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ツアーコーディネーターになってみて

9月初頭に、立教大学の学生14名を対象にしたスタディーツアーを実施した。このツアーの企画及び全体統括を任せていただいた。1年間のインターン生活の中で最も大きなお仕事。半年前に提出した私のインターンの志望書を見ると、「最も頑張りたいことはスタディーツアー。問題が発生した時にリカバリーする力を身に付けたい。」と書いてある。日本でやっていたバイトやインターンは、問題が起こった時に誰かしらが助けてくれる環境だった。だから自由に色んなことに挑戦できた一方で、誰か頼みで無責任でもあった。しかしこのツアーでは全体統括という立場となり、問題が発生したら自分が何とかしなければならないし、無謀な計画や粗雑な考えは自分の責任となる。有難いことに(?)、企画段階からたくさんの問題が起こって、その度にもがくという経験をすることが出来た。

このツアーを企画・実行する上で気をつけていたことは以下の3つ。

①責任の分配をすること
②全てのプロセスを見える化すること
③ 自分が心の底から参加したいと思うツアーを作ること

①責任の分配をすること


ツアーの企画というものは、途方に暮れる程のプロセスと、多くの人の協力を必要とする。それらを全て1人で行おうとすると必ずミスが起こるし、いくら時間があっても足りない。だからそれぞれの項目に責任者をたてて仕事を割り振り、責任の所在を明確にすることを心がけた。

もともと、仕事を分配することは自分が仕事を捌ききれないという弱さを見せているようで心地よくなかった。誰かにお願い事をする時に「ありがとう」よりも「ごめんなさい」が先に出てきてしまっていた。しかし、責任を分配することをテーマにおいて、意識的に実行していこうとすると、今までの自分がどれだけ自分中心に物事を捉えていたかがわかった。

責任を分配することで、ツアー全体のクオリティがあがる。それは全体統括をしている自分にとってもポジティブな変化。冷静に考えれば気がつくことだけど、これがわかるまで時間がかかった。

②全てのプロセスを見える化すること


ツアーの企画をする上で最も困ったことは、今までの記録がないこと。ツアー自体は何度も実施されているのに、その詳細がほとんど残っていなかった。だから小さな見落としや、準備不足箇所に最後の最後まで苦しめられた。

次回以降同じような問題が起こらないように、全てのプロセスを記録した。記憶上で仕事を進めることがないように、自分以外の人が同じ担当箇所に入ってきてもスムーズに引き継ぎが出来るように、細かな作業の全てを見える化した。①の責任の分配にも繋がるが、そうすることでやるべきことが明確化され、仕事に対して責任を持ちやすくなった。出来ていること/出来ていないことがハッキリとしているので、次何をすべきかが分かりやすくなった。

予定の変更などで生まれた新しいプロセスも全て残した(手間のかかる作業だったが)。ツアーが実行されるまでにどのような経緯を辿ってきたのかが重要だと思っていて、何を検討して、何を取捨選択してきたのかを説明できてこその良いツアーだと思う。その点で、踏んできたプロセスをも引き継いでいけるよう、情報を上書きするのではなく別ファイルとして軌跡を追えるようにしてみた。

③ 自分が心の底から参加したいと思うツアーを作ること

ツアーコーディネーターであれば当然のこと。でも実はとても難しい事だった。

まずひとつが、ツアー企画段階で感じた “ツアー参加者の希望“ד訪問先の希望”דコーディネーターの希望” の着地点を探すことの難しさ。三者ともなると一気にコミュニケーションの数が急増し、難易度もグッと上がる。最後の最後に決定するのは自分で、その決定に自信を持つ必要がある。自信を持つための物差しのひとつが「参加者だったらやりたいかどうか」。三者の言い分を均等に反映させようとすると何だかよくわからないものが出来上がってしまうこともしばしばあった。大事なのは参加者の立場になること。参加者の希望ばかり通すのは良くないが、参加者の希望外でも参加者にとって意味ある時間を築くことが出来るかどうかという部分は特に大事にしたかった。

もうひとつが、ツアー実行時に臨機応変に対応することの難しさ。念入りに計画をしてきたからこそ、それに添えなかったときに大きな不安を感じてしまった。しかしツアーは生もの。その日のツアー参加者のテンション、訪問先の様子、時間、天候など様々な要素が重なり合った中で、その場における最善を選択できてこそ、真のツアーコーディネーターだと思う。ただ、この能力は誰かから教わることではない。経験を積んでこそ身につくもの。計画を計画通りにこなす力も大事だけど、計画を敢えて端において、己の感性を信じて別の選択ができるくらいの余裕も持ちたい。ツアーを生の状態で扱った方が、ツアーの満足度も上がると思う。その方が自分もワクワクするし、そんなツアーがあったら私も参加したい。

立場を強みに変えて

ツアーではコーディネーターとしての自分と、参加者と同じく大学生という自分がいた。そしてそれが強みだと思った。
コーディネーターとはいえ、正直バングラデシュについての知識量に関しては、私以上に豊富に持っているスタッフが他に沢山いる。だから、ツアーコーディネーターとしての全体統括という仕事に加えて、私が担うべき役割は「自分の経験を語ること」だと考えた。

ツアー参加者にとっては初めてのバングラデシュ旅。私がつい半年くらい前に感じていた気持ちに近いものを今抱いているかもしれない。その瞬間に、どんな言葉を掛けてもらえると安心するか/嬉しいか、学びに繋がるのか、が何となく想定できた。おそらくスタッフの皆さんは知識は豊富だけれども、初期の頃の感覚はどうしても記憶が薄れてしまっていると思う。もしくはベンガル人スタッフには分からない感覚だ。インターン生という宙ぶらりんな立場だからこそ、スタッフ側と大学生側を自由に行き来できる存在として、ツアー参加者により近い感覚を持ってツアーを運営できたのかなと思う。

バザールを散策するコースがあって、特にゴールも決めずにブラブラ歩きながら目に入ったものを説明していた。ただ、肉売り場に来た時に、生きた状態で販売されているニワトリさんたちを見て、「この子達はこの後どこでどうなっていくんだろう、、」と初期の頃に考えた記憶が蘇った。私はとっさに止まって、自分用に1匹買うことにした。同行して下さっていたベンガル人スタッフは少し戸惑った様子だったが、自分が初めて見た時の胸のザワザワ感を感じとってほしいという願いと、食や命について考える良い機会になるという確信があったので、購入を決めた。
実際に目の前でひとつの命を頂き、まだ少し温かいけれど、見た目はいつものスーパー…という状態を目の当たりにして、参加者たちには色々と感じる部分があったようだ。私も胸のザワザワ感を未だに感じる。同じ感覚を共有できてしまうのも自分の立場の強みだ。
ツアー全体の事後アンケートを読んでみても、このエピソードをあげてくれている方がいた。

「今まで残してきてしまったご飯にごめんなさいと言いたい」

この学びは初めは想定されていなかった。でも、自分の経験から絶対に感じてほしいという確信と、こちらの選択の方がいいという自信があったから、舵を切ることができた。

ツアーってこういうことかなと思う。
準備はもちろん大切。準備が120%できているから舵が切れる。
その強固な土台があるのであれば、新しい選択をすることで広がる予想外の学びの要素をたくさん咲かせたい。だから同じツアーは、二度と同じものは作れない。

まとめ

自分の経験や自信を持ち合わせていると、選択肢を広げることができる。そのためには入念な準備が必要で、責任を分配したりプロセスを見える化したりといった工夫をして、土台を固めあげておく。「もう1回」はないけれど、もう一度ツアーの企画をやらせて貰えるのであれば、もっともっと「計画からはずれた思わぬ学び」を作り出したい。
さいごに、インターンの志望書に綴った「失敗してもリカバリーできる力を身に付けたい」という部分について触れて終わりにしたいと思う。問題はもちろんたくさん発生した。時間の把握ミス、スタッフ間のコミュニケーションミス、道具の準備ミスetc..初日や2日目は自分もパニックになってしまっていた。しかし、日が経つにつれて、パニックになるよりも先に、周りに協力を求めたり、適度に仕事を分担したりして乗り越えていこうとする言動ができるようになったかなと思う。もともと人を頼ったり、協力をお願いしたりすることはあまり得意ではなかった。しかしこのツアーコーディネーターのお仕事のおかげで、仲間に頼らなければどうしようもならない状況から、人を頼ることの大切さを学んだ。

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以上全体統括から見えたツアーの景色でした。プロセスの全てが新鮮で、大変なことも含めて楽しい思い出です!

バングラデシュへお越しの際はぜひツアーコーディネートをさせてください😉🇧🇩

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