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野良ニャンコと、対峙した思い出。

 もう十年以上も昔。まだニャンコを飼っていない頃。

 スーパーで、夕食の半額惣菜を購入して店を出る。

 すると、なぜか僕のバイクのシートの上に、見知らぬニャンコが座り込んでいた。

 首輪も付いてないし、近くに飼い主の気配もない。おそらくはほ野良ニャンコだろう。

 ・・・にしても、このニャンコ。僕が目の前まで近づいても全く逃げる様子がない。

 ベテランの野良ニャンコなのだろうか。随分と人に慣れている。ゴハンを貰えそうな、スーパーの出入り口を根城にしているのだろうか? 

 さて、辺な状況だけど、僕は家に帰って一刻も早く夕食を食べたいとゆー目的があります。

 その為には、野良ニャンコ殿にシートから降りてもらわなければ。とりあえず、誠実にお願いしてみることにした。


 ニャンコさん、ニャンコさん。シートから、どいてもらえませんか?


 野良ニャンコ、無視。


 お腹がすいたので、早く家に帰りたいんですけど・・・


 無視


 (いらっ)あのー、こちらは実力行使も辞さない構えなんですけど?


 無視

 

 ・・・無視ですかそうですか。

 

 宣言通り、実力行使行に・・・・と、いきたいところですが、大好きなニャンコ一族相手に、実力行使などできる訳がない。

 今現在の僕なら、抱き上げてどかせば良いだけで。ですが、当時まだにゃんこを飼ってっなかった僕は、慣れないニャンコにどう対応するのが正解なのか判別がつかず、ただオロオロしていました。

 普通の野良ならすぐに逃げてゆくだろうこの状況。なのに、この野良ニャンコ、目の前まで来ても全然動く気配がない。

 この子の要求は、・・・アレだろうか。

 仕方がない。

 ・・・・・・・・・いいだろう。僕の負けだ。

 項垂れた僕は、猫をそのままに、スーパーへ入る。5分後に帰って来たときには、手には惣菜パンが一つ。

 お前の要求は、ズバリ、ゴハンだろう!

 ・・・・・・。

 再びニャンコと対峙する。彼奴の目はパンに釘付け。

 ほら、お前さんの目当てはこれだろう? これをあげるから・・・

 ダッ!

(あっという間に、シートから降りるニャンコ)

 おり・・て・・・。

(決め台詞をスルーされ、なんとも言えない気分)

 にゃー(早くしろ! という抗議)

 ・・・・・・・・・・・どうぞ。 

 野良ニャンコの近くにパンを置くと、すぐさまバクバクとパンを食べ始める。

 なんだか、ものすごく負けた気分です。

 でもまあ過程はどうあれバイクがフリーになった。またゴハンを、要求されたらたまらない。

 すかさずバイクにまたがり、静かにバイクを起動。

 ・・・この借りはいつか返してやるからな〜。 覚えてろよ〜!!

 小さな声でそうつぶやくと、ゆっくりとその場を離れるのでした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ニャンコを、おニューのブラシで撫でていると、そんな昔のことを思い出しました。

 あれから、何度も同じスーパーに行きましたが、野良ニャンコには一度も会うことはあっていません。

 そういえば、あの野良ニャンはうちのパコとおんなじ毛色だったなあ。心なしか、体付きもあの野良に似ている気がしてきた。

 ・・・もし今あの野良ニャンにあったら、こうして仕返ししてやるのになあ。

 そう言って、えいやっ! と、パコの鼻を軽く指でつまむ。

 しばらくして指を離すと、パコはゴロゴロ言いながら、鼻の頭をペロッと舐めた。 


※野良にゃんこに餌をあげるのは、良くないというのは重々承知しております。ですが当時はよく分かってなくて、上げちゃいました。現在は気をつけています。何分、昔の話なのでご容赦下さい。

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