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小さいころのシンデレラ症候群

幼少期の頃、自分は絶対にこの両親の子供ではないと思い込み、ピーちゃんと呼んでた鳥のカワセミの人形を片手に家出した。

夕方、夜になるにつれ、寂しさでやっぱり帰らなければならないという諦めの気持ちがわいてきた。

両親は怒らなかった。心配したよと言っただけ。

鼻が低く頬骨が出ている丸顔、産毛とは呼べないほどの毛深さの四肢はやっぱり両親から受け継いだものだ、

他人から似ていると言われる度にそうか、これが遺伝子の力かと。

きっと王子様が迎えに来てくれる、
もっと素敵な両親が私にはいるはずだと、

これがシンデレラ症候群ってやつですね。

ボロボロのピーちゃんを抱きしめながら、どこか、この世界に希望と絶望を感じてたあの頃。

もうそんな心理的な発達段階はとっくに乗り越えたアラサーだし、酸いも甘いもなんとなく分かっているつもり。

ちなみにピーちゃんは多摩動物公園で祖父母に買ってもらったお気に入りの人形で、青と白のコントラストが美しく、丸っこい形状で持ちにくかったので、よく落としていた。ピーちゃんは次第に灰色になった。

そんなことを繰り返しながら、それからしばらくして、多摩動物公園のトイレに置きっぱなしにして、失くしてしまった。

忘れたと思って戻ったらもう、ピーちゃんはいなかった。

ピーちゃんは飛び立ったのだ。

しばらく泣いたけど、ピーちゃんは自由になった。

自由と責任を謳歌する社会の荒波にもまれながら、ピーちゃんは進化して、

きっと、強い真っ黒なカラスに変身しているかもしれない。




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