神さまの名札 第二話
陽の光を受け 子供が山道を登っている。
痩けた頬に笑みをたたえつつ小さい手に写真を握りしめ、細い足で懸命に走っている。今年9歳になるその男子、名を典八(のりはち)と言った。
典八は航空基地建設のため立ち退いた住民の一人であり先祖伝来の土地とほぼ同時に肉親も亡くしていた。基地関連施設の建設労働に奉仕していた父親は完成したばかりの掩体壕に押しつぶされた。壕を形造るコンクリートが固まっていたのはその表層だけで内部をあらためている最中、天井が崩れたのだ。工期短縮のため無理を進めた監