第3回架空選評句会

【はじめに】

第1回から続けて投稿していただいている方、2回目からの方、今回はじめて投稿していただいた方、お時間を使って一句捻っていただきありがとうございます!この架空選評句会は、架空の選評を元に自分のカラーを出しつつ架空選評にどのようにして近づけるかポイントです。ここは、作品を世に出す場ではなく、技術を磨く場となればいいかなと考えています。ぜひ他の人の作品と比較し、自分なりに他の人の作品を分析し、本来の作品を書くときに活かせるように取り組んでいただけると面白いでのはないかなと思います。

【今回のお題】

一面の白。白といえば雪が降る冬をイメージしそうなのに、この句では夏。大景で捉えているなかにポツンと具体物が入っていているのが良い。

今回のポイント
①背景は白(それも季感のあるものを持ってくる)
②クローズアップではなく広角の視点で描く
③尚且つ、ひとつ具体物が入っている

要素としてはそんなに描きにくいものではありませんが、「夏なのに白」というのが取っつきにくさとしてあるように作ってみました。

【さっそく選評】

死海炎ゆ塩のウエディングドレス立つ 赤野四羽
死海がゆらゆらと炎えている(蜃気楼的に)。そこに塩のウエディングドレスで立っている。シガリット・ランダウさんという方がそういったアート作品を作っているのですね。「死海炎ゆ」だと水平な視点でしか認識できないと思うので半分は青空になってしまうのではないでしょうか。架空選評的には、頭で絵を描いたときに全面が白で覆われている方が合致していたかなと思います。句材の面白さは感じられます。

白南風や体より外される管 菊池洋勝
「白南風や」の提示の仕方では一面が白までは意識がいかないでしょう。一面の白をもうすこし丁寧に描きたいところです。

雲海の波に乗りたる機影かな ひうま
星野いのりさんの作品と類似していますが、こちらの句は影を強調しているので白の中にポツンと黒があることが意識されコントラストが効いています。「波に乗りたる」がかわいい比喩に対してカッチリした文語表現なのでバランスが取れていないような印象を受けます。

朝凪や揺れぬ発泡スチロール 夏銀
朝凪の海に無数の発泡スチロールが浮かんでいるのでしょうか。朝凪との関係をはっきりさせるには「や」で切らず「に」という手もあったような気がします。そうした場合「揺れる」が説明的なので別の言葉を置いてもいいのかもしれません。

海霧や浦島開けてしまつたか 登りびと
海の霧だ!これは浦島が開けてしまったのかもしれない。といった句意でしょうか?発想のメルヘンさはかわいいですが、朝霧を玉手箱の煙に例えるのはややチープな気がします。

月面めくホワイトサンズ蜥蜴の歩 いかちゃん
ホワイトサンズの写真を見るとたしかに月面ぽさがあります。バッチリ条件をクリアしていて流石という気がしますが、この句はやや出だしのリズムの悪さと、景の対比が狙いすぎている気もしました。ただホワイトサンズという6音も使う言葉を使用しようという考えは敬服します。


【架空賞な一句】

雲海を滑る機窓のうち震ふ 星野いのり
雲海の上を滑っている飛行機。その窓が打ち震えている。
最初に雲海の上を通る飛行機を提示。やや暗さがあり雪のイメージとは離れるものの、この提示の仕方で選評に出てくる要件を一髪クリアしています。
なので、悠々とその後に展開を加え選評以上の要素を盛り込み且、窓が震えているのが生々しく実感できる作品になっています。


【投句一覧2020.8.13】

雲海を滑る機窓のうち震ふ 星野いのり
https://twitter.com/kT7Jrvhnsq58RhA

死海炎ゆ塩のウエディングドレス立つ 赤野四羽
https://twitter.com/AkanoYotsuba

白南風や体より外される管 菊池洋勝
https://twitter.com/kikuti29

雲海の波に乗りたる機影かな ひうま
https://twitter.com/hiumahiuma

朝凪や揺れぬ発泡スチロール 夏銀
https://twitter.com/ctMkUQaJ7UUKGcN

海霧や浦島開けてしまつたか 登りびと
https://twitter.com/kotobafushigi

月面めくホワイトサンズ蜥蜴の歩 いかちゃん
https://twitter.com/okapie1018


【次回のお題】

封筒のなかという空間をうまく使っている。封筒の中にそういう世界が広がっているなんて考えつかなかった。封筒の中だけどこういう描き方をすると明るさを感じる。

【告知】

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