(読書感想)女性のいない民主主義

 Twitterで#専門家が選ぶ新書3冊というタグで、新書のオススメが紹介されていた。いくつか入手して感想を書いてみようと思い立ったが Twitter では文字数制限があるのでnoteで書いてみることにしてみました 。

1回目はこれ。


 まず、良い点として挙げられるのが、「分からない単語があれば都度説明が入る」ということである。当然のことと考えられがちではあるが、特に新書はその分野に詳しくない人が読むことが多く、そのことをちゃんと意識している点は褒められるべきであろう。

 民主主義の歴史は様々な指標で評価できるが、ジェンダーの視点からだと見えなかったものが見えてきて、どの指標も多かれ少なかれ恣意的な側面を持つという観点が必要だという指摘により、今まで何となく知っていた各国の民主化の歴史を違った眼で見れたのは良いと思える。

 逆に良くないももちろんある。後半の3章4章では現代日本の政策にジェンダー視点で切り込むのだが、議論が雑ではと言いたくなる箇所が出てくる。

 例えばスウェーデンにおいて福祉サービスの充実により少子化の進行が食い止められている事を紹介されているが、移民のことについて触れていないのがフェアではないだろう。
 本書では「第二次世界大戦後の経済成長期に労働力不足が生じた際、他のヨーロッパ諸国のように移民を受け入れるのではなく女性の労働参加者を促す道を選択した 」という前振りから、「社会保障費における家族関係支出が日本よりも格段に多く、女性と男性のワークライフバランスを支援する制度が整って少子化の進行が食い止められている」という文脈になっている。スウェーデンの政策はもちろん見習う点が多いが、まるで少子化対策に移民の寄与が全くないかのような書き方は卑怯ではないだろうか。


 欠点も上げたが、大筋ではほぼなるほどと言える内容であった 。
 福祉国家の経路依存性により日本が高齢者優先から家族関係に切り替えるのが難しい。日本がそうなった経緯には男性稼ぎ主モデルから来ているのではという指摘はなるほどと思わせた。
 また日本の国政選挙でクオーター制を導入すればよいという言説は良くネットでも目にするが、なぜそうなのかそれを順を追って説明している点は評価したい。

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