190812 言葉を越えた
言葉にしようと思えば思うほど、あの日のこと、例えば、空気感や五感で感じたもの、気持ち達からはどんどん遠のいてしまう。どうしたものか。
つくづく言葉は難しいと思う。
限りなく似たものを言葉にすることはできるかもしれないけど、完全一致は不可能だ。
Wovon man nicht sprechen kann, darüber muss man schweigen.
「語り得ぬところのものは沈黙せねばならぬ」と述べたヴィトゲンシュタインのコンテクストは不勉強によりまだ理解できていないし、おそらく彼の伝えたかったものとは異なる解釈をしているが、言葉は完全ではない。
経験や五感、その他言語を越えたものを介在して、初めてコミュニケーションが成立する。だから補完材料を駆使しても届けられないなら、無理に語るよりももういっそのこと語らないほうがマシ。相手もわたしも、理解できない悲しさを寂しさを、これ以上知らなくて済む。
そうやって都合よく解釈して諳んじることで、いつも相手を、言葉を、諦めてきた。
でもだからこそ、伝えられる範囲内では、言葉を尽くそうと努力してきたつもりだ。そしてだからこそ、言葉を越えた数少ない瞬間を忘れることができない。
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音楽が大好きだ。通学路で馬鹿みたいに一人で歌っていて幼馴染に心配されていたくらいには大好きだ。
ロックというジャンルを知ったのは高校生のとき。先輩達から教わった、エルレとか超飛行少年、ワンオク、バンプ、RAD、UVER辺りを、無限リピートしていた。
そんな高校時代を過ごした地で、20回目の開催となる音楽フェスに初参戦した。しかも四六時中聴いていたUVERがトリ。うれしくならないわけがない。
フェス自体も初めてだったのだけれど、めちゃくちゃ楽しい。例えば、一般的なライブとは違って会場全員が同じ推しなわけではないから、熱量の個人差が意外と面白い作用を生む。知らないアーティストの合いの手や、サークルというライブ文化を近くにいた人の身振りで偶々知ることとか。
生で聴くUVERは震えた。
彼らの本気を感じ取って。「お前は自分の道から逃げていないか?」と、問われ続けている気がして。そうした歌を会場を埋め尽くす数えきれない人達が真剣に聴いていて。
「君の好きなうた」のイントロが流れた瞬間、泣き崩れそうになった。
あの瞬間、あの場に集まった数万人は、
確かに言葉を越えた。
大事なものを思い出させてくれてありがとう。
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p.s. 週1note として最後の投稿でした。
楽しかった〜!ありがとうございました。
https://note.mu/hiromi_okb/m/m05e60c2489c0