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Masque of the Red Death(D&D3.0版)紹介

AD&D2版で1890年代の地球(ゴシックアース)でRavenloftで遊ぶためのキャンペーンセッティングを、D&D3.0版にコンバートした紹介記事。

いつか遊ぼうと思って準備はしていたのだが、新たに発売されるサプリメントの活用などが忙しくて、結局D&D3.0版でプレイすることはなかった。

はじめに

「Masque of the Red Death」とはAD&D2版で発売された「Ravenloft」シリーズのサプリメントの一つで、ゴシックアースと呼ばれる1890年代の地球を舞台にした異色の作品となっています。

AD&D2版時代にプレイした感想は
「拳銃強いぜ!なんとかゴシックアースからフォーゴトンレルムに持って行けないか?!」
「シーフスキルがプロフィシエンシー(技能)にまとめられてる!シーフいなくてすむじゃん!」
「呪文の暴発が怖くて使えねぇ!でも、呪文使えないと話にならねぇ!」

という感じでした。

同人でD&D3.0版Conversionルール(Sammy Grimes氏のMasque of the Red Death Conversion Note)が紹介されていたので「Masque of the Red Death」自体の紹介記事も併せてまとめてみました。

A Guide to Masque of the Red Death

「Masque of the Red Death」とは「Ravenloft」シリーズの一つではありますが、デミプレーンの設定やダークロードの設定もありません。ある意味、他の作品とは一線を画すワールドと言えます。

<ゴシックアースの歴史>
元来、ゴシックアースは魔法に溢れる「楽園」でした。ところがBC2700年、第3エジプト王朝ファラオ2世Djosernに仕えていた神官Imhotepの唱えた呪文が世界を変えてしまいました。彼は、仕える王の死去に伴い王の魂を保護する呪文を唱えました。ところが、その呪文は生ける者の世界と死せる者の世界との境界を曖昧なものにしてしまったのです。その影響を受けて、徐々に自然の摂理が歪んでいってしまいました。
その歪みに着目し、異次元からやってきた邪悪な存在が「Red Death」だったのです。「Red Death」は人間たちを誘惑し、「夜の怪物」を生み出し、世界の魔法を「汚して」しまいました。「Red Death」とは邪悪の意識そのものとされていますが、その正体は未だ解明されていません。しかし、世界中のあらゆる犯罪・陰謀の陰には「Red Death」の存在があるとも言われています。ゴシックアースは「Red Death」の意思に沿う、邪悪の溢れる世界になっていったのです・・・

<ゴシックアースの特徴>
何と言っても舞台が1890年代である、ということです。科学文明は「我々の住む世界」と同じ速度で進化していますので、蒸気機関・拳銃・写真技術等が確立しています。

ルールブック(ボックスセットの1冊)の表紙には「蒸気機関車から身を乗り出して拳銃を構える男 VS 赤マントを翻らせる骸骨顔紳士」が描かれています。

また、呪文が汚されている影響から呪文を唱えるたびにPower判定が必要となります。「Ravenloft」のルールに従って、呪文の効果が変化しているものがあるので注意しましょう。文明の利器「拳銃」はありますが、従来のキャラと比べて戦闘力に劣るのでバランスは取れていると思います。

クラス紹介

種族
基本的にPCは人間で作成してください。ただし、「取替え子(Changeling)」という設定のもと、デミヒューマンを選択しても構いません。

クラス

どのクラスも、鎧と盾のProficiencyは持っていません。19世紀末、板金鎧に頼る者はいないのです。また、武器のProficiencyは各武器ごとに設定します。アデプト、ミスティック、トレードマンはCommon WeaponのProficiencyを1つ取得します。ソルジャーはCommon WeaponのProficiencyを3つ取得しています。

アデプト (Adept)
ゴシックアースでは呪文の存在自体はほとんど知られていません。(だからこそ科学技術が進歩したとも言えますが)その恐るべき古代の神秘を学び、術を操る者が「アデプト」です。大抵はオカルト結社などに属しているようです。データ的にはD&D3版でのウィザードと同じ扱いですが、Intによる追加呪文の習得はありません。また、アイテム作成フィートで製作したアイテムには必ずカース(呪い)効果が付随します。

呪文の習得
呪文の存在自体が巧妙に隠匿されている世界であるため、呪文書はほとんど存在しません。そのため、レベルアップによって無条件に新呪文を習得することはありません。何らかの形でスクロールか呪文書を発見する必要があります。

  1. 呪文の鑑定:呪文書に記述されている呪文のレベル・効果を鑑定します。

  2. 自分の呪文書に書写:SpellCraft(DC:15+スペルレベル)に成功すると書き写すことができます。この作業には書き写す呪文のレベルと同じ日数を要します。この際、FortのST(DC:15+スペルレベル)を行い、失敗するとStrとConのどちらかが1点減少します。

呪文の詠唱

  1. もちろん、前もって唱える呪文を記憶し、準備しておく必要があります。

  2. 唱える際にはSpellCraft(DC:10+スペルレベル×2)に成功する必要があります。失敗すると暴発します。

  3. 詠唱に要する時間が増えています。1action→full-round actionという風に1ランクずつ時間が伸びます。

  4. 呪文の効果が発生すると(スペルレベル)%でパワーチェックを行います。 

ソルジャー (Soldier)
ゴシックアースでは「戦う職業」に就く者が少なくなってます。兵士の訓練を受けた者などが多いでしょう。D&D3版のファイターと同じデータを扱います。

ミスティック (Mystic)
ディヴァインスペルを使いますが、神の加護を受けているわけではありません。アデプトと同様オカルト結社の一員として、アンデッドの研究や呪文の解析を行っています。レベルが上がるに連れて、霊界との接触が大きくなっていき、現世での反応が鈍くなっていってしまいます。そのため、ミスティックはイニシアチブに自分のレベルの値だけペナルティを受けます。データ的にはD&D3版でのクレリックと同じ扱いですが、Wisによる追加呪文の習得はありません。

呪文の習得
レベルアップにより、ディヴァインスペルを習得します。ただし、ドメインスペルは一切習得できません。

呪文の詠唱

  1. もちろん、前もって唱える呪文を記憶し、準備しておく必要があります。

  2. 唱える際にはSpiritCraft(DC:10+スペルレベル×2)に成功する必要があります。失敗すると暴発します。

  3. 詠唱に要する時間が増えています。1action→full-round actionという風に1ランクずつ時間が伸びます。

  4. 呪文の効果が発生すると(スペルレベル)%でパワーチェックを行います。 

トレードマン (Tradesman)
ゴシックアースでは最も多いクラスとなっており、豊富なスキルを背景に様々な職に就くことができます。データ的にはD&D3版でのローグと同じ扱いですが、スニークアタックはできません。(Featsが必要です。)トレードマンは自分の職業に関する技能について、スキルフォーカスのFeatを獲得します。

マルチクラス
スペルキャスターは、マルチクラスを選択して別のクラスのレベルを上げた場合、二度と元のクラスのレベルを上げることはできません。

スキル

PHBに変更が加わった技能

クラフト (Craft)
時計仕掛け細工(Clockwork)、ガンスミス(Gunsmithing)、剥製製作(Taxidermy)が追加されます。

知識 (Knowledge)
ゴシックアースに関する知識技能です。1890年代の世界に併せて内容が変更されています。

職業 (Profession)
ジャーナリスト(Journalism)、写真家(Photography)が追加されます。

スピリットクラフト (SpiritCraft)
ミスティック呪文に関する知識です。

新規技能

爆破技術 (Demokition)
火薬(ダイナマイト、ニトログリセリン、銃火薬)を製作する技術です。
使用能力:Int  全てのクラスでクロスクラススキルとして習得します。未修得での使用はできません。

薬学 (Medicine)
近代医療技術を用いた治療法です。治療(Healing)技能に以下の効果が加わります。
・治療を受けた者は即時に1点のHPを回復する。
・治療を受けている患者は通常の3倍の自然治癒速度でHPが回復する。
使用能力:Wis  トレードマンはクラススキル、それ以外はクロスクラススキルです。未修得での使用はできません。

催眠術 (Mesmerism)
相手に催眠術をかけ、質問をする技能です。深層意識からの情報を得ることができます。術者と対象は静かな場所にいる必要があり、催眠状態に入るのにD4分を要します。DC20のチェックを行い、成功すると質問に答えてもらえます。その後、質問をする度にDCは2ずつ上昇していきます。チェックに失敗するとそこで催眠術が解けます。
使用能力:Cha  アデプトはクラススキル、ミスティックはクロスクラススキルです。未修得での使用はできません。

予言 (Prognostication)
街頭の手相占いとは異なり、本当に魔力を使って未来を見る技能です。ただし、魔力を使用することから「Red Death」の注意を引きつけてしまいます。(要パワーチェック)知りたいことを具体的にする程DCが高くなり、パワーチェックの失敗確率も高くなります。
例:
質問:「今日の俺はラッキーかい?」 DC20 パワーチェック 1%
質問:「あのヴァンパイアに勝てるだろうか?」 DC25 パワーチェック 2%
使用能力:Int  アデプトはクラススキル、ミスティックはクロスクラススキルです。未修得での使用はできません。

サイコメトリー (Psychometry)
物に込められた感情を読み取る技能です。殺人に使われたナイフからは、加害者の怒り・憎しみ、被害者の恐怖・苦しみなどが読み取れます。「1」を振って失敗した者はFortのST(DC25)を行い、失敗すると気絶します。サイコメトリーには1分の時間を要します。
使用能力:Wis  アデプトはクラススキル、ミスティックはクロスクラススキルです。未修得での使用はできません。

第6感 (Sixth Sense)
1ラウンドの集中により、呪文・超常現象・モンスターの存在等を感じることができます。(DC20)これにより、存在は確認できても具体的な情報は得られません。
使用能力:Int  アデプトはクラススキル、ミスティックはクロスクラススキルです。未修得での使用はできません。

フィート

Qabal connection
アデプト専用です。神秘結社の蔵書を利用して呪文について学習することができます。ここを利用する場合、知識関連の判定に+2の修正がつきます。(無料ではありません)

Quick study
ミスティック専用で、内容は↑と同じです。

Pure Spell Casting
邪悪な目的で呪文を詠唱しないかぎり、パワーチェックの確率が半減する。 

Rare Weapon proficiency
Rare Weaponの使い方を身に付けます。

Sneak Attack
Sneak Attackを習得します。1つとる毎に+D6ダメージ。

呪文

呪文の詠唱

1.SpellCraft or SpiritCraft (DC:10+スペルレベル×2)に成功する必要があります。この判定に失敗した場合、呪文の効果・対象が逆転します。敵に唱えた攻撃呪文は味方へかかり、味方にとなえた防御呪文はボーナスではなくペナルティを与えます。

2.呪文の効果が発生すると(スペルレベル)%でパワーチェックを行います。以下の場合はパワーチェックの確率が2倍になります。(重複します)
・邪悪な意図で呪文をかける場合
・イービルの呪文をかける場合
・ネクロマンシーの呪文をかける場合

注)ゴシックアースではあらゆる呪文が「RedDeath」の注意をひきつけてしまう可能性があるので、全ての呪文に対してPower判定が要求されます。従来の判定法より値が高いので注意しましょう。

ゴシックアースにおける呪文形態

  • 「Summon」系の召喚呪文は一切存在しません。ちなみに、異次元からゴシックアースに来ることはできなくはない(ほぼ不可能)ですが、一旦来ると二度と元の世界へは戻れません。

  • 「Tenser's~」など、高名な魔法使いの名を冠した呪文は存在しません。

  • 呪文によりGoodとEvilを判別することはできません。それを調べる呪文は存在しません。

  • テレポート系の呪文により異次元に行くことはできません。

  • アンデッドを攻撃する呪文に対し、全ての場合においてアンデッドはSTをする権利を有します。ST判定を行える呪文に対してはボーナス+2(circumstance)を獲得します。

  • Necromancyの攻撃呪文は全てのダメージダイス毎に+2の修正を得ます。

  • Animate Deadにより自分のレベル×4HDまでのアンデッドを作り出すことができます。

  • Raise Dead又はResurrectionの呪文の詠唱をした際、SpellCraft判定に失敗すると対象はアンデッドとなり蘇ります。

  • Evocationの呪文は全て距離・効果範囲が半分に減少します。

アイテム

「Masque of the Red Death」の世界では、銃器が武器として普及しています。その一方で、近接戦用の武器・板金鎧・盾などはその有用性を失い、飾り物となっていきました。

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判定

「Ravenloft」では、より充実したゴシックホラーを味わうため4つの判定が導入されています。
Fear判定・Horror判定・Madness判定(この3つを便宜上恐怖判定と呼びます)は「恐怖」の演出に最適です。
Power判定は邪悪な力に目覚め、堕落してくPCを演じる手助けとなることでしょう!

Fear判定
PCたちが「敵わない相手(強すぎるモンスター)」に遭遇し、「殺されるかもしれない」と思ったときに行う判定です。
以下の条件を満たす敵と遭遇した場合、Fear判定を行います。

  • パーティのレベルの合計の2倍以上のHDを持つモンスター

  • パーティで一番HPのある者を、クリティカルヒット以外の攻撃1回で倒せるモンスター

  • パーティの誰もがダメージを与える手段をもたないモンスター

1レベル6人のパーティにストーンゴーレム(HD14)を出せば、間違いなく怖がるでしょう。

判定法
WillのST(DC:10+モンスターのHDの1/2+モンスターのCha修正)を行います。

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Horror判定
こちらの恐怖は「ヒトとして見てはならない物を見てしまった」恐怖を指します。一般人や低レベルPCの場合はアンデッドモンスターもホラーチェックの対象となります。

禁断の魔術書、人体改造、死体利用、神を無視した死体蘇生などなど。(クトゥルー神話などが参考になるでしょう)

判定法
WillのST(DC:20+適宜修正分)を行います。

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Horrorからの回復判定
Aversion:2週間に1度Horror判定を行い、成功すると恐怖を克服する。
Nightmare・Revulsion・Obsession・Rage:1ヶ月に1度Horror判定を行い、成功すると恐怖を克服する。
Mental Shock・Fascination:1ヶ月に1度Horror判定(修正-2)を行い、成功すると恐怖を克服する。呪文(Heal・Limited Wish ・Wish)をかけると回復する。

Madness判定
もはや正気を保っていられなくなり、発狂した状態です。かなりRemove from gameだと思いますけど。

「プレイヤーにロールプレイを強いるは困難なので、この表を使ってどのように発狂しているか決めてあげましょう。」・・・と、ルールブックに書いてあります。

化け物(ビホルダーやファンガスなど)と呪文により意思疎通などをしたときは、発狂するか判定が必要になります。

判定法
WillのST(DC:20+適宜修正分)を行います。

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Madnessからの回復判定
・Healをかけると回復する。
・カウンセリングを受けさせる。1週間に1回判定を行う。
PCのIntと同じ回数成功すれば正気を取り戻す。(Int15では最低15週間必要となる)

Power判定
「Ravenloft」の世界では、邪悪な行動をすればするほどPCは怪物と化していきます。怪物となれば強力にはなりますが、人の道を踏み外してしまうのでNPCまっしぐらです。

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Pureとは1度もPower判定を行ったことの無い人。ほとんど存在しません。Cleanとは判定を行ったことはあっても通ったことのない人。たいていのPCはここに属します。Redeemedとは1度は通って汚された力を得たものの、贖罪で元に戻った人です。その後、判定に通れば通るほど以下の能力を獲得していきます。(注)

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贖罪
いったん、闇の力に囚われた人でも救いが無いわけではありません。

懺悔
自分がPower判定に通ってしまった事件をもう一度経験し、今度は判断を誤らずに正しい行いをすれば、穢れた力は取り除かれます。これを判定値と同じ回数(Goodの神の誓いを破った場合は10回)繰り返します。

Atonement
クレリック呪文のAtonement(5レベル)をかけてもらえれば回復します。しかし、このとき自分の信仰・考え方と対立する相手からかけてもらわなくてはなりません!懺悔をするよりも難しいかもしれません。きちんとロールプレイをして説得しましょう。

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