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「子育ての正解」を類人猿に学んでみる|テナガザル編

「子育ての正解」を類人猿に学んでみるシリーズ(#0,#1,#2,#3)の4回目で学ぶのは、「地味だけど実は類人猿」のテナガザルの子育てです。

さっそくテナガザルの子育てスタイルの特徴をまとめてみると、

①母親がほぼひとりで、しばらくは24時間胸に抱いて子育てをするが、乳離れするくらいから父親も育児に参加する

②同時に複数の子育てをせず、手を離れてから次の子を妊娠する

父親は母親と「夫婦」をつくっていて、基本的に一生を添い遂げる

④オトナとしてのふるまいや子育てのしかたは、「両親やきょうだい」に学ぶ

⑤寿命をむかえるギリギリまで、子育てをする

という感じです。

特徴的なのは①③④ですね。特に「夫婦をつくる」というのがポイントです。このあたりは、今までに紹介した類人猿のなかでも一番「人間に近い」と言えそうですね。

それでは、テナガザルの子育てスタイルをくわしく見ていきます!


人間のような「夫婦」と「核家族」の社会


テナガザルの子育てを語るうえで欠かせないのが、「家族のかたち」です。その大きな特徴が、オスとメスが「夫婦」をつくること。

チンパンジーは数頭のオスと数頭のメス、ゴリラは1頭のオスと数頭のメス、オランウータンは交尾以外はオスとメスが一緒に暮らすことはないなど、それぞれがちがった家族のかたちをもっていましたね。

そんな類人猿の中で、人間的ないわゆる「1対1の夫婦」(世界には一夫多妻制の国もありますが)をつくるのはテナガザルだけです。

テナガザルは1頭のオスと1頭のメスがペアになると、どちらか一方が先に死ぬなどの事情がないかぎりは、一生一緒に添い遂げるとされています。

(仲の良い夫婦をさしていう「おしどり夫婦」という言葉がありますね。しかしオシドリは、人間からすると個体の見分けがつかないだけで、実は毎年ペアの相手を変えていることがわかっています。なので、「てながざる夫婦」の方が適切といえます。きっと流行らないけど。)

そして、「夫婦」と同じくらい大きな特徴が、「核家族」で暮らすということ。

テナガザルは、夫婦とその子どもからなる2~6頭くらいの家族で暮らします。他の家族とはなわばりが重ならないようになっているため、生活の基本は「お父さんお母さんと子ども」の核家族なわけですね。なんだか人間に似ていますね。

核家族でくらしている以上、子どもにとって学びの対象は、両親ときょうだいにほぼ限られます。オトナになってからの生きのび方や正しいふるまいなどは、家族から学ぶんですね。このあたりも、他の類人猿とは少しずつちがいます。

また、テナガザルは6~8歳くらいになると、自分の生まれ育った家族を離れ、相手を見つけて新しく「夫婦」をつくります。

メスは8歳くらいから妊娠できるようになり、早ければ2~3年間隔くらいで子どもを産みます。

出産 → 1歳半で乳離れ → 生理が再開 → 妊娠期間7か月

というサイクルですね。乳離れしてから生理(妊娠の準備)が再開するので、子どもが手を離れてから次の子どもを産む、というところは、他の類人猿と変わらないところですねー。


お父さんも抱っこする、テナガザルの子育て


テナガザルの子育てスタイルの特徴は、「抱っこ」にあります。

オランウータンにも共通するのですが、テナガザルは樹の上で一生をすごす動物で、地面におりることはほとんどありません。

つまり、子育てもずっと樹の上。親がしっかりと抱っこしていないと、小さな子どもは樹から落ちてしまいます。(霊長類の子どもは、かなり小さいうちから自力で親にしがみつくことができますが。)

とはいえ、日々おおきくなる子どもを、24時間抱っこし続けるというのは、テナガザルにとっても骨の折れる仕事なわけですが、そこで活躍するのが「お父さん」。

テナガザルは、子どもが乳離れする1歳~1歳半くらいになると、父親が子どもを抱っこすることが増えます。場合によっては、もっと小さいうちから抱っこをはじめることも。

日本の動物園でも実際に、生後数か月の時に母親が亡くなってしまったテナガザルの子どもを、父親が世話をして育て上げた例があります。

このように、「子どもが小さいうちから父親も育児に参加する」のがテナガザルの子育ての大きな特徴です。


まとめ|テナガザルの子育て


テナガザルの子育てスタイルの特徴をおさらいすると、

①母親がほぼひとりで、しばらくは24時間胸に抱いて子育てをするが、乳離れするくらいから父親も育児に参加する

②同時に複数の子育てをせず、手を離れてから次の子を妊娠する

父親は母親と「夫婦」をつくっていて、基本的に一生を添い遂げる

④オトナとしてのふるまいや子育てのしかたは、「両親やきょうだい」に学ぶ

⑤寿命をむかえるギリギリまで、子育てをする

というところでした。

「夫婦」や「核家族」、「父親が子育てに参加する」など、現代の人間に近い(父親の子育てについてはいろいろあるかもですが)特徴をもっているのが面白いところですねー。

さて、これで類人猿4種類(ボノボは取り上げてませんが)の子育てスタイルの紹介が終わりました。次の記事で一連のシリーズは完結です。

満を持して、類人猿とヒトの子育てをくらべて、「ヒトの子育ての正解」について考察していきます。それでは~

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