「子育ての正解」を類人猿に学んでみる|人間の子育ては無理ゲー編
「子どものしつけ方がわからない」
「子どもはかわいいけど、ついイライラして怒鳴ってしまう時がある」
「子育ての正解ってなに?」
世の子育てママさん、パパさん、またはその周囲にいる方々から、こんな声が聞こえてくることがあります。
わたしも、実際に娘の子育てをするうえで、同じような気持ちになることがあるので、とてもよくわかります。
そんなママさんパパさんに、飼育員的に伝えたいアドバイスがあります。それは、
そもそも、人間の子育てって無理ゲーですよー!
ということ。「アドバイスでもなんでもねぇ!」ってのは置いといて、人間の子育てって、動物の中でも難易度が高すぎるんですよね。とくに現代社会では、1人育てるだけでスーパーハードモード。
それにはいくつかの要因があるように思うんですが、飼育員的な視点で特に気になっているのが、
現代の人間の子育ては、動物としての「子育ての正解」からかけ離れすぎ!
ということ。
動物はそれぞれ、長い年月を経て培ってきた「子育ての正解」とでもいうべき独自の子育てスタイルをもっています。チンパンジーにはチンパンジーの、テナガザルにはテナガザルの、ベスト(またはベター)な子育てスタイルがあるわけです。
ところが現代の人間は、さまざまな理由から「ヒト」として長年培ってきたはずの子育てスタイルとかけ離れた方法で子育てに挑んでいます。そりゃ苦労するわけです。
詳しくは「子育ての正解を類人猿に学んでみる」シリーズの最後の方でまとめますが、
●ワンオペ育児(一緒に子育てをする存在がいない)
●余裕がない状況で、年子などの年齢の近い複数の子どもを育てる
といったところは、「ヒト」としての子育てスタイルからかけ離れてしまっているところの代表格です。
そもそも、動物の繁殖戦略(次の世代に遺伝子を受け継いでいくための工夫)ってそれぞれなんですけど、主なところだと、
①卵を産んで、親の体温で温めてかえす → 親が子どもを育てる
②卵を産んで、地熱や水温などでかえす → 勝手に育て!生き抜け!
③赤ちゃんを産む → 親が子どもを育てる
の3パターンにわけることができるんです。
①は鳥類、②は爬虫類や両生類、魚類、③は哺乳類の多くがあてはまるんですが、もちろん人間は③。
③の戦略は、一見すると良いようにも思えるのですが、利点もあれば欠点もあります。
利点としては、
●親が子どもを守ることができるので、子どもが生きのびやすい
●親が子どもに食べ物などをあたえることができるので、同上
●親が子どもに生きのべるすべを教えることができるので同上
つまり、親が子どもにしてあげられることが多く、結果子どもが生きのびやすいといったところ。
反対に欠点としては、
●一度にたくさんの子どもを育てるのがむずかしい
●基本的に子育てが終わらないと次の子どもを産めない
●授乳や食べ物さがし、子どもの保護など、親の負担がめっちゃ大きい
といったところでしょうか。
つまり、一生のうちに産み育てられる子どもの数に限りがあり、親の負担がめっちゃ大きいということです。
(子どもの数については、卵で何十何百と子どもを産んでも、親の保護がないとほとんどが生き残れないので、どっちもどっち感はありますが」
まとめると、人間がとっている繁殖戦略は、
少ない子どもを1人1人大切にじっくりと育てあげるけど、その分親の負担が大きい!
ということになります。
これだけだと、ほかの哺乳類も大変さは大きくは変わらないんですが、人間の子育てには、(特に現代の日本においては)ひとつ大きな特徴があります。
それは、
「正しい子育て」に求められることが多すぎ&難しすぎるのと、そのわりにまわりのサポートが少なすぎる!
ということ。
こう書いてみると「そりゃそうだよね」って感じなんですが、いまの日本の環境での人間の子育てって、「動物の子育て」という視点でみると、ものすごく異常、というかものすごく大変なんです。
もはや「子育ての正解」を目指すなんてムリ!な状態です。
そもそも、世界にはたくさんの生き物が暮らしています。その数、3000万種以上とも。
そんな中で、分類上私たち人間に近い動物なのが、オランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボなどの「ヒト科」動物に、テナガザル類を含めた、いわゆる「類人猿」とよばれるグループの霊長類たちです。
分類上似ている動物は、同じような繁殖戦略をとっていることが多いので、「人間の子育ての正解ってなんだ?」ってことや、「現代の人間の子育てって、どれだけ異常なの?」ってのを考えるうえでは、類人猿の子育てはとても参考になるんですよね。
と、いうことで、今回から数回にわたって、「子育ての正解を類人猿に学んでみる」と題して、いくつかの類人猿の子育てについて紹介したいと思います。
最初は、われらの隣人、チンパンジーの子育てについてです。それでは~
ここまで読んでもらえたことが、なによりうれしいです!スキをぽちっとしていただくと、30代の男が画面のむこうでニヤニヤします。