映画「名探偵ピカチュウ」を飼育員目線でみると、日本と欧米の動物観のちがいがみえたというおはなし

先日、金曜ロードshow!で「名探偵ピカチュウ」という洋画が放送されてたんですが、2週?3週?おくれでやっと見ました。


ポケモン赤緑〜金銀まっただ中世代!のわたしとしては、予想外に(失礼)楽しい映画だったんですが、それと同時に、日本と欧米の動物観のちがいも垣間みえて、とっても興味ぶかかったです。

この映画を見ていない方にカンタンにあらすじをお伝えしておくと、ある事件で父親をうしなった青年のもとに、探偵である父親のパートナーだったポケモンのピカチュウがあらわれ、ちからをあわせて父親の死の真相や、その背後にある大企業のとある計画を探っていく、という感じのものです。

物語の中心は、ポケモンと人が共存し、バトルは禁止!ポケモンと人はパートナー!という信条の「ライムシティ」(ポケモン感のある名称ですき)という街なんですが、この街の信条が、欧米の動物観をわかりやすく表しています。

それは、

「動物を使うのはOKだけど、心身ともに健やかにすごせるように配慮しようぜ!」

といった考え方。

ライムシティ以外の地域では、ポケモントレーナーとよばれる人たちが、ポケモンをつかまえ、鍛えて、バトルで強さを競うという、「ポケモンってそういうもんだよねー」という感じなんですが、ライムシティはちがいます。

ライムシティでは、ポケモンは人のパートナーとしていろいろな仕事を担ったり、常にそばにいる存在として扱われています。また、モンスターボールの中ですごすこともなく、鍛えられることもなく、バトルさせること自体違法という、ある意味変わった街。

この、ライムシティとそれ以外の地域でのポケモンの扱いのちがいというのが、「動物福祉」の考え方が一般的な欧米と、日本をふくむそれ以外の国(または旧来の考え方)との動物の扱いのちがいを喩えているんだろうなーと感じさせる描かれ方だったんですよね。

どういうことかというと、ヨーロッパから広まった「動物福祉」の基本的な考え方が、「ライムシティの信条」と被ってるんです。

「動物福祉」というのは、ヨーロッパの畜産業界を中心にして広まった考え方でして、ざっくりいうと

「動物を食べたり、毛皮とかを利用したり、仕事に使ったりするのはアリってのを前提として、生きている間はできるだけしあわせにくらせるようにしよう!」

といった感じのものです。

(日本では似て非なる「動物愛護」という考え方のほうが浸透してるんですが、これについてはまたの機会に。)

実際に動物福祉先進国では、「ニワトリはオリで飼っちゃダメよ!」とか、「ブタを飼うなら1頭あたりこのくらいの広さは絶対ね!」みたいな基準がありまして、できるだけストレスの少ない環境でくらせるようにする!というのが徹底されています。

また、動物同士を闘わせるような催し(日本では闘犬とか闘鶏とか)を禁止しているところもあります。

このあたりの考え方が、ライムシティのポケモンと人との関係に似てるように思えるんですよねー。

ちなみに、日本の畜産業界や動物園にも動物福祉の考え方は入ってきていますが、全体的にみると、充分に配慮できている!とはいえない状況です。

もちろん、日本の国土や動物観を考えると、欧米と全く同じことをするってのは現実的じゃないので、日本式の取り組みが必要になってくるんですが。

ともあれ、この映画の脚本をどんな方が書いたかは知らないんですが、「動物福祉」の考え方をもっているひとなんだろうなーと想像してしまう内容でした。

「動物を闘わせること=絶対悪!」みたいな極論につなげる気はないんですが、日本と欧米との動物観のちがいを、思いもよらぬところから感じられる、興味深い映画でしたー。



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