になることは本当に必要なことで、誇大な喧伝とプロパガンダを控える必要がある。一方で西側の政治家は、統一した対応をまとめることを急ぎ始める必要がある。
これは難しいことだ。ウクライナが誇大宣伝を続けるなか、戦車だの防空兵器だの砲弾製造だのといったことに注視するほうが、西側の人にとって、分かりやすく、対処しやすく、具体的に示すのも容易だ。
だが、この戦争でのウクライナの勝利を心から願うのなら、この困難な道だけが、前へ進む唯一の道なのだ。
なお、8月に私が書いた文章は以下のリンク先にある。残念なことにフィンランド語の記事だが。
投稿原文(英文)