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日々よしなしごと~大雪に起きたこと~

当地では、先日35年ぶりの大雪となった。もともと日本海側のこの地は豪雪地帯ではあるが、気候変動のせいかここ何十年もこんな雪は降ったことがなかった。降り始めた日の午前中は青空も見える気持ちのよい日だったのに、午後からは大荒れになるという天気予報を誰もが疑っていたと思う。しかし、予報通り昼過ぎからは風と雪が激しく降るまさに大荒れの天気になったのだ。

それからは雪地獄のような様相だった。道路の除雪ができないままに、あっという間に30cm降った道を一刻も早く家へと帰りたい人たちの車の列が、どの幹線道路にも延々と続き全く動かない状況が翌朝まで続いた。高速道路での立ち往生はニュースで報道された通りだ。

翌朝の家の周りは1m以上の積雪で、何もかもがすっぽりと雪に覆われた世界で、まだ激しく降り続いていた。北陸の人たちは、そんな中でもとにかく家の前の道を開け、少なくとも人が通れるように雪かきをする。しかし、この雪は開けたと思ったらまた降り積もるという、断続的に降り続く雪にほとほと疲れたと思う。さらに、除雪されていない道を無謀にも車で突破しようとする車は、必ず途中で雪には阻まれスタックしてしまう。そのために道路は常に車の大渋滞が続いた。

我が家の車も、夫の甘い判断のおかげで、除雪していない家からすぐの道を通り抜けようとしてとして、とうとう動かなくなったから来てくれと、私に助けを求めに来た。着替えてスコップを持って現場に急行。昨日近所のお兄さんの車など2台を救い出したのでなんとなるだろうと思っていたが、びくともしない。通りかかった女性や近所のおじいちゃんなどがスコップ持ってレスキューに来てくれるがなかなか脱出できない・・・・

このスタックから脱出するのに結局約6時間、ヘルプしてくれた人延べ17名。途中諦めてJAFが来てくれるまで放置しよう・・と半分あきらめてとぼとぼと帰宅したのだったが、ご近所の皆さんの力を合わせたパワーで、何とか脱出することができたのだ。夫は、集まった人を見たら涙が出たと言っていたが、大げさでもなく本当にそれほどの徒労感と申し訳なさでいっぱいだった。

助けてくれたのは本当にすぐご近所の方たち。これまでは挨拶程度の方たちばかりで、中には会うタイミングがなかった私は挨拶すらしたことがない人もいた。ところが、夫は町内のいろんな世話係でご近所の方たちとは顔なじみで、どの人もちゃんと知っていた。最終的に一番力を発揮してくれた方が、日頃から夫に世話になっているから何とかする!と言ってくれたのだった。本当にありがたいことだった。

我が家の町内の道は本来なら融雪装置があって、雪が降っても水が出て積もることがなかったのだが、その融雪装置のポンプが3年前に故障し動かなくなっていた。その代替えの工事には高額の費用が掛かることから、方針を決められないままにいたのだ。昨年の冬は無雪の冬だったので問題はなかったが、今年はそのしわ寄せが一気に来てしまったのだった。


その後、雪がやんで青空の見える日があり、気が付くと近所の人たちが出て来て、雪に埋もれた車の掘り出しやら、ひとり暮らしのおばあちゃんの家の玄関前の雪かきをして道を作ったり、夫が冬前に市から借りた小型の除雪機で交代で除雪したり始めていた。その中には、我が家の前にあるアパートに住んでいるお兄さんも混じっていた。

降り始めた日の夜、夫は仕事に出かけていて、せめて玄関前を少しでも開けておこうと夜の9時頃にせっせと雪かきをしていたら、そのお兄さんがアパートの駐車場に車を入れようとして四苦八苦していた。そこで私もヘルプにに行って二人で押したり引いたり、雪を取り除いたりと雪降る中を何とか入れることができたのだ。そんなことでこのS君も近所の雪かきを一緒に手伝ってくれていた。S君は10年そのアパートに住んでいたが、話しをしたのはこれが初めてだった。

1月の3連休は、まさに県内全域が雪との闘いで、私も店は臨時休業。買い物なども歩いて行くしかないが、幸いにも正月用含め食料の備蓄はあるので食べるに困ることはなくしばらくは買い物の必要はなかった。むしろオーバーストックだったと気づかされて備蓄しすぎたものを整理する良い機会になった。

雪も落ち着いて、連休中3日間運休だった路面電車もようやく動き出した。私のこれまでの経験からいうと、路面電車はとても雪に強く、ほぼ止まることがなく、少なくとも3日間動かないなどということはなかった。雪が多すぎて除雪が追いつかなかったというのもあるが、この何十年雪のない冬が続き、除雪を請け負う業者も多く廃業していたと後から聞いた。

路面電車も動き始めたので、まちの様子も見たいし買い物もしたいので、何日かぶりで路面電車に乗って出かけた。確かに除雪はされているが、なぜか軌道上だけで車道は除雪した雪が堆積して車道がない。つまり軌道を車と電車が譲り合い❓ながら走っている!電車道路は電車が優先。できれば車は電車道路を避けて別の道路を走るようにできないものか、と思った。

一般道路も、除雪が進んではいるが、2車線道路が脇に雪が堆積しているので1車線になることで相変わらず渋滞も続いている。この渋滞のために救急車両が現場にたどり着けないという問題もあったようだ。車での出勤は渋滞で何時間かかるか分からないと、徒歩や遠回りでも公共交通を使う人もいた。災害と同じなので、こういう時の車以外の移動の選択肢をいろいろ考えて実際に経験しておいた方がいい。これで、車社会を見直すきっかけになればいいなと思った。

ひとり暮らしのおばあちゃんは、玄関の前には雪がこんもりと積もっていて不在かと思っていたが、夫が雪を乗り越えて訪ねると雪の間怖くてじっと家に籠っていたそうだ。近所の人たちが玄関前を開けてあげると、みんなに助けてもらったと涙ぐんでいた。

融雪装置が故障して近所同志で力を合わせて除雪したのは、互いに近所の人たちと知り合うきっかけになったし、何かの時にはきっと助けあえると思った。この厄介極まりない大雪も、あながち悪いことばかりじゃないと思いなおすこともできた・・・・

その後雪はおさまり、かなりまちなかの除雪も進みほぼ日常に戻った。店も再開して毎月の講座もできるようになった。そこでも大雪の時の苦労話に花が咲いた。借りた駐車場から車を出そうとしたが、なかなか出すことができずにいると、そばで同じように除雪していた男性が汗だくになって助けてくれたとという話も聞いた。私も近所同士の助け合いのことを話したら、ある方は、自分の町内では融雪がされているので、そういう助け合いなんて全くなかったと残念そうに言われた。別のある日、我が家にお客様が来ての話の中で、通勤道路は融雪ついてるのでいつもより時間はかかったが問題なく出勤できた。電車道路も電車と車と共用で走っていたが、車が圧倒的に多いし車社会なのだから電車などは走らせなければいいんだ、という。


なるほど、人は自分が生きている世界でしか社会を見ることはできないのかもしれない。その世界がもっと広ければ、もう少し見方は変わるかもしれない。そんな自分だってどれほど広い世界を見て、その中でどれほどの社会性や役割を担っていく覚悟があるのかと言われば心もとない。それに、何が正しくて正しくないのかも分からない。いろんな考え方はあるんだな。ただ、少なくとも自分以外の立場や考え方や価値観などへの想像力だけはなくしたくないと思う。

分断の芽は、ひょっとしたらこんなことから始まるのかもしれない…などとチラッと思ったが、まずはこの助け助けられた経験を大事することかな。

なので、もう大雪はいいのでせめて中雪くらいにして欲しい・・・



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