石神井と「さつまいも」
昨年、京都駅のまわりを歩いたが、抹茶を使ったスイーツをたくさん目にした。薄緑色が侘び寂びの世界に通じるのか、京都らしさを演出するカラーにもなっている。
抹茶と比べられるか分からないが、近年の「さつまいも」人気もすさまじい。メディアの注目も高く、秋となれば、各地でイベントも行われている。
さつまいもは食物繊維が豊富だ。健康志向にもマッチようで、今やスイーツ界のど真ん中を歩いている気さえする。
今年は石神井の観光農園を昨年以上に楽しむつもりであった。夏のブルーベリーは機会を逃してしまったが、情報をとるには、各農園のInstagramなどをフォローすると確実なようだ。
畑仕事もせず収穫だけ楽しむとは図々しい気もする。一方で、石神井でも急速に畑が減っているという現実もある。そんな中、身近なところで収穫を体験できるのは有難いことだ。
中でもさつまいも堀りはずっと狙っていた。はっきりした記憶はないものの、子どもの頃に行ったということだけ覚えていて、実家に確認してみると、埼玉県の川越の方の畑だったらしい。いずれにせよ、何十年ぶりかの芋堀りになる。
今回、収穫体験に参加したのは、練馬区大泉町で350年以上続いているという「白石農園」さん。場所はここも埼玉県の和光市だ。
県をまたぎ、もはや石神井とも近所とも言えないが、石神井公園駅から北に向かって延々自転車をこいでいくと、四十分ほどで着く。
土曜日の午前中、私より先に数組の家族連れが畑にしゃがみこんでいた。はじめに参考動画を見て、受付で二千円を払う。スタッフに決められた区画に案内頂き、軍手をはめて掘り進めていくが、難しいことはなかった。
さつまいもは盛り上げた畝の中にある。黒々とした土はふかふかとして、手を滑り込ませると、ぬくもりが感じられ、気持ちいい。隣の区画では家族の兄弟が競い合っていて、「まだまだ、かぶは抜けません」、母親が「大きなかぶ」の有名な一節を唱えていた。
先の動画によると、一株に何個ついて、どんな大きさのものにあたるかは「運次第」とのことだ。作付けがいい加減ということではなくて、そういうものなのだろう。もらった説明書に「じんせいいろいろ さつまいも も いろいろ」ともあって面白い。
白石農園がここの畑で芋掘り体験を行うのは今年からだそうだ。来年はまた違ったことになるかもしれない。この日、収穫のは「紅あずま」だったが、規定に届かなかったらしく、立派な「紅はるか」をもらった。持ち帰った芋は、しばらくの間干すことになる。
今回は埼玉県であったが、石神井の農園でも収穫体験は行われているようだが、今回は募集は見つけられなかった。
食べるほうでは、石神井公園駅の高架線路の近くに「おいもここ石神井公園店」がオープンしている。メインの焼き芋の他にスイーツも販売され、幅広い。地元で人気の「居酒屋 とおるちゃん」とのコラボも企画するなど、地域の賑わいにも貢献しているのも特徴のひとつだ。
イベントにコラボにと、子供の頃のさつまいもとは世界が違う。「垢ぬけない」の意で「芋っぽい」ということばもあったが、隔世の感がある。
ご存じの通り、先日は衆議院選挙があった。いくつかの党が農業の大切さをうたい、参画のハードルを下げる演説をしていたが、「スマート農業」、「都市農業」など、語られるワードに勢いはあったものの、加速度的に減少している畑を鑑みるに、それだけではかけ声だおれの印象だ。
収穫するのも食べるのも、これだけ人気があるのだから、実際のところ、何とかならないものか。
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