ダージリン・シッキムの山旅⑤        ~霧深く ひや汗たらたら ダージリン~

 9月9日。昨晩のしつこくて強烈なパンチが、列車でダージリンヘ行く気持ちをためらわせ、早々とホテルをチェックアウトして空港へ。バグドグラヘのチケットを買い、出発までの数時間を空港で過ごす。

 えらく退屈だ。このチケットは日本でも買えるのだが、一人7000 円のチケット代に3000 円の手数料(一枚毎に)がかかる。退屈は我慢するしかない。

 空港内にあるカウンターでサモサとチャイをためしてみる。サモサは、ゆでたジャガイモにカレ一味をつけたものを春巻の皮みたいので包み、油で揚げたもの。インドのスナックの代表。おいしい。チャイはインド旅行中いちばん多く口にするもので、ミルク・ティのこと。牛乳の中で紅茶の葉を煮出して砂糖をたっぷり入れる。カレーによく合う。子供たちにも好評だ。

 やっと搭乗時間がきた。ところが、またここでトラプル。手荷物の中のチェーン・ロック 2本がまずいということらしい。
「ぶん回せば凶器にもなるチェーン・ロックを、なぜ機内持ち込みにしたのか?おかしいではないか?」どうたらこうたら、しつこい、しつこい。

 「こんなピースフル・ファミリーに何の心配があるもんですか!! ?」マダムしゃしゃり出る。
「しょうがないなぁ。じゃ、ライターよこせ! いや、お茶代 5ルピー(1ルピー= 8円)でもいいょ」

 “こうなると思っていたよ!!”

 どうしてチェーン・ロックを二つも持って行くのかって? それは、カギの無いホテルもあるし、ホテルのカギが信頼に値しないこともあるからですよ。
 それに、鉄道駅で荷物を一時預けるときには絶対必要。旅行カバンなどは鍵がかけられるが、山のザックではどうしようもない。それをこれでもって、いかにも開けられないようにロックするのである。後日、こうしないとカルカッタのハウラー駅では預かってくれなかった。

 インディアン・エアラインの機種はボロくて不潔。テーブルなど拭いたこともないように汚れている。蛇行する大河を眼下に眺めると、やがて緑濃い平野の広がり。椰子の木と水田のまじり合った亜熱帯の田園風景の中に機首は向かって行く。

 バグドグラの空港で“ボロ飛行機をバックに記念写真を"と、カメラを構えたお父さんにすかさず兵士の銃口。“ビックリしたなぁ!!いいじゃないの、家族揃って思い出の一枚を撮ったって。それに、こんな空港の写真、撮られたって何てことないだろうに”

 客引きの男が何人か寄ってきた。 「パスポート・チェックはこっちだ、タクシーはどうだ」と、うるさい。最近、ダージリン入域にはパーミットは必要なくなった。パスポート・チェックのみだ。



 バグドグラ→ダージリンは、リムジンバスだと一人35 ルピーで4時間かかる。白タク(スズキの箱型軽自動車)だと 400 ルピーで2時間半。運ちゃんは気に人ったホテルが見つかるまで行くというので、こちらにする。

 緑美しい村を抜ける。豊かな村のようだ。ところで、この運ちゃんすごーく飛ばす。犬や牛や子供や対向車にヒヤヒヤ続きだ。2時間で2000m 程を上っていく訳で、それも山に入いると道はとても細い。片側はかなり切り立っている。おまけに霧がかかり、姪っ子は“寿命が縮む”と、何回言ったことだろう。

 ふもとからダージリンまで、 トイ・トレインという豆蒸気機関車が走っていて、乗ってみようと思っていた。だが8 時間も、ときには 12 時間もかかるというのであきらめた。

 ダージリンヘの中程のバザールで、初めてこのトイ・トレインのレールを目にしたときには、まさか!信じられない。

 幅1メートル程にレールが敷かれているが、羊はいるわ、サリーは干してあるわ、うんこしている子供はいるわ、でっかい石が落ちてはいるわ......。あとで分かったのだが、下半分は走っているが上半分は土砂崩れで不通になったままだそうだ。

 乗ること2時間半。寿命を縮め続けてダージリンに到着。

ダージリンのパスポートチェック

イギリス風の建物に、庭の手入れが行きとどいた清潔なニュー・エルギン。

ニュー・エルギン正面玄関

 部屋はツィン・ベッドで、子供たちと私、4人寄りそって寝た。子供が落ちないように、ベッドの両サイドにイスでガードを作り、お父さんは床に薄い銀マットを敷いて寝る(今回の旅行では大体がこのパターン)。

 夕食は外に出て、つづら折の坂の途中にあるチベッタンの食堂でトゥクパ、モモ、チョウメン(ラーメン、蒸し餃子、焼きそば、のようなもの)を食べる。しょうゆ味なのだが、姪っ子と上の娘はおいしいとはいわない。下の子が一人よく食べる。

 ダージリンは坂の町だ。 2000m以上あるから涼しい。高いところがイギリス風で、中頃がインド風、下のほうにはチベット人が多いと『地球の歩き方』に書いてある。暑さに弱いイギリス人が開いた避暑地だそうだが....

 このホテルのベッドも机も窓ガラスも、下からもってきたんだろうなぁ。
すごいなぁと、思いをめぐらしているうちに疲れに疲れておやすみなさい。


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