104 柿を干す
実家に大きな柿の木があります。
小さな金柑の木も。
どちらもおそらく父親の趣味だと思います。
父親は果物大好きで、
晩秋には鈴なりに実った柿をもぎ、
初冬にはちんまりと実った金柑をぷちっともぎ、
庭で即座に食べる父を見て、
「鳥か?鳥なのか?この男は」
そんなふうに思っていたのが原風景なので、
あまり柿の印象って良くなかった。
そもそも買うものではないと思ってるしね。
買ってきた果物とは違う粗野な感じも興味が湧かない原因でした。
でも今この生活をしていると、
ああ実家の環境ってすごかったなと思うのですよ。
それはもちろん郊外だから成立していることではあるんだけど、
庭車庫付きの一戸建てで、南向きで果物の木が生えていて犬がいる感じ。
実家なんて本当に好きではないけど、
でもその環境は最高に良い。
現在が猫の額より狭いベランダしかない住環境なので、
家庭菜園ができる庭とか、大きな木を植えられるとか、本当に憧れる。
ああ、いいなあ柿のなる庭。
と思ってここ数ヶ月暮らしていたんです。
そしたら、送ってきたのですよ。
突然母親が。
もちろん私の心のうちを知っているわけもなく、
あちらが捌ききれないのでわかりやすい押し付けをしているだけなんですけど。
父が作った大根と長ネギと一緒に。
箱を開けてバラバラと入っている柿を見て、
おいこれどうすんだよ、と思考停止。
あ、あたし柿は興味ないけど、あんぽ柿はめっちゃ好きだぞ?あれって作れるの?
いそいそとネットで調べたら、出てきますね。
目が遠くなるほど不器用だけど、
ビニールテープもうちにある。
いっちょやってみっか!
そんな感じで柿を干しました。
干しながら、ふと
昔の人は渋柿を無駄にしたくないと思う一心で柿を干したのかなと。美味しいからとかではなく。
江戸時代はリユース、リサイクルが徹底されていて、SDGsだと言われていますけど、
今ならその時の気持ちがわかる。
お金がないどころか、物もないから絶対無駄なんかできなかった。
無駄をすることは死活問題で、どれだけ無駄を出さないか、無駄を出さないための隙間産業でなんとか生きてきた、そういう世界なんだろうな。
丁寧な生活ってもっと髪の毛振り翳した感じの精一杯の感じだったのかもしれないな。
今その時の気持ちが分かりづらくなってるから、素敵に見えるだけでね。
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