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AD&D 2nd でキャラクターを強くする方法

はじめのはじめに

本稿の初出はサークル会誌「求ム冒険者!vol.11」(1998)である。
当時大学生であった筆者が、初心者(下級生)向けにAD&D2版のルールブック・サプリメントをどのように読めば良いかを解説する趣旨で執筆した記事である。
サークルで記事を集めて出版した同人誌という位置付けとご理解頂きたい。
サークル内のセッションにおいてシビアな戦闘を中心とするスタイルを反映して、シーフやレンジャーの扱いが雑になっている。
読み返せば恥ずかしい記述も多々あるが、AD&Dを始めて3年の20歳前後の学生が当時どのように考えていたかという資料として公開することとした。

序章

このサークルでAD&Dに参加したことのある初心者プレイヤーの多くは次のように感じなかっただろうか?
「あの先輩のキャラはどうしてあんなにTHAC0がいいんだろう?」
「あの先輩のキャラはどうして呪文を唱えるたびにダイスを振ってるんだろう?」
「あの先輩のキャラの使った技はPHBのどこにのってるんだろう?」

それは当然である。使っているルールの量が違うのだから。
連中はサプリメントをガリガリ読んでキャラを作っているので、おのずと力の差ができてしまうのだ。

ここで私が危惧しているのは、
「AD&Dは膨大な量のルールを読まなくてはゲームができない」
という認識ができてしまうことである。
PHBだけでもゲームはできる。
これは正しい。
でも、サプリメントを使えばさらに楽しくプレイできる。

今回は、自分のキャラクターをより強くするための、またより強いキャラを作るためのサプリメントの読み方を紹介しようと思う。
本一冊でも読むべきページはほんの1ページ半くらいなもんである。
英語の文章なんて、と思う方もいるだろうが、AD&Dの英語は中学校2年生レベルだから安心して、少しの根性とゲームにかける情熱で乗り切って欲しい。
こうやってサプリメントを読むことで参加意識を強く持って積極的にプレイに参加してもらえればDMとしてこんなにうれしいことはない。

第一章 Complete HandBookシリーズを読む

部室の棚に置いてある小豆色の表紙をしたサプリメントである。
全てのクラス、種族について存在しているので自分が前にやったキャラのものや興味のひかれたものを手にとってみるとよいだろう。
でも、いきなり最初から辞書片手にガリガリ読む必要はない。
読むべきポイントは絞られているのでそこだけ読めばいい。
もっと具体的に言うと「数字が絡んでくるところだけを読めばいい」のだ。

まずは第一章のキャラクタークリエイション。
ここはPHBからこのキャラに必要なデータだけを集めた部分である。
基本的なキャラメイクはここだけでできるので、PHBをいったりきたりしなくてよいので便利である。
次からしばらくの間は特殊能力の具体的な説明や、そのクラスの設定を思いっきりページを割いてくわしく解説してある。
ここにのってることは要約すればPHBに載ってることなのでとばしてかまわない。
種族のハンドブックの場合は、能力値修正が部族によってことなるので注意しよう。同じエルフでも、森にすむエルフと海にすむエルフとでは全く能力も修正も違ってくる。自分のキャラにあった種族と部族を選べばよいだろう。

そして、一番重要な部分である「キット」の説明にはいる。
AD&Dでは同じクラスでもかなり細分化されており、パラディン(聖騎士)を例にとってもアンデッド退治を専門にする奴もいれば、異端審問官として神に逆らう化け物や異教徒をしばいてまわる奴もいるし、宿敵のドラゴンを追い求める奴もいる。
ゲーム説明的に言えば、このキットを取ることによって「新しい能力」を得ることができるのだ。
もちろん、「新しい欠点」も抱え込むことになるのだが、往々にして赤字となることはなく、全員が新しい能力を使ってキャラを強くしている。
では、具体的に読む順序を解説しよう。

1 Special Benefit (特殊な利点)

まずここを読む!
ここが全てだ!(断言)
ここだけ読めばあとはいらん!(暴言)

最後のは冗談にしても、ここが重要なのは間違いない。
Descriptionから読めという人もいるだろうが、人間きれいごとでは強くなれん。
キットの名前でだいたいの雰囲気は掴めるのだから、まずはここを読んでメリットがあるかどうか確認すべきだ。
同時にSpecial Hindrance(特殊な欠点)も目を通しとくと良いだろう。
状況によっては赤字をだすこともあるし、だいたい他のキャラと問答無用で殴り合うことはさけねばならん。
注意すべきはやはり、自分のキャラの見せ場で役に立つかであろう。
ファイターなら戦闘中にボーナスがもらえるものが有利だし、シーフなら自分の好きなシーフスキルが上がるのをえらぶべきである。
具体的に効果が数字で現れるものがまちがいがない。
まず、この項では数字を探してその前後から読み始めるのが現実的だろう。
ここでよくがっかりするのがReaction Checkである。
こんなもんにボーナスなりペナルティがついてもどうってことはない。
ロールプレイや状況で相手の反応は変わるわけだし、だいたいReaction Checkは頻繁に行われるものではない。
Special Hindranceにあっても気にしなくて良いし、Special Benefitにあっても喜べるものではない。
ダメージ、THAC0、ST、AC、習得率、シーフスキルにボーナスがあるものだけをさがすべし!

2 Requirement(必要条件)

そのキットをとるために必要な能力値やアライメントの条件である。
有利なキットほど制限が厳しい。ま、しかたないですな。

3 その他

えらくおざなりにされてる気がするだろうがこんなもんである。
せめてRole PlayやDescriptionをちゃんと読んでとんちんかんな行動をとらないようにしよう。
さすがに異端審問官が悪魔と取引しようとしたらDMだって怒るだろうしな。

キットを選んだ段階でこのサプリメントの役割の90%は終わったものと考えてよい。
あと大事なのが技能である。このサプリメントにはそのクラスが使える技能が全て載ってるので便利である。
また、追加の新技能も載っている場合があるのでこちらもチェックしておこう。
追加された技能は役に立つことが多い。
追加の装備や魔法リストも見逃せない。
とんでもなく強い武器やアイテム、魔法がしれっと載っているので注意しておこう。
この辺は一覧表も充実しているのであまり苦労はしないはずだ。

以上が小豆色の本の読み方であるが、わかっただろうか?

第二章 クラス別強化法

その1 ファイターを強くする

次にクラス別にみていこう。
まずはファイターからである。こいつらを強くするにはコンプリートファイターズハンドブックを読むだけでいい。
キットを取るのは当然としてもう一つ大事なことがある。
これは他のクラスにも言えることなのだが、戦闘スタイルをとることである。
詳しい説明は今回は省かせてもらうが、これを取れば戦闘で有利になることは間違いない。
ファイターの見せ場の戦闘で役に立つのだから必ず取っておこう。
それ以外のサプリメントはあまり読む必要はない。
キットとスタイルを選び終わったら、あとはDMと交渉して少しでも強いマジックアイテムをもらっておこう。

その2 パラディンを強くする

無理だ。あきらめろ。考え直せ。
と、突き放すわけにもいかんな。こいつらもキットしだいでは役に立つはずだ。
特殊能力をよく読んで慎重にキットを選ぶことだ。

バースライトという世界でやるならまだ希望の光がある。
ここにはアライメントがカオティックグッドでファイターと同じ戦闘力をもつパラディンが存在する。
こいつを選べば破壊力は格段に上昇する。
最近はこいつらばかり見かける気がするが。
DMに泣きついてホーリーソードを手にいれるという手段もあるが、あまり現実的ではない。残念ながら。

その3 レンジャーを強くする

無理だ。あきらめろ。考え直せ。
と、突き放すわけにもいかんな。こいつらもキットしだいでは役に立つはずだ。
特殊能力をよく読んで慎重にキットを選ぶことだ。(同じこといっとるな)これ以外手が思いつかん。
レンジャーはサバイバルをメインにしているので、瞬間破壊力は求めてはいけない。
DMに泣きついて屋外で野営してまわるシチュエーションばかりを用意してもらうという手段もあるが、あまり現実的ではない。残念ながら。

その4 シーフを強くする

無理だ。あきらめろ。考え直せ。
と、突き放すわけにもいかんが、しかたない。
低レベルダンジョンシナリオでは役に立つ彼らも、レベルが高くなってくると魔法の前に沈黙してしまう。
今まで何度もシーフを強くする議論が重ねられてきたが未だ結論は得られていない。
DMに泣きついてファイターもメイジもプリーストもいない世界で、シーフだけのキャンペーンをやってもらうという手段もあるが、あまり現実的ではない。残念ながら。

その5 バードを強くする

バードハンドブックを読んでキットをとる。こいつらは元々強いし役に立つ。
情報集めが大事な状況で力を発揮するし、いざ戦闘となってもメイジスペルで援護もできるし、キットによっては白兵戦もできる。
万能キャラが好きならおすすめである。

その6 メイジを強くする

このキャラはどんなキットをとっても大差ない。
スペシャリストといって自分の得意分野の呪文についてボーナスがもらえるメイジがいるが、不得意な呪文は全く唱えられないので良し悪しである。
状況しだいではこれを選択してもよいだろう。
メイジ強化でもっとも大事なのは呪文書である。
ひたすらに強い呪文を集めることがメイジの強化につながるのだ。
この呪文を集める作業には、本四冊を屁とも思わずにガリガリ検索する根性と熱意が必要となるため、かなり上級者向けである。
ただし、こうして強い呪文でフル武装したメイジは世界最強なので、見かけたら決して逆らわないように。
まず勝てない。残念ながら。

その7 プリーストを強くする

こいつもキットは何を選んでも大差ない。大事なのは強い神様を選ぶことである。
神様の力とそれに仕えるプリーストの力とは比例関係にあるのだから。
神様をあつめた本(Legend&Loreや Faith&Avatarなど)の読み方もキットの説明の読み方と全く同じである。
まず特殊能力をよむ。次に必要条件を読んで大丈夫かどうか確認する。
そして使えるスフィアーを確かめる。(スフィアーとはプリースト魔法の系統のことである。)
最後にその神様の教義を斜め読みしておこう。せめて何の神様か言えるようにしておくべし。

プレイヤー「おれさぁ、イシスのプリーストやろうと思うんだよ」
DM「特殊能力は?」
プレイヤー「それがさぁ、強いんだよ。(かくかくしかじか)」
DM「スフィアーはいいのか?」
プレイヤー「問題ないって。(かくかくしかじか)」
DM「で、どんなことをイシスは説いてるんだ?」
プレイヤー「・・・・・」
DM「そもそもイシスって何の神様なんだよ?」
プレイヤー「・・・・・」
DM[・・お前さんねぇ・・」
こういう罰当たり坊主が最近急増しているので注意しましょう。

その8 ドルイドを強くする

ドルイドハンドブックを読んでキットをとる。こいつらは元々強いし役に立つ。
サバイバルという状況で力を発揮するし、いざ戦闘になってもプリーストスペルで援護もできるし、緊急脱出能力も持っている。
極めると老衰で死なないし、異次元に平気でいくようになるしどんどん人間から離れていくのがおもしろいかな。

第三章 世界別強化法

その1 バースライト

この世界でキャラメイクをすればスペック的には最強になる。
能力値修正が有利に働くうえに、ブラッドパワーという特殊能力がただでもらえる。
おもわず最強になった気がするが、相手も同じように強くなっているので、単にパワーレベルが振り切れただけという説もある。
「ごったにキャンペーン」ではここの出身にしておくのがよいかも。

その2 ダークサン

この世界では能力値を4d4+4で決定する。破壊と暴力に満ちた北斗の拳の世界なので、戦闘系のパワーレベルには定評がある。
ただ、魅力的ながらも他のキャンペーンワールドとはかなり設定が異なるので、読まなければならないページがかなり多い。
やりたいときには上級生に声をかけてからにしよう。
なお、ここの世界のサイオニックは世界最悪最強最凶鬼畜外道混沌人間の屑なくらいひどい。
こんな奴の存在を認めてしまうと一瞬でシナリオが崩壊してしまうのだ。
「The Will and the Wayはどこ?」とか「アサスサイやりたいです~」とか言ってる奴等は反逆者なので即刻処刑の対象となります。注意しましょう。いいですか市民?

その3 ドラゴンランス

ソラムニア騎士が強い。トゥルードラゴンランスが強い。有名人が持ってたマジックアイテムが強い。
なんにもましてミノタウロスが強い。古い設定なだけあって今みると非常におとなしいパワーレベルではあるが。

その4 ミスタラ

グラントリの一言につきる。世界最強の魔法都市グラントリ。
そのあまりの外道さにD&D時代には日本語版の出版が見送られたほどである。
それぐらい魔法とそれに類する特殊能力が強いのでメイジにとってはパラダイスな街なのだ。
「ごったにキャンペーン」の場合はメイジはここに留学するのが常識となっている。

その5 フォーゴトンレルム

小豆表紙にまぎれてこの世界の地域ごとの「キットもどき」を集めた本があるので、それを読めばいい。
この世界では地方ごとにキットのように特殊な能力や欠点をもった人々を紹介している。
この本のひどいところは「これらは地方の特徴であり、キットではありません」と書いていることであろう。
地方を選べばかなり有利なキャラを作れるので目を皿にして探そう。
また、ここにはプリーストプレイヤーの聖書「ファイスアンドアバター」「パワーズアンドパンテオン」がある。
少しでも強い神様を探しておこう。
他にも「セヴンシスターズ」「エルブズオブエバーミート」「カルトオブドラゴン」と鬼畜なサプリメントには事欠かない。
上級者に話を聞いてみるとよいだろう。

第四章 プライドを捨ててみよう

その1 とりあえず化け物になってみよう

ヒューマノイドハンドブックを熟読してみよう。とりあえず人間の枠を超えた破壊力を手にすることができる。
また、ピクシーなどのようにプレイの幅を広げるキャラもいるので読んでいてあきがこない。
ただ、こいつらの欠点としてレベルリミットがきついということが挙げられる。
経験値にペナルティを受ける場合もあるので注意しよう。

その2 とりあえずサイバー手術をうけてみよう

スペルジャマーの世界にはサイバー手術を施す種族がいる。
この手術を受けると能力値が上がったり、腕が一本増えたりするのだ。
欠点としてはカリスマが下がることだが、そんなこと気にするような奴はおらん。なんら問題ない。

その3 とりあえずオリエンタルにいってみよう

東洋の神秘「カタナ」を手に入れるべし。ロングソードよりも速くて強いという外道武器の一つである。
この世界にはニンジャだのケンサイだのソウヘイだのゲイシャだのわけのわからんやつらが掃いて捨てるほど転がっているので、こういうクラスをえらんでDMの目をひきつけておいて、どさくさにまぎれてカタナを密輸するのもうまい手だろう。

その4 とりあえずDMオプションに手をだしてみよう

ネクロマンサー(死霊使い)、クロノマンサー(時魔道士)や、リッチ、ヴァンパイア、デスナイトなどになってしまおう!
もちろん、本来はいけないことなのだがDMとの交渉でものにするのだ!
だが、いままでうまくいったためしがないので、これからチャレンジする人は心してかかるように。

第五章 終わりに

少しでもサプリメントの読み方はわかってもらえただろうか?
AD&Dは好きなルールと好きな世界を組み合わせて好きなようにやりなさい、というRPGである。
他のゲームのようにDMが全てのルールを把握しているわけでもない。
私自身知らないルールはたくさんあるし、セッション中にプレイヤーからルールの説明を受けるのもしばしばである。
「AD&Dとはみんなでルールを持ち寄ってやるRPGである」と言えるのではないだろうか?
私が3年間DMをやってきて得た感想である。
最初はだれでもPHBしか持ってこれない。
でも、だんだんといろんなサプリメントに触れて、さまざまなルールをDMの前に持ってきてもらいたい。
こんなアホな文章ではあるが、これが私の伝えたかったことである。
すこしでも多くのひとがAD&Dに興味をもってもらえればと願っている今日このごろである。

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