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プロットと自転車

1日。
遅れを取り戻すかの如く1日中かけて年末特番を見まくる。『クイズ・正解は一年後』の誰が結婚するだとか離婚するだとかを好き勝手言ってる時間が至高だ。録画を含めたどの番組を見てもニューヨークとヒコロヒーが出てて嬉しくなる。推してる人が売れてく様を見るのもまた至高である。
姉と祖母も実家に合流。数年前までは祖母の家でいとこ家族とも集まって祖母が作ったおせちを食べるのが正月そのものだったが、祖母が体を悪くしてからそうもいかなくなり正月は形を変えた。スーパーで買った寿司を囲みながらテレビを見る。祖母はいつ体調が急変するかわからない状態。そして今年は姉が結婚する。来年もまた正月の形が変わるだろう。


2日。
デニーズにて漫画のプロットを考える。陽の光があたるファミレスはなぜこうも美しいのか。ファミレスはさながら飲食業界の中のJ-POPのようだなと思う。漫画を描くのは中学生以来になる。あの頃はストーリーの整合性とかをおざなりにして早く絵が描きたいという勢いだけで完成させていた。あれから数年漫画を描きたいとうだうだ思い続けるもストーリーを納得できる物に出来ず何度も頓挫している。とりあえず完成させていたあの頃の自分は正しかったとも思う。年々、締め切りがないと完成させることが難しくなる。様々な質の良いエンタメに浸っているとどうしても目だけが肥えてきてしまう。「面白い作品を作れ。これはお前が酷評してた作品よりつまらないんじゃないか?」と脳内で評論家顔した自分が強迫観念のように囁いてくる。「いや面白いものを作りたいんじゃない、伝えたいことが伝わる作品を作りたいんだ」とすぐさま生意気クリエイターくんが反論する。などとしょうもないことを考えていると次の用事の時間が来て、またしてもプロットがうまくまとまらずにデニーズを後にした。


3日。
一駅だけ電車に乗って、コメダ珈琲で引き続きプロット作業。一歩ずつ進んでいる感覚はあるものの歩いてる方向に目的地があるのかがいまいちわからないまま作業は続く。帰りは一駅分溜まっていたラジオの年末特番を聴ききながら散歩。天気が良くて富士山が綺麗に見えた。すごい嬉しい。スマホで写真に収めようとするも遠すぎて全然いい感じにならない。ちょっと落ち込んでプラマイゼロになった気分。帰宅して部屋の掃除と消耗品の買い物をしたら1日が終わった。


4日。
週末までに終わらせなきゃいけない個人仕事を進める。去年から豆から挽いてコーヒーを淹れるのにハマっている。珍しくワンブームで終わらずに生活の一部に昇格したのだが、いまだに美味しいかどうかはわかってない。コーヒー豆の種類を変えてもイマイチ違いがわからない。そもそもコーヒーを飲みたくて飲んでると言うよりは仕事のスイッチを入れるために飲んでいる。コーヒーを飲んでるだけでなんだかできる大人になった気分になれるからだ。それはもう液体ではなくコーヒーという概念を飲んでいるだけにすぎないのかもしれない。コーヒーからしたらなんとも失礼な話だ。などと考えていたら着ていた薄緑のパーカーと白のスボンにコーヒーを溢した。最悪だ。バチが当たったのかもしれない。こういう味わえもしないのにコーヒー好きみたいな面をしてる人に抵抗するためにコーヒーは濃い茶色をしているのかもしれない。幸い今日はいい天気だったので、すぐにシミ取りをして洗濯してしまえばセーフだ。ティッシュで染みないようにシミ取り用の洗剤をポンポン押し当てて勢いそのまま洗濯機に詰め込んでスイッチON。40分ほど仕事をしていると洗濯完了のアラームが鳴る。蓋を開けて服を取り出すと服と一緒に天使の羽みたいなものが舞った。いやこれは羽じゃないティッシュだ。シミ取りした後のティッシュをすぐ捨てずにその辺に置いていたから服と一緒に洗濯機に入り込んでいたのだ。最悪の日の最悪はとことん最悪なのである。服にへばりついたティッシュの亡骸をひとつひとつ手で摘んで捨てる。この日で年末年始休暇が終わりだったのに何をやっているんだろう…と気持ちが沈む。なんだかむしゃくしゃしてきたので、思い切ってずっと欲しかった自転車を購入しにいった。こういう日は金の力で無理やり1日の最終幸福ポイントをプラスにするしかない。自転車を買うのは高校生以来、乗るのもほぼほぼ高校の通学以来だった。この街に住み始めてもう5年目で歩ける範囲の場所は散歩し尽くしたが、これでまだ行けてなかったと思うとワクワクしてくる。やさしい店員さんにライトや鍵などを見繕ってもらって無事購入。帰って仕事を再開するも自転車があったらあそこのカフェに行けるな〜、とか考えていたら頭がいっぱいになってしまって仕事がなかなか手がつかなくなってしまった。明日から会社の仕事が始まるのに進捗が進んでない。これはギリギリプラスだろうか。

6日。
ニューヨークの30分トークが何周かするほど大好きである。ツッコミの屋敷(ファンすぎるので敬称略)の聞き出し能力が素晴らしいからだ。放送作家である小西さんの回もとても面白かった。気になると思ったことを、思ったその次の瞬間には屋敷が聞いてくれる。確かにそこ気になったかも!と思うところも屋敷が聞き出してくれる。相槌も上手い。ちょっと冗談を入れて場をなごまして喋りやすい空気を作るのも上手い。すごいインタビュアーの才能だ。彼は頭がいいとか頭の回転が早いというよりは、”感覚の偏差値”が高いのかもしれないとふと思う。