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半導体受託製造のトップ企業,台湾TSMCの2022年1Q決算

はじめに

台湾TSMCが2022年1Qの決算発表を行いました.今回はその内容を見ながら同社の強さと今後の見通しを説明していきます.

TSMC 2022年度1Q決算内容

参考資料:

https://jp.reuters.com/article/tsmc-results-idJPKCN2M60B8

https://investor.tsmc.com/english/quarterly-results/2022/q1

総売上は,170.57億 USD (2兆1千5百億円相当), 粗利益率は55.6%, 12インチウェハー換算で377万8千枚の出荷を記録しています.純利益率は,41.3%と昨年の4Qからさらに上昇しました.

最新プロセスである5nmと7nmの利益もどんどん向上しており成長著しい印象です.

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出荷半導体の分野別では,Appleのiphoneのモデルチェンジが落ち着いたためにSmart Phone分野はほぼ4Qと同じで,HPCとAutomotive分野の成長が著しいことが伺えます.AMDのZEN4を搭載したEPYC,NVIDIAのAmpereの需要とHopperの製品出荷の立ち上がりにあたりこのような結果になったのだと思います.

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オンラインで会見したCEO 魏哲家(C・C・ウェイ)氏は,半導体需要が長期にわたって続くと予想しました.また現在も続く半導体不足を緩和するため,顧客と協力していると述べました.

同氏は”新型コロナウイルス流行の影響が続いており,サプライヤーが自らの供給網で大きな課題に直面している.労働力, 部品,半導体が不足しており,ツールの納入期間が延びている”と指摘しました.

 

TSMCの強さ

数10年前までは,垂直統合型の半導体企業が市場で成功を収めていました.これは,設計開発と製造までを全部自社で行う事業モデルです.しかし現在は,設計開発と製造は別会社が行うことが主流になってきています.これは,まず最先端プロセスの高度化により巨額の開発費用と設備投資が継続的に必要になることで従来の垂直統合型では自社で負担しきれなくなったためです.そんな中,半導体製造請負で圧倒的なスピードで成長し今もトップを走っているのがTSMCです.こういった受託生産を行う会社をただの下請けという見方をするとしたらそれは大きな間違いで,現在は世界中の企業がTSMCの先端プロセスに依存しています(Apple, Qualcomm, NVidia, AMD, Intel, etc…).顧客には錚々たるグローバル企業が名前を連ねていますが昨年TSMCが値上げを発表したことからわかるようにそういった顧客企業には値段を付ける決定権はありません.なぜなら,競争力のある製品をリリースするためにはTSMCに頼るしかないからです.

こういったある種の下剋上が起こったために,Appleは上手くTSMCと協力し,Apple Siliconと呼ばれる競争力のあるSOCを次々に自社製品向けに開発し搭載モデルを増やしています.消費電力あたりの性能では間違いなく世界一であり,Apple製品はIntelのチップが搭載されいたモデルよりWindows PCとの差別化とコスト面での競争力を獲得しました.

Intelも受託製造ビジネスを立ち上げて,TSMCに追いつこうとしていますが,今後数年で追いつくのはたぶん無理でしょう.競合他社としてはSamsungが存在していますが,最先端プロセスの立ち上げではTSMCに遅れをとっています.それもそのはずで,昔の半導体製造プロセスの開発はドイツのアウトバーンのようなしっかり整備された高速道路を時速200kmで巡航しているような状態でした(つまり先は見通せて障害は少ないので一気に進めたということです).現在のTSMCはいうなれば,田舎のあぜ道をアクセル全開でレースしているような状態です.何かのミスが起きれば吹き飛ばされてクラッシュするようなギリギリの状態で最先端プロセスの開発を行っているということです.

この決算結果からもわかるように高い収益率と継続的な投資で,これからも半導体受託製造のトップ企業として成長していくでしょう.

ちなみに,今後4nm, 3nmプロセスの立ち上がり,そして2025年までには2nmプロセスのリリースを計画しています.あと10年ぐらいするとついてにÅ領域へ半導体微細化は進みそうです(その前に3次元化が急速に進むかもしれません).

まとめ

今回は私の保有銘柄の一つTSMCの1Q決算とその強さを紹介しました.半導体分野はまだまだ需要が伸びると言われており,これからの成長が楽しみです.私も使っている製品のほとんどがTSMCで製造されています.今は株式市場全体のボラタリティが上昇しているので下に大きく振れたときに買いまししていきたいと考えています.

免責事項
ここに掲載された内容は投資アドバイスではありません.
掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください.


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