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#32 神様の暇つぶし|千早 茜

本当に胸が痛んで、心をえぐるような言葉がたくさんあった
こういう男の人は危ないけど、強烈な引力があるのは理解できる気がする
匂いとか、質感とか感覚的なものが、ただの荒々しい男の人から好きな人に変わっていく様子
恋愛小説だけど、甘くてロマンチックなものではない
濃厚で、力強くて、息苦しくなるような気持ち、感覚、関係

里見には、ずっとフジコの支えであったほしかった
彼のように痛みを持った人が、人に対して中立で、本当の意味で優しくなれる
人がどう受け止めるかとか考える必要はなくて、自分から離れていった言葉や思いは、もうあとは相手に任せる
そのあとのことは考える必要ない
冷たいようだけど、それにフジコは本当に救われたはずだ
里見のように、暖かく、寄り添えるような人になりたいな

里見と全さんの対比をするところ
一方は静か、一方は荒々しくて、こっちの感情が上下に揺さぶられる
本当に、その差をうみだしている、自分の心の元となっている部分は何なのだろう
ある一人の人に対して感じる、執着とか、重さとか、そういうものを感じる違いはどこにあるんだろう
もう心にいないと思っていたのに、ふとしたことでまた戻ってきてしまう冷たい温度だけど、捉えどころがなくて、時々見せる笑った顔
笑い顔があたたかくて、優しくて、ずるいというのは本当に卑怯だ
心を一気に持っていかれてしまう
そして大体、本人はそれを知っているのではないかと思う

心の温度とは、すごくいい言葉
里見と全は本当に対照的な温度だった
でも、どちらの温度もフジコにとっては必要で、本当にどちらにも救われたのではと思う
人と関わるときには、じっくり心の温度を感じてみたい
痛みと衝撃はいつか薄くなり、いずれ忘れる
悲しいけど、そうしないと、強い悲しみを持ったまま生きていくことはできない
でも、その強い悲しさを持ったまま生きていきたいということもある絶対、一生忘れたくない
忘れられることを恐れていた全さんは、フジコにそういう足跡を残していった
本当にひどいこと
でも、悲しいけど、忘れたくない
そういう出会いや経験があったことは、本当に幸せなことだと思った

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