本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年10月25日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。なお、この記事で用いた地図は、ISW制作地図とGoogle Maps画像である。ただし、一部、加工してある。
アウジーウカ情勢
日本語訳:
10月25日、ロシア軍はアウジーウカ付近で攻勢作戦を行った。また、前進できたことが確認されている。10月24日公開の動画で、撮影地点の特定可能なものによって、ロシア軍がクラスノホリウカ(アウジーウカ南西5km)の北西で前進したことが分かる。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ステポヴェ(アウジーウカ北西3km)付近、アウジーウカ付近、トネンケ(アウジーウカ西方5km)付近、シェヴェルネ(アウジーウカ西方6km)付近、ネヴェルシケ(アウジーウカ南西13km)付近でロシア軍は攻撃してきたが、失敗に終わったとのことだ。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐は10月24日に、アウジーウカ付近でのロシア軍の攻撃頻度は低下していると語った。ロシアの有名軍事ブロガー・アカウントの一つは10月25日に、ロシア軍はアウジーウカへの進入路とステポヴェ付近で「かなり重要な戦術的成果」を達成したと主張し、アウジーウカ北方の鉄道線へと進んだと主張した。別の軍事ブロガーは、ロシア軍がクラスノホリウカからノヴォカリノヴェ(アウジーウカ北方7km)へと前進中であると主張した。ロシア軍がアウジーウカ石炭屑集積場を制圧下に置いていると同軍は大きく主張しており、これについて、ウクライナ人軍事ウォッチャーの一人も同様の見解を示した。ウクライナのアウジーウカ市軍政当局の長であるウィタリー・バラバシは、ロシア軍がアウジーウカ石炭屑集積場を制圧しているという主張を否定し、石炭屑集積場は両軍が相争う「グレーゾーン」だと述べた。別のウクライナ人軍事ウォッチャーは10月25日に、ワグネル・グループの残党がアウジーウカ付近で戦っていると主張したが、元ワグネル戦闘要員がアウジーウカ付近で活動している証拠情報をISWは確認していない。
あるウクライナ軍予備役将校が10月23日に衛星画像を公開し、10月10日から20日にかけて、ロシア軍がアウジーウカ周辺で109両を超える軍用車両を失ったことを裏付けた。この予備役将校によると、ロシア側損失の大半が主として装甲戦闘車両で、具体的にはBMP-1、BMP-2、MT-LBであったり、T-72、T-64、T-80といった戦車であったり、BTR装甲兵員輸送車であったりするという。また、それ以外の輸送用車両も含まれるとのことだ。この予備役将校は、アウジーウカ周辺でのロシア側車両損失数は、2022年5月のドネツ川渡河失敗の際にロシア軍が失った車両数を上回っており、2022年11月から2023年4月にかけてヴフレダル地区でロシア軍が失った車両数を今後、上回っていく可能性が高いと述べた。また、ロシア軍は、上述の数字に加えてさらに10数両の車両を失っている可能性があるとも指摘している。これらの車両は、相反する内容の画像があったため、最終的な試算数字から除外したとのことだ。そして、この予備役将校は、具体的な情報源は明らかにしなかったが、2つのそれぞれ別の情報筋が、アウジーウカ周辺でロシア軍が200両を超える軍用車両を失っていると試算したことに言及した。
ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは10月24日に、ウクライナが反撃し、ベルディチ(アウジーウカ北西10km)からロシア軍を押し出したと主張した。
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