【有料記事】降誕祭を終えて【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】

 あれは、私が「神父」だった頃。
 クリスマスミサの終わりがけに、突如、嵐は訪れた。

「あ、あの……好きです!」

 そのような言葉を伴い、現れたのは年若い女性だった。

「はい?」

 首を傾げる私に、少女とも呼べる年代の女性は続ける。

「あ、あの、最初は冷たくて近寄り難い方なのかな~って思ってたんですが、今日、子どもたちに向ける笑顔を見て、なんて優しくて素敵な方なんだろうと……!」

 顔を赤くし、つらつらと女性は私への愛を語る。……ここまで堂々とした告白は珍しいが、珍しいからこそ、どうすればいいのか分からない。
 ああ、周りから向けられる、好奇の視線が痛い。

「私は聖職者ですが……」
「えっ、神父様でも愛人がいる方はおられますよね!?」
「ええー……」

 ……確かに、愛人を侍らせるどころか私自身を愛人に誘って来るような不届き者がいるのは事実だ。残念ながらそれが事実であることに、今は非常に遺憾な心持ちを抱くしかない。

「あたしじゃダメですか……?」
「いえ、誰だから良いとか悪いとかそういうことではなく……」

 女性はみるみるうちに瞳に涙をいっぱいに溜め、こちらを見つめてくる。非常に気まずい。居心地が悪いにも程がある。
 いったい、私にどうしろと言うのだ……?

「あの、困ります……」

 私がそう呟くと、周りの修道女から「コンラート神父様、可愛い~」「やっぱりモテますよねぇ~」「よっ、色男!」「乙女の恋路って応援したくなりますね!」などと黄色い声が上がる。そちらを応援してどうするのだ。

「失礼」

 ……と、そんな修道女たちをかき分け、年配の修道女が姿を現した。

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