睡眠不足の本当に怖い話
Youtubeにアップロードした「【3分動画】三時間睡眠で勉強した話|睡眠不足のデメリット」について
動画では、「集中力の低下」と「記憶力の低下」「食欲の増加(肥満リスクの増加)」について言及しました。ここでは、
食欲の増加(肥満リスクの増加)
集中力の低下
記憶力の低下
の順番で考えていきます。
1.食欲の増加(肥満リスクの増加)
短時間睡眠によって食欲が強くなることは多くの研究で示されています。食欲が強くなるメカニズムの中の一つとして、レプチンの放出量低下・グレリンの放出量増加 があります。
・レプチンの放出量低下・グレリンの放出量増加について
最初に「レプチン」と「グレリン」について紹介します。
レプチンとは、脂肪細胞で作られるホルモンである。脳の視床下部に作用し、食欲と代謝の調節をする働きをもつ。「食欲抑制ホルモン」などと呼ばれる。
グレリンとは、胃や膵臓などから分泌されるホルモンである。脳の視床下部に作用し、食欲を強める働きを持つ。そして、レプチンとグレリンは拮抗的に働く。
実際に、習慣的な睡眠時間と血液中のレプチンとグレリン量、BMIの関係を調査した研究によると、
と報告されています。その他の研究においても同様な結果が示されています。つまり、短時間睡眠が食欲抑制に働くレプチン量を減らし、食欲促進に働くグレリン量を増やすため、食欲が強くなっているのです。この研究では、予想通り平均夜間睡眠時間が7時間未満の被験者のBMIは高いです。
ここでもう一つ、注意すべきことは平均夜間睡眠時間が7~8時間の被験者のBMIが最も小さく、それよりも長い平均夜間睡眠時間の被験者のBMIは高くなっていることです。つまり、睡眠時間が長くなりすぎてしまうことも問題があると推測されます。
2.集中力の低下
集中力が低下する原因としては「マイクロスリープ」「脳の前頭前野の機能低下」の二つを紹介します。
集中力が低下する要因1.「マイクロスリープ」
マイクロスリープとは、昼間などの覚醒中に数秒から数分程度、眠ってしまう現象です。
と述べられており、睡眠不足が覚醒中にマイクロスリープを引き起こすため、集中力が切れてしまうと考えられます。また、マイクロスリープは交通事故の大きな原因になっていることが明らかとなっています。
実際に私も6時間睡眠で受験勉強をしていた時がありますが、睡魔に襲われる機会が多かったです。そのため、7時間30分の睡眠時間に変更をしました。
集中力が低下する要因2.「脳の前頭前野の機能の低下」
前頭前野とは、
前頭前野には「集中力を高めて作業に専念させる」「計画をたてたり、推論をする」などの様々な働きがあると考えられていますが、その中の一つとして自己コントロールがあります。
ここでいう、自己コントロールとは、短期的な欲求を我慢して、長期的な欲求を満たす行動を選択できる能力です。
例えば、ダイエットにおいて、とても美味しそうなケーキを見つけてしまい、食べたい(短期的欲求)としても、健康になる、理想のスタイルになるなど(長期的欲求)のために我慢します。この我慢することができるということが自己コントロールだと考えます。
前頭前野の働きは筋肉のようだと考えられています。筋肉のようにトレーニングで鍛えることができる。また、筋肉のように使いすぎると機能が低下する。多くの方が、仕事や勉強などを頑張りすぎた後に、普段より買い物をし過ぎてしまった、食べ過ぎてしまった、家族や友人の些細な言動にイライラしたなどの経験があると思います。これは、前頭前野の働きの低下が考えられます。
複数の研究が、睡眠不足が前頭前野の機能を低下させると報告しています。被験者にギャンブル課題を用いて、睡眠不足と意思決定の関係を研究した論文によると、
と述べられています。前頭前野の働きの一つである「計画をたてたり、推論をする」能力が低下していることを示す具体例になっていると考えられます。
前頭前野と自己コントロールの働きについては、今後、より深く考察をしていきたいと思います。
3.記憶力の低下
記憶力の低下については、参考文献と以下の記事を参考にしていただければと思います。
その他の短時間・質の低い睡眠のデメリット
様々な研究によって、睡眠不足が多くの病気にかかるリスクを増加させていることが示唆されています。例を挙げると、
糖尿病
免疫力低下
癌
心疾患
うつ病や統合失調症
などです。睡眠が健康に大きくかかわっていることは、間違いないでしょう。
まとめ
今回は、睡眠不足や質の低い睡眠で体に起こる様々な問題について考えました。次回は「質の高い睡眠をとる方法」について学んでいきたいと思います。
コラム:成長ホルモン増量大作戦
30分以下の昼寝は午後の眠気の軽減や集中力の向上などのメリットがあると言われています。また、長時間の昼寝はよくないと言われています。
しかし、私は長時間の1時間30分の昼寝をとった方がいいのではないかと考えた時がありました。理由としては、30分の昼寝のメリットに加えて、「成長ホルモン」の放出量を増やせると考えたからです。というのも、
という知識を得たからです。この成長ホルモンの血中濃度の記述は夜間睡眠に対してのものであり、昼寝に当てはまるのかはわかりません。しかし、「第1睡眠周期で最大の分泌量を示す」ということから、昼寝の場合でも睡眠の最初の1時間~2時間の間に成長ホルモンを多量に放出できると推測しました。
そして、私が考えた成長ホルモン増量大作戦は次のようなものです。
夜はいつも通り7時間半眠る
昼は1時間30分、昼寝をする
こうすることで、夜の一度の睡眠よりも成長ホルモンを2倍近く放出できるのではないか、成長しまくれるぞ! と仮説を立てました。
実際に作戦を開始しましたが、結果は散々なものでした。初日は、元気になった気がしたのですが、二日目頃から昼寝が嫌になっていきました。三日目は、まったく昼寝をしたくなかったです。ですが、無理やり昼寝をしました。すると、体に異変が起きました。起きた後にとても気持ち悪くなり、平衡感覚がおかしくなりました。(熱中症や貧血による立ちくらみの時の感覚と近かったです。)ストレスも非常に大きく、夜もなかなか寝付けなくなりました、、、
こうして、成長ホルモン増量大作戦は失敗に終わりました。
やはり、前日に睡眠不足である場合や病気の場合などを除いて、健康な成人が昼寝をする場合は30分以下がよいのでしょう。
こちらの記事もよろしくお願いします。
引用文献
1.Taheri,S., & Ling,L., & Austin,D., & Terry,Y., & Mignot,E. (2004).Short sleep duration is associate with reduced leptin, elevated ghrelin, and increased body mass index.PLos Medicine,1(3),210-17. doi:10.1371/journal.pmed.0010062.
2.渡辺正孝.脳科学辞典,前頭前野.(2014).URL:https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%89%8D%E9%A0%AD%E5%89%8D%E9%87%8E.
3.堀忠雄,白川修一郎.(2014).基礎講座 睡眠改善学.ゆまに書房.
4.Ilse M Verweij, & Nico Romeijn, & Dirk JA Smit, & Giovanni Piantoni, & Eus JW Van Someren, & Ysbrand D van der Werf.(2014). Sleep deprivation leads to a loss of functional connectivity in frontal brain regions. BMC Neuroscience.doi:10.1186/1471-2202-15-88.
参考文献
1.クリスティアン・ベネディクト,ミンナ・トゥーンべリエル,鈴木ファストアーベント理恵訳.熟睡者.(2023).株式会社サンマーク出版.
2.マシュー・ウォーカー,桜田直美訳.睡眠こそ最強の解決策である.(2018).SBクリエイティブ株式会社.
3.西野精治.スタンフォード式最高の睡眠.(2017).株式会社サンマーク出版.
4.睡眠学-第2版.(2020).日本睡眠学会.
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