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石神井と春の行楽弁当

 武蔵野の面影が残り、ボート池では行楽地の賑わいもある石神井は、桜の季節を迎えつつある。南田中の石神井川沿いや「草地広場」などではシートを敷いて、弁当を広げ、花見を楽しむことだろう。

「草地広場」まだ咲いていない

 西武新宿線・上石神井駅の近くに、「津多屋」という仕出し弁当の販売店がある。ホームページにも「ロケ弁」と書かれているのだが、屋外の撮影のためでけではなく、テレビなどの収録時、出演者やスタッフに配られる弁当のことだ。有名なところでは、代々木上原の「金兵衛」(「銀だら西京漬け弁当」)や、新宿四谷の「オーベルジーヌ」のカレーといったところか。いくつかブランドがある中、しばしば名前があがるのが、津多屋の弁当だ。

 生まれてから西武新宿線に一度も乗ったことのない東京人は多いだろう。急行が停まる上石神井駅も同様にちがいない。そんなぴんと来ない街から芸能人たちの楽屋に運ばれるようになったことは意外な気もするが、津多屋は、ドリフターズの「8時ダヨ!全員集合」の頃からロケ弁を作り始め、口コミだけで営業してきた(と、ホームページに載っている)。
 最近も落語家の林家木久扇さんが、自分の大切な公演のスタッフ弁当は津多屋の弁当に決めているが、高校時代の友人が実は津多屋の創業者だったと知って驚いたというエピソードをテレビで話していて、業界とは何かと縁があるようだ。

 津多屋の弁当はおかずが豪華で、取り合わせがよい。ご飯がすすみ、満足感もあるが、特に人気なのが「のり2段 幕の内弁当」だ。
 ロケ弁の中でも高級な部類だと思うけれど、店頭でも並んで買える。花見の席にはぴったりなので、おすすめしたい。

「2色そぼろ幕の内弁当」

 早いもので、石神井公園駅の東側で「西友 石神井公園店」が閉店したのは、一昨年の秋のことになる。後には集合住宅が建つ。すでに商店街の街路灯の表示も「石神井公園西友通り商店会」から「石神井町二丁目通り商店会」に変更されている。
 商店会の通りにある「たべものや ITOHEN」はおしゃれな総菜店だ。お店の中でも食べられるが、好きなおかずを選んだお弁当をテイクアウトも出来る。メニューは随時変わるが、どれも優しい味で、体に良さそう。一見物足りない量かとも思うが、一口ひとくち食べると充実感がある。「スイートチリ唐揚げ」は、自分にとっての定番だ。
 ITOHENの弁当は、仕事でテレワークが続いていた間に何度か使った。テイクアウトの弁当箱はプラスチックの使い捨て容器が多い。度重なると捨てる際に気になってきた。ITOHENの容器は葦や砂糖きびのパルプを使用しているが、こういう工夫があると、罪の意識が軽くなる。これからの季節、公園で食べるにもいいと思うが、どうだろう。

「ITOHEN」

 コロナ禍の時期は、さまざま店のお弁当にお世話になった。この時期限定で、テイクアウトをすすめていたところもあったような記憶がある。
 そんな中、下石神井にあった仕出し専門店「豊悠」が昨年の一月、閉店している。始まりは1930年創業の精肉店だったそうで、ここもテレビ局用にロケ弁を作ってきた。店名の由来は、最初に納品したのがフジテレビのドラマ「For You」だったからという。
 豊悠は千川通り沿いに店の幕や幟を出していて、自転車でもよく前を通った。これからもいろいろ食べてみようと思っていた矢先の閉店だったので、残念だ。

ボリューム満点、出来たて「肉のタナカ」


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