本記事は、戦争研究所(ISW)の2024年1月8日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。
[*記事サムネイル記事:ウォール・ストリート・ジャーナル紙記事より]
ウクライナ軍が戦場で直面している困難さ
報告書からの引用(英文)
日本語訳
ウクライナ軍は装備不足に起因する戦場での困難さに適応しているところであるが、砲弾不足と不十分な電子戦(EW)能力を完全に埋め合わせることに苦慮しているところでもある。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙の1月8日付報道によると、ウクライナ軍は前線での砲弾不足に苦慮している一方で、一人称視点(FPV)ドローンを用いて、ウクライナがもっと多くの砲弾を受けとるまで、砲弾不足を埋め合わせようとしているとのことだ。ザポリージャ州西部ロボティネ付近で戦っている複数のウクライナ軍兵士はWSJ紙に対して、自分たちはFPVドローンを用いて、補給物資を輸送するロシア軍の小型車両と兵員を攻撃し、ロシア側兵站を妨げることができるけれども、FPVドローンに搭載できる爆発物の量は比較的少ないので、ロシア軍野戦陣地の攻撃用にFPVドローンは使えず、それは火砲なら可能だと語っている。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙の1月7日付報道によると、ウクライナ軍、なかでもザポリージャ州に展開中の同軍は、ロシア軍の地上攻撃、FPVドローン攻撃、そしてEW能力がもたらす困難さを克服するのに苦労している最中にあるとのことだ。ウクライナ軍のある大隊副指揮官はNYT紙に対して、ウクライナ軍の指揮は「まったく問題ない」が、兵士たちは「肉体的に消耗している」と語った。
フィナンシャル・タイムズ(FT)紙の1月7日付報道によると、ロシア軍はEW領域で優位に立っており、攻撃ドローンの製造を最優先にしているとのことだ。また、同報道記事は、ロシア軍のドローン及びミサイル攻撃に対抗できるウクライナ側EW能力を強化・支援することの重要性を繰り返し主張している。FT記事は、全面侵略が始まって以降、ウクライナがEW能力に大きく資金投入していることを指摘したうえで、ロシアの戦前からのEW能力が、この領域でのロシアの優位を維持させていることを伝えている。