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伊東潤「真実の航跡」


伊東潤「真実の航跡」一気に読了、こんな緊張感を持ちながらページをめくり続けたのもひさしぶりだ。
世にあまり知られていない話だが、第二次世界大戦中のスンダ海峡西方、ココス島南方にて撃沈した英国輸送船の乗員を救助していながら、船上で虐殺していくという重巡利根の艦長の不可思議な行動は、戦後、ビハール号事件として戦犯裁判にかけられる。
このむずかしい戦犯裁判に取り組み、緊迫感この上ない方形の戦場、法廷での戦いに取り組んだ凄まじい作品。
この時代、ただでさえ記憶の片隅からも消え去ってしまいそうなこの戦争の悲劇の塊とも言うべきBC級戦犯の末路に頑然と挑んでくれた伊東潤さんに感謝を捧げたい。
よくぞここまで密に踏み込み、まるで現場に居合わせたかのような相剋を強いられる歴史の軋み音にうなされそうになってくる至高の問題作。
アメリカの防波堤として在日米軍への思いやり予算も増額され、日米地位協定の改正などどこかへ吹き飛んでしまい、氷川丸の航跡も水平線に見え隠れしてくる2021年冬至の朝だった。

伊東潤 公式HP
https://itojun.corkagency.com/works/shinjitsunokouseki/

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