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no.20 【閲覧に注意】夫婦共同作業の日

介護認定調査の結果、義父は「要介護1」と認定された。
認知症が進んでいることも気になるが、同居する家族の目下の悩みは、
義父の「便失禁」である。
(義父が悩んでいるかはわからない)

高齢者の便失禁の原因は、「肛門括約筋の筋肉の衰え」というから、
義父の年齢を考えると、無理からぬことと思う。
失禁すれば、本人はショックを受けるだろうし、周囲の人(家族)は当人の自尊心を傷つけないよう、配慮が必要…ということは、ま、想像がつく。

我が家の義父の場合は、粗相をしても「失敗した」とか、「情けない」とか、思い詰める様子はない。素知らぬふりで、取り繕おうとする。

そして、事件は起きた。
その日は、義母がショートステイへ行く日で、夫には久々の休息となるはずだった。
義父は、例によって、黙って一人で出かけた。
そして、外出先で便失禁をしてしまったらしい。(←義父は何も話さない)
義父は、電車に5分乗り、10分歩いて家まで帰って来た。(←案外しっかりしている)
そのとき家にいて、強烈な臭いに驚いたわが夫。
義父の部屋に行ってみると、義父はいつものように座椅子に座り、テレビを見ていたという。

夫 :「もらしたんじゃない?」(もっと気の利いた言い方はないのかw)
義父:「・・・」
夫 :「すごい臭いだけど」
義父:「・・・」

おそらく、義父は取り繕う術を思い付かず、無言だったのだ。
夫がシャワーをするように言っても、なかなか動こうとしなかったそう。

なんとか脱衣所まで移動してもらい(おそらく、ケンカ腰であったはず)、着ていたものを脱がせてみると、
パンツ、ズボン下、ズボン、くつ下、みな汚れていた。
→パンツ、ズボン下、くつ下は廃棄(夫)
→ズボンは汚れを取り除き、水洗い(夫)

体もパンツからこぼれ落ちた汚物で、お尻はもちろんのこと、足の指の間まで汚れていたとのこと。なので、床が汚れた。
→汚れた脱衣所の床を拭く(夫)

シャワーは義父自身にしてもらい、着替えを取りに行こうとしたら、廊下も汚れていた。
→拭き掃除(夫)

汗まみれで後片付けをしている夫に、シャワーから出てきた義父はこう言った。
「わしのご飯は?」
「すまなかった」ではないんかい!(泣)

シャワーをしたら、さっぱりするのはわかる。だからといって、なんでシャワーをしたのか、その理由までも忘れてしまうものなの?
もうわからぬ…

この日、夫は相当に疲弊していた。
親の失禁って、子どもにも、なかなか心理的にきついと思う。
私は遭遇しなくて済んだわけだが、聞いているだけでもしんどい話であった。

夜になって、水洗いしてあったズボンをハイターにつけ、洗濯機で洗った。(私)
せめて、これくらいは、しなくてはなるまい。
洗濯が終わり、ズボンを取り出してみると、何やら嫌な予感。
うおぉ、ティッシュが入っていたぁ…(泣)
ズボンを叩くと、ティッシュの小さな屑が、無限に落ちてくるのだった。

ところで、義父と同じ電車に乗り合わせた人たちは、無事だっただろうか。
地方のローカル線ゆえ、日中は一両編成なのだ。
臭いのせいで、気分が悪くなった人がいたとしても、不思議ではない。
5分ほどとは言え、逃げ場のない車内…申し訳なさすぎる。

今後は、義父には紙パンツをつかってもらおう。素直に「はい」とは言わないだろうけど、ここは譲れない。
「はかせてみせよう、ホトトギス」なのである。


在宅介護*観察日記『義母帰る』


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