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囲碁の価値について考えてみる

始めましての方もそうでない方もこんにちは。
ひだまりのMayuです。

昨日ツイッターでこの投稿にたくさんコメントをいただきました。

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何に対してこんなコメントをしたかというと、日本棋院という囲碁の総本山なようなところが、今を輝く囲碁の業界のスタープレイヤーを安売りしたというニュースです。
https://www.nihonkiin.or.jp/news/member/15_9.html?fbclid=IwAR1xjOQgy-0lPDGQxa5ThtnBepINGMHEO9uhkfoNitNh0awooI3AMBIYPRc

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囲碁業界以外の方はご存じないと思いますが、
このお二人は、若くして日本のトッププレイヤーになり、
今後の未来の囲碁業界を担っていく先生方です。

15周年記念イベントとはいえ、
それをたったの2200円で売り出すということに問題があると思いつぶやきました。

なぜ問題に感じたかというと
トッププレイヤーを安売りするということは、
囲碁を安売りしているのと同じことだからです。

囲碁業界の現状


囲碁の現状がどうかといいますと、
東京で頑張っているお店は10店舗もない状態です。
コロナによって存続が危ういお店もあります。

席料が2000円未満。
席料というのは一日座っていくらというものです。
8時間いても2,000円未満が普通です。

憧れどころか、こんなところで働きたいと思う人はいないでしょう。

そして、今回のスタープレイヤーとのネット対局。
記念とは言え、2200円で打ち出す日本棋院。
正直、日本のトップの組織がこんなことをしているということは、
同じ業界にいて恥ずかしいです。

しかし、囲碁業界の人たちはこういいます。
「囲碁人口が減っているから囲碁を普及させなきゃいけない」

自分たちで安売りしているものを、
やりたいと思っていない人にどうやって広めるのでしょうか?

本当は1,000円だけど、100円でいいよ!
なぜかと言うと、やりたいっていう人が少ないからね!

価格を下げればやる人が増える。
そんな安直な考えを持っているならば、
当然のごとく、囲碁業界に未来はありません。

価値を高めて価格を上げていく方にシフトしなければいけないです。

今回のコメントの中でこう書きました。

「プロ棋士の先生方が3,000円でレッスンするとしたら、
アマチュアはいくらでレッスンすればいいのでしょうか?」

実はこれはあまり関係のない話という意見をもらいました。
私もそう思っています。
プロは勝負師であり、教えるプロではありません。
(教えるプロの棋士の方もいらっしゃいますが)

なので、インストラクターの方が、レッスン代を高くとっている場合がありますし、人気自体も高いこともざらにあります。
それはインストラクターは「教える」ことを学んでいる人たちだから、
それに対しての価値が価格に表れているからです。

お客さまがインストラクターに求めるものは、
「強くしてほしい」
そのためならお金を払おうと思うので、
価格に関してはお客様側が、自分が強くなることにどれだけ価値を感じるかです。なので、価格はお客さまのお財布事情によって決まります。

私が伝えたいのは、
トッププレイヤーの安売りはしてはいけないということです。

音楽は安売りしない

少し話がずれますが、音楽の話を例に出させてください。

2008年にDJを始めて3年くらいたった時に、
めちゃくちゃ好きなアーティストができました。

そのころ、私がやっていた音楽:Tranceはまださほど日本に浸透していなかったため、世界のDJランキングに入っているようなアーティストしか来日していませんでした。

こうなると、自分が好きなアーティストを生で見る方法は二つしかありません。
1.自分でパーティーを開いてブッキングする
2.その人が出ているパーティーに遊びに行く

1.はリスクが高すぎるので無理
2.はお金を払えば可能

私は2.を取りました。
その時英語も話せない、一人で海外に行ったこともない。
そんな状態でしたが、どうしても会いたいアーティストがいたので、
会いに行きました。

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この時の旅で使ったお金は、
・イギリスへの往復の渡航費:22万円(当時は無知だったので、高すぎる航空券、航空会社をえらんでしまいました)
・ホテル代:2泊で3万円
・交通費:1万円(イギリスの田舎の方にいったので、マンチェスターからの電車代が往復でかかった)

つまり、このアーティスト一人に会いに行くのに、30万円かかりました。

しかし、その時得たものは、
・好きなアーティストのDJで踊れた!
・好きなアーティストと話せて友達になれた!
・イギリスで生涯の友人ができた!
・小さなパーティーでDJさせてもらった!
・英語を勉強するきっかけができた!


30万円以上の価値がありました。

香港の常連さん


私のお店(カフェと囲碁ひだまり)にはカールという香港からわざわざ年に3回来てくれる素敵な男の子がいます。

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彼は私のお店にくるために、日本に渡航してきてくれます。
1回目はただ来てみたい!と思って来た。
2回目はチョーヤ梅酒杯に参加するために来た。
3回目は8ビットナイト(ファミコンナイト)に参加するために来た。

毎回、平日~週末にかけて仕事を数日休み来てくれます。
香港に有給という概念があるのかわかりませんが
5日くらい滞在するということは、滞在費がかかりますよね。

航空券が4万円+ホテル代3万円+飲食代=10万円
ひだまりにくるために年間30万くらい使ってくれるわけです。

ひだまりにあるもの。
級位者の店主、野狐九段のつかさ、雰囲気、お客さま。
価格も他のお店と比較したら、立地を考えても高い方でしょう。

そこには、囲碁カフェのプロフェッショナルはいても、
プロの棋士の先生はいません。
それでもひだまりに対して、時間とお金を使ってでも行きたい!
そう思ってくれています。

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カールに「なぜそこまでしてひだまりに来てくれるの?」と聞いたことがあります。カールは「香港にはこういう場所ないから」そう言っていました。

カールからしてみたら、「自分が理想とするお店が日本にあるから行こう」という感覚なのでしょう。
私はカールのようなお客様に来てもらいたいと、お店を作る段階から思っていたので、内装含めてそういうブランディングをしてきました。
それが実を結んだと思っています。

カールとは今も連絡をとっていて、オンライン対局会に参加してくれたり、
コロナが終わったらまた日本に行くね!と励ましてもらっています。

囲碁の価値とは?


音楽は価値を感じている人たちがたくさんいるので、
囲碁と比較すると価格は全然高いです。
2日間のフェスで1日8,000円、2日で15,000円が普通でしょう。

身に着けられるものでもないし、
その時を楽しむだけのためにそれだけのお金を支払います。

トップのアーティストを安売りする会社もないですし、
そういうアーティストも見たことがありません。
憧れられる職業であり、そういうブランディングをしているからです。

では囲碁はどうでしょうか?
囲碁は身に着けたら一生ものですよね。
5歳のこどもと80歳のおじいちゃんが対等にできるものです。
世界のどこでもできますよね。

人それぞれ、囲碁に対しての価値のとらえ方は違うと思います。
ちなみに私は囲碁に対しての価値は「コミュニケーション」の側面が大きいと考えています。

ひだまりは「囲碁カフェ」ですが、私が売っているものは
「囲碁を通じた人やものとの出会い」です。
それは人生を時には変えるものになると思っています。
なので、それなりの値付けをしています。

海外から日本に行ってこの先生と打ってもらいたい!
という囲碁ファンだって、世界にはいるはずです。

私は仲良くしているプロの先生がいないので、実情はわかりませんが、
女流の先生も男性の先生も、日本で名の知れた人気のある先生方はもっと価格を上げていってほしいし、ちゃんとブランディングしてほしいと思います。それだけの価値があります。

囲碁業界は人が減りすぎたことにより、
囲碁っていいものなんだよと自信をもって言える人が少なくなってしまったのかもしれません。

また、対局サイトが無料で提供されていることもあり、
打つだけなら無料なんだからという認識が曲がり通ってしまったのかもしれません。

すそ野を広げるために体験は無料というのはいいと思います。
しかし、囲碁が好きで価値を感じている人は、
それなりの価格を払ってほしい。普及普及というならば。

囲碁は音楽と同じくらい、価値があるものです。

私ができることは、囲碁をやったことがない人の視点で考えて、
そういう場所を提供していくこと。
そして、囲碁の価値をあげていくことだと思っています。

いつか「囲碁カフェ」が憧れの職場になるように。

今回の記事は賛否両論あると思いますが、
私なりの考えを書きました。
こういう記事を書かなければ、囲碁業界を変えることはできないと思ったためです。

囲碁であれ、音楽であれ、
価値のあるもの、エンターテイメント、サービスにはお金を払って応援しましょう。

サポートして頂いた皆さまには後悔させません!