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加給年金

加給年金とは厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある方が、65歳到達時にその方に生計を維持されている配偶者または子がいるときに加算される可能性のある年金のことを言います。例えば年上の夫(妻)が定年退職し収入が年金のみになったとき生計を維持されていた主婦(主夫)の妻(夫)や子がいたら、生活が苦しくなるおそれがあります。そこで「妻(夫)に年金が支給されるまでの間、夫(妻)の年金に加算される」という年金が加給年金です。「扶養手当」みたいな感じですね。年の差夫婦であればあるほど加給年金が支給される期間が長くなります。


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では条文を見てみます。

(老齢厚生年金の加給年金額)
第44条 老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)の額は、受給権者がその権利を取得した当時(その権利を取得した当時、当該老齢厚生年金の額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240未満であつたときは、在職老齢年金又は退職時改定の規定により当該月数が240以上となるに至つた当時。その者によつて生計を維持していたその者の65歳未満の配偶者又は(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子及び20歳未満で障害等級1級もしくは2級に該当するする障害の状態にある子に限る。)があるときは、加給年金額を加算した額とする。ただし、国民年金法の障害基礎年金の規定により加算が行われている子があるとき(当該子について加算する額に相当する部分の全額につき支給を停止されているときを除く。)は、その間、当該子について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

厚生年金保険法 法44条1項

加給年金額は、224,700円×改定率×(配偶者・1子・2子の数)
3子以降は74,900円×改定率となっています。

先に老齢厚生年金を受給するほうの要件

・厚生年金保険の被保険者期間が240月以上(20年以上)ある。
・権利取得時に、生計を維持している配偶者又は子がいる。
・該当する配偶者又は子どもの年収が850万円未満(所得655.5万円未満)

配偶者又は子の要件
・配偶者は65歳未満(大正15年4月1日以前生まれは年齢制限無し)
18歳に達する以後の最初の3月31日までの間の子
20歳未満障害等級1級、2級に該当する障害の状態にある子
  ※子は婚姻していない事が条件

良く試験に問われる支給停止になるパターンを見ていきます。


✅支給停止

(支給停止)
法46条 6項 第44条第1項の規定によりその額が加算された老齢厚生年金については、同項の規定によりその者について加算が行われている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240以上であるものに限る。)、障害厚生年金、国民年金法による障害基礎年金その他の年金たる給付のうち、老齢若しくは退職又は障害を支給事由とする給付であつて政令で定めるものの支給を受けることができるときは、その間、同項の規定により当該配偶者について加算する額に相当する部分の支給を停止する。

厚生年金保険法 法46条6項

・対象となる配偶者が240月以上老齢厚生年金の支給を受けることができるとき(中高齢者の特例による場合は、240に満たないときは240とみなす)
障害厚生年金障害基礎年金の支給を受けることができるとき

老齢基礎年金は条文に入っていません。つまり配偶者が繰上げ支給の老齢基礎年金の支給を受けても支給停止にならないということです。
なお「障害手当金」は受給しても支給停止されません。

では過去問です。

問1.加給年金額が加算されている老齢厚生年金の受給者である夫について、その加算の対象となっている妻である配偶者が、老齢厚生年金の計算の基礎となる被保険者期間が240月以上となり、退職し再就職はせずに、老齢厚生年金の支給を受けることができるようになった場合、老齢厚生年金の受給者である夫に加算されていた加給年金額は支給停止となる。

過去問 令和4年 厚生年金保険法

問2. 老齢厚生年金と障害基礎年金を併給する者に老齢厚生年金の加給年金額の対象となる子がある場合に、その者に障害基礎年金の子の加算を行うときは、当該加算額に相当する部分について加給年金額の額を減額して支給停止する。

過去問 平成18年 厚生年金保険法

問3. 加給年金額が加算されている老齢厚生年金について、その対象となる妻が繰上げ支給の老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けることができるときは、いずれの場合も、その間、妻について加算される額に相当する部分の支給は停止となる。

過去問 平成19年 厚生年金保険法

解答
問1. 〇 対象となる配偶者が240月以上老齢厚生年金の支給を受けることができるときは老齢厚生年金の受給者に加算されていた加給年金額は支給停止されます。

問2. ✕ 減額して支給停止するでは無く支給停止です。問題を早く読み飛ばすと引っかかります。65歳以上であれば老齢厚生年金と障害基礎年金は併給できます。障害基礎年金にも子の加算がありますが老齢厚生年金の加給年金と両方は支給されません。どちらが支給停止になるのかというと老齢厚生年金の加給年金の方が支給停止となります。老齢の年金は課税されますが障害の年金は課税されませんので有利になります。

問3. ✕ 障害基礎年金の支給を受けることができるときは支給停止となりますが繰上げ支給の老齢基礎年金については支給停止になりません。なお対象となる妻が老齢厚生年金を持っていた場合は同時に繰上げしなければなりませんが、この場合240月以上の被保険者期間を持っていた場合は支給停止となります。


✅2022年4月 法改正

在職老齢年金の仕組みによって対象となっている配偶者自身の老齢厚生年金(240月以上の被保険者期間を有する)が全額支給停止となった場合は加給年金の支給対象となっていました。しかし減額でわずかでも支給された場合は加給年金は支給されず全額支給停止された場合と不合理が生じていました。そこで、
在職老齢年金の仕組みによって全額支給停止となっている場合でも、老齢厚生年金を受給できる者として、加給年金は支給停止と改正されました。


✅2以上の種別の被保険者期間

加給年金額が加算される老齢厚生年金は、被保険者期間が240月以上あることがでした。例えば会社員15年、公務員5年勤務した方はどうなるでしょうか?このように2以上の種別の被保険者であった期間を有する者の期間は、ひとつの期間に係る被保険者期間のみを有するものとみなし合算します。

問4. 第1号厚生年金被保険者期間を170か月、第2号厚生年金被保険者期間を130か月有する昭和25年10月2日生まれの男性が、老齢厚生年金の受給権を65歳となった平成27年10月1日に取得した。この場合、一定の要件を満たす配偶者がいれば、第1号厚生年金被保険者期間に基づく老齢厚生年金に加給年金額が加算される。なお、この者は、障害等級3級以上の障害の状態になく、上記以外の被保険者期間を有しないものとする。

過去問 平成28年 厚生年金保険法

解答
問4. 〇 240月以上を判定する場合、2以上の種別の被保険者であった期間は合算しますので170か月と130か月を合算すると300月となり加給年金額が加算されます。なお2以上の種別の被保険者期間を有するものは被保険者期間に基づく老齢厚生年金が別々に支給されます。加給年金はどちらの老齢厚生年金に加算されるのでしょうか?受給権を同じ日に取得したら被保険者期間が長い方に加算されます。2つの老齢厚生年金の受給権が別々に発生したら早く取得した種別の老齢厚生年金に加算されます。 


✅特別加算

配偶者加給年金額には受給権者の生年月日に応じて特別加算額が加算されます。
受給権者の生年月日なので注意して下さい。

昭和18年4月2日以後に生まれた方は一定額となり最大となります。つまり受給権者の生年月日が遅い方が高額です。

問5. 昭和9年4月2日以降に生まれた老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者の加給年金額に加算される特別加算の額は、昭和16年4月2日生まれの受給権者よりも昭和18年4月2日生まれの受給権者の方が高額になる。

過去問 平成25年 厚生年金保険法

問6. 昭和9年4月2日以後に生まれた障害等級1級又は2級に該当する障害厚生年金の受給権者に支給される配偶者に係る加給年金額については、受給権者の生年月日に応じた特別加算が行われる。

過去問 令和4年 厚生年金保険法

解答
問5.〇 特別加算額は受給権者の生年月日が遅いほう(年齢が若い)が高額です。

問6.✕ 特別加算は老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者加給年金(昭和9年4月2日以後に生まれたもの)について行われる。障害厚生年金の受給権者に支給される配偶者に係る加給年金額には特別加算は行われません。


老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者加給年金は、当該配偶者が65歳に達したら加算されなくなります。そして国民年金法における振替加算の要件に該当すると自身の老齢基礎年金振替加算と形をかえて支給されます。
振替加算が行われる要件は大正15年4月2日以後昭和41年4月1日以前生まれの人で生計維持関係がある者です。生年月日で額が違います。昭和41年4月2日以後生まれの人には振替加算はされません。なお大正15年4月1日以前生まれの人には65歳を超えても加給年金が付きっぱなしとなります。


記事を読んで頂きありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。