見出し画像

経過的加算

経過的加算は旧法時代の定額部分と新法(昭和61年4月)の老齢基礎年金を理解する所から始まります。現行の厚生年金は被保険者になると同時に国民年金2号被保険者となり年金は1階の「老齢基礎年金」と2階の「老齢厚生年金(報酬比例部分)」となりますが基礎年金制度ができるまでの旧法時代は1階の「定額部分」と2階の「報酬比例部分」に分かれていました。新法になり旧法の定額部分老齢基礎年金に置き換わったことで計算方法が違い額が低くなるため、その差額経過的加算として加算しています。

※経過的加算は報酬比例部分に加算されます

特別支給の老齢厚生年金(60歳台前半の老齢厚生年金)とは、新法施行時に厚生年金保険の受給開始年齢が60歳から65歳に変更された際に生年月日に応じて段階的に引き上げる経過措置のことです。特別支給の老齢厚生年金は報酬比例部分定額部分から成ります。65歳になると本来支給の老齢厚生年金になり、これまで定額部分が支給されていた人は定額部分が老齢基礎年金に置き換わることで低くなった差額が経過的加算として加算されます。なので「経過的」という言葉が使われています。

加算される額は「定額部分の額-老基礎年金相当額」となります。

定額部分の額は

老齢基礎年金相当額は

仮に会社員を40年務めたとしてざっと計算すると
定額部分の額        1,628円☓480=781,440円
老基礎年金相当額  780,900円☓480/480=780,900円
となり若干低くなりますよね。

ここまでみると定額部分が支給されていた人しか経過的加算が支給されないと思われがちですがそうではありません。老齢基礎年金は20歳以上60歳未満の月数だけが計算され最大で480月です。旧法の定額部分20歳未満や60歳以上も含めて最大480月でした。
例えばAさんが22歳で会社員となり62歳まで40年間、厚生年金の被保険者となっていたとします。老齢基礎年金の額の計算は20歳以上60歳未満しか反映されませんのでAさんの老齢基礎年金は456月となります。ただ旧法時代の定額部分20歳未満や60歳以上も反映されていたので480月となっていたはずです。そこで旧法時代だと定額部分で支給されていたはずの60歳~62歳の2年分は差額として加算(経過的加算)されるわけです。ちなみにAさんが65歳まで働いたとしても定額部分の最大は480月が上限とされていましたので経過的加算は62歳までの2年分(24月)しか加算されません。


では過去問です。

問1. 老齢厚生年金の支給繰下げの申出を行った場合でも、経過的加算として老齢厚生年金に加算された部分は、当該老齢厚生年金の支給繰下げの申出に応じた増額の対象とはならない。

過去問 令和4年 厚生年金保険法

問2. 在職中の被保険者が65歳になり老齢基礎年金の受給権が発生した場合において、老齢基礎年金は在職老齢年金の支給停止額を計算する際に支給停止の対象とはならないが、経過的加算額については在職老齢年金の支給停止の対象となる。

過去問 令和4年 厚生年金保険法

問3. 厚生年金保険の被保険者期間の月数にかかわらず、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間は、老齢厚生年金における経過的加算額の計算の基礎とされない。

過去問 令和3年 厚生年金保険法


問1. ✕ 繰下げを行ったときは対象となる額に経過的加算の額を加算した額に増額率を乗じます。そもそも定額部分の差額であり老齢厚生年金の一部と考えれば良いと思います。

問2. ✕ 在職老齢年金の支給停止額を計算する際は老齢基礎年金は対象となりませんので前段部分は正しいです。では経過的加算は支給停止の対象になるのでしょうか?ならないので間違いとなります。経過的加算は報酬比例部分に加算されますが定額部分と老齢基礎年金の差を埋める性質を持つので老齢基礎年金みたいなものです。なので支給停止の対象となりません。

問3. ✕ 経過的加算は、20歳未満と60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間があり、定額部分の被保険者期間の上限480月に達していなければ加算されます。設問は厚生年金保険の被保険者期間の月数にかかわらずと書いていますので間違いです。


私は22歳で就職し会社員です。60歳まで働いたとしても38年間が老齢基礎年金の額の計算になります。60歳を超えて働き続けてたら老齢厚生年金の額は増えますが老齢基礎年金は増えることはありません。しかし62歳まで働くと2年分、経過的加算が報酬比例部分に加算されることになり、実質的には老齢基礎年金の穴埋めになるので頑張ろうと思います(^^)/


記事を読んで頂きありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。