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お寿司に飽きた

 瀬戸内の漁師街で育った私にとって、美味しい魚とくに生魚には思い入れがあった。大阪にでてきてからも周期的にお寿司パックを買っては故郷を思いだしたりした。肉からは得られない感動が魚にはある。

 そんな私のひそかな願いは好きな時に好きなだけお寿司を食べられたらいいのになというものだった。残念ながら大根おろしを白米にかけて日々を凌ぐ私には一週間に一回のお寿司がせいぜいの贅沢だったからだ。
 変化が訪れたのは三十路になると同時だった。バイト先の付き合いで二日
に一回のペースで特上寿司をいただける環境に身をおくことになった。嬉しく思い、1日に五人前を食べたりして胃を日本海にしたこともあった。そんな生活も一ヶ月もすると限界を迎えた。お寿司だけは毎日食べても良いと思っていたが早々にギブアップした。たくさんの寿司をみると辟易とさえした。捨てるのは忍びないとお裾分け先を探した。そんなに仲良くもないバーのマスターにお酒一杯の注文と引き換えに押しわたしたりもした。

 人間これはうまい。毎日でも食べたいなんていうが、ある程度のローテーションをくまないといけないようにできているようだ。栄養学の観点からもその時に食べたいものを食べなさいなんて話をきいたことがある。過ぎたるはおよばざるがごとし。二十代も終焉を迎え、よくばりすぎず人と分かち合うことを学び始めた今日この頃。数年ぶりにnoteに記事をなげてみる。また会えましたらよろしく。


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