日々の機微(77) コミュニケーションって難しい

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今日取り上げる2つのテーマ

今日は書きたいことが2つあります。ひとつは、ラジオパーソナリティについて。もうひとつは村上春樹『1Q84』の考察です。

好きな方だけでもご覧ください

伝える技術は難しい

かつてFM愛媛で「森の国俳句ウォーク」という番組を1年半させていただいていました。

番組では、芝不器男の俳句を通じて、松野町の魅力を発信していました。

収録は、2本撮りで、隔週に収録があり、とても忙しかった思い出がありますが、番組を通じてたくさんの松野町の方々にインタビューをさせていただきとても良い経験になりました。

それから、かれこれ2年が経過ています。そして最近、テレビ番組の取材を受ける経験があったのですが、そのときに「森の国俳句ウォーク」の経験が蘇る瞬間がありました。

例えば、編集点(編集で切りやすいように言葉の間を開けたり)を意識して話したり、同じ意味の質問を言い回しを変えて再度投げかけてみたり。小さな技がいくつもあったことを思い出しながら取材に応えていました。

そういった点はかつての経験が生きた点だと思うのですが、逆に悪い癖も出てしまいました。

それは少し冷静そうな声色で話してしまうという癖です。声色で楽しい雰囲気だったり、伝えたいところを強調したりもっともっとうまく出来たのではないかと反省があって悔しいなと思いつつ、4月の放送がどうなっているか楽しみです。収録は30分程度でしたが、番組の枠は3分です。

そういえば、自分のラジオ番組以外でもその頃はラジオのインタビューしていただくことがありました。プロのパーソナリティの方は、インタビューされる人の気持ちを乗せるのがうまく、30分番組であれば、ほぼ30分ぴったりで収録が終わったことに驚いたことがありました。

インタビュアーとして、インタビュー相手の良き伴奏者になれたらいいなと思います。

「それはなぜ?」より「それはなに?」

それで、昨日は一日インタビュアーのつもりになって過ごしてみました。

インタビュアーになった
つもりで話を聞いてみると意外に5w1hで質問するのが難しいと感じます。

ざっくりと「なに?」「なぜ?」「どうして」を使いがちになってしまいます。

的確に場面場面に合った言葉を投げるには常に意識して習得するしかないような気がしました。

先日、友人から「なぜ?」より「どういう意味?」の方が友好的な掘り下げができると教えてもらったのでそれも意識していきたいと思います。

村上春樹『1Q84』 牛河についての考察

打って変わって村上春樹『1Q84』の考察の続きです。

『1Q84』に登場するキャラクターのなかで牛河という人がいます。牛河は、村上春樹の別の作品『ねじまき鳥クロニクル』にも登場します。

その牛河は『1Q84』の世界で顔に袋を被されゴムで首を絞められ殺されてしまいます。

けっこう残酷でしたが、牛河は『1Q84』のなかでも特色のある印象の強いキャラクターで終盤に殺されてびっくりでした。

なぜ彼が殺されてしまったのか、ということを昨日今日と考えていました。

牛河は『ねじまき鳥クロニクル』では議員秘書として登場します。DVをして妻と別れ、どうしようもない嫌なやつとして描かれていますが、天性の勘で危機を脱していきます。

そんな彼がついに『1Q84』で万事休すになってしまいます。どうして『ねじまき鳥クロニクル』の世界からやってきた牛河が『1Q84』の世界で殺されなければならなかったのでしょうか。

『1Q84』では、牛河は物語の世界に現れる「2つの月」が見えている3人のなかの1人です。他の2人は主人公です。彼は主人公以外で「2つの月」をみることのできる存在でした。なぜ彼はふたつ月を見つけることができたのでしょうか。

それを考えていると、この『1Q84』の複雑な構造のなかにあるような気がします。『1Q84』はパンの生地にチョコレートやクリームを練り込むように、複雑な構造になって椅子。その複雑な構造に牛河も練り込まれているような気がしてきました。

『1Q84』は女主人公青豆が高速道路の緊急脱出口を通過して入っていく世界ですが、同時に男主人公の天吾が小説として描く世界でもあります。

ここが複雑な構造のミソです。

「青豆が生きる世界」「天吾が描く世界」そこに、別の小説から紛れ込んできた存在として牛河は登場しているという気がしてきました。

そして、殺されなければならない理由はなんといっても、牛河のDV歴があるという設定が大きな要因になった気がします。女主人公の青豆はDVをしている男を暗殺する仕事をしています。だから牛河は暗殺対象になる相手でもあります。ですが『1Q84』では、そんな青豆を偵察する存在として牛河はいます。それはそのままDV男の監視にも捉えられます。

青豆=DV被害者
牛河=DV加害者

の構図になっています。

DV加害者を暗殺する青豆も構造としてDV被害者っぽく描かれてしまう要素がこの牛河です。

そして、『1Q84』に登場するDV加害者は暗殺されなければいけません。

被害者の立場の青豆が手を下すことはできないので、実際に手を下すのは青豆ではなく、青豆の右腕として動いている「タマル」が牛河を暗殺します。

すごく酷く粗い手法で。

ですが、ここで戻って考えると牛河は主人公以外で「2つの月」を見れる存在ですを


それが意味するところは、異世界から来た存在ということだと思うのです。そしておそらくその異世界は『ねじまき鳥クロニクル』だと思うのですが、『ねじまき鳥クロニクル』で大活躍の牛河が『1Q84』の世界で殺されるのはちょっと可哀想と思ってしまいました。

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