ダージリン・シッキムの山旅④    ~エアポート・アショカ 外見一流 中身三流~

 今度は両替。なんでこんなに時間がかかるんだろう。疲れ切った子ども3人と私は、荷物を守りながらお父さんを待っている。

 姪っ子がトイレに行きたくなる。一人では行かれない。
でも私がついていくと、娘二人が荷物と残されることになる。それは危険だ。姪っ子が頑張って一人で行く。

 インドルピーを手にしたお父さんが戻ってくる。今度はホテル探しだ。空港の外は真っ暗闇で、ホテルなどありそうにもない。
 
 ガイドブックの『地球の歩き方』にエアポート・アショカホテルの紹介があって、『一流ホテルでも気を抜かないで‼財布を置いて街に出たら高額紙幣だけなくなってた‼』とのコメントがあり、ここだけは泊まりたくないと思っていたのだけれど、どうもここしかなさそうだ。
 
 タクシーの運ちゃんと、けんか腰で値段の交渉をする。乗り込んだタクシーのヘッドライトに浮かんだのは、まず牛だ。
 
 「もっと安くて良いホテルを紹介するョ」例によって、運ちゃんが話しかけてくる。でもこれでうまくいったためしがないので、キツーイ口調でお断りする。やり取りを耳にしている子どもたちには、けんかをしていると聞こえたことだろう。
 
 エアポート・アショカホテルは、インドに張り巡らしたその名も高きアショカグループのホテル版で、一流ホテルである。外見は堂々としている。玄関前には白馬に乗った番兵(こんな遅い時間に少年とは)が凛々しく構え、私たちを迎えてくれる。

 ロビーも清潔でほっとする。ところが部屋はちっともきれいじゃない。外の音もうるさい。荷物を運びこむのに、5人もボーイがやってきてチップを要求する。開けても冷気を感じない冷蔵庫に入っている瓶ジュースは、もちろん冷たくない。

 まあまあ、とにもかくにもシャワーを浴びて横になれば、それだけで幸せだ。インドでのながーい一日を実感する。着いた時だけ電話の約束をしていた姪っ子は、さっそくコレクトコールを申し込む。が、返ってきたのは1時間もあと。みんな諦めて、寝静まったころにやっと通じたのだ。

 ”これから何が起こっても、おじさんおばさんたちと1か月のインド旅行に付き合うしかないな”と、このとき姪っ子は気持ちを引き締めたんだろうな。


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