壊れる友情と生まれる愛情?利己的な恋愛観 〜ナオ編 エピソード27〜

(前回のつづき)

私が完全なる被害者だと分かったナオは
完全にブチギレた。
(巧みにそう思わせることに成功した)

まさかこんなにもナオがブチギレるとは予想もしていなかった。だって私は所詮、ナオのセフレにすぎないでしょ…?
正直かなり驚いた。
と同時にすごく嬉しかったのも本音だ。

ナオは怒りの勢い余って、ついさっき別れたばかりの佐野さんに電話をかける。


「おいお前、ぱいぱんなから聞いたけど
嫌がっとんのに手出したんやって?」

そこからナオの一方的な攻撃が始まる。
ナオの勢いに佐野さんは面食らって
たじろいている様子だ。

そりゃ、佐野さんからすれば
自分が一方的に手を出したと言う主張には納得いかないところもあるだろう。
私もまんざらではない様子で易々と受け入れていたのだから、今ブチギレられてる状況が飲み込めないのも無理はないだろう...
しかしナオのまくしたてる言葉の攻撃に
なす術がないようだった。

後から聞いたのだが、
なぜ、セフレに手を出されたからってここまでキレる?!
ナオにとって私の存在は一体何なのか。
ナオはどういうつもりで私と関わっているのか、全て腑に落ちない奇妙なものだったようだ。
「俺はなんでこんなに言われやなあかんの?」
って内心苛立っていたようだった。
その意見は無理もないけど、やはり大元の火種は佐野さんであり、佐野さんの倫理観もかなりぶち壊れてるのは否めない。


そもそもセフレという曖昧な立ち位置が
話をかなりややこしくしている。
セフレという言い方がよくないのだと思う。
セフレであろうともそのセフレがどれくらいその人にとって大切な存在かは他人からは分からないだろう。
たかがセフレ、されどセフレ。
セフレは誰かのもの?
誰かに独占できる権利はあるの?
それとも親しい中での共有財産?

全てにおいて、定義はないのだから。

ただ紛れもない事実であるのは、
佐野さんは今、
ナオの逆鱗に触れてしまったということ。



電話を聞いていると、ナオの怒り方は、
"私を傷つけたこと"に対してではないような気がしてくる。

あくまでセフレであっても、自分のお気に入りの女に勝手に手を出したことに対して怒っている気がしてくる。

後者は聞こえが悪いが、そりゃ前者の方が嬉しかったけれど、いずれにしよ私を大切に思ってくれているのかな?って気持ちが伝わってきて、少し嬉しかった。

例え利己的な曲がった独占欲であっても
ナオならそう思われてもいいやって
当時の私は、彼の人間性をほぼ丸ごと好きでいたから。


電話で罵るナオの姿はかなり"ヤバいやつ"で
それはもうほとんどヤクザみたいな口調だった。実際に彼の育ちが将軍の末裔ということもあるのだろう。血の気が多い性格は遺伝だと思われる。

ほぼブチギレ状態で怒り狂ったナオは後半

「次会ったら瓶ビールで顔面殴るから。
明朝、朝一で謝りに来い。」

とはっきりした口調で言っていた。
その発言にはちょっと引いたけれども、
謝りに来いというのはどうやら大マジらしく
殴るのは実際にやるわけがない。ナオを見てきた私には分かる。ナオはすぐ大口叩きチンピラ並みに口が悪い時があるが、根はまともで大真面目な部類の人間だ。そこは信頼できる。
(地元の人間関係がかなりやばいだけ。ここだけの話、昔事件になったおでんツンツン男ともよく連む仲間うちの1人だったらしい)

ちなみに、ナオよりもよっぽど佐野さんの方が常識外れの狂った考えの危険人物だとは、この時はまだあまり気づいていなかった。



余談だが、ナオは決して普段このような口調になることはない。
今この状況とは全く真逆で、丁寧すぎるほどの敬語を重ね重ね、敬いすぎるほどの態度と言動に吹き出してしまいそうになるほど腰が低いのだ。自分より一回りも年下の私にすら、仕事中は先輩だからと多重敬語で接してくる。
また、仕事中お客様に関わる時、
目上の方と関わる時など、彼は自分の信念を貫くように丁寧で落ち着いた話し方をする。
しかしナオの敬語が妙に嘘っぽく、違和感があるのは、アパレル出身の人の特徴なのかなとも思う。

以前にラルフローレンからうちに転職してきたナオと同い年くらいの男性と関わった時も、自分を律するためなのか、本音を隠すためなのか、やけにわざとらしい敬語を使うなと思ったことがあった。

たぶん、ナオもその男性も、人の好き嫌いが特段はっきりしているからだと思う。
彼らは元々自分が尊敬できる相手と、そうでない相手への態度が一変して変わるタイプの人間なのだろう。昔ヤンチャしていた人間の特徴とも言える。笑
そして、長年の接客経験からだろうか、
ナオも元アパレル出身だが、一流ブランドで働くアパレルの人たちは、来店してきたお客様を一瞬で見定めて、その人に合ったものを提案するらしい。また、買う意欲があるかどうかも見るクセがついている。
その長年の習慣が洗練され、人の本質を見抜く力に長けているのだ。悪い言い方をすると一瞬で「人の品定め」をしているとも言える。
なので一瞬にして好き嫌いが判明し、それでもって嫌いな人間にも本音を隠す能力が身に付いているのだと思われるw
妙にわざとらしい敬語になるのは、
彼らの元々のはっきりした性格を、隠すように修練したからなのだろう。笑
(正直隠し切れてないからタチが悪いw)

私はナオがうちの職場に初めて来た時から
こいつほんとは人をバカにしてるな、
自分が仕事できるがゆえに
自分より仕事できないやつのことを
心の中で嘲笑うタイプの人間やなって
すぐに分かったので、そこをいじりまくった。

ナオは後輩ながら私よりよっぽど着眼点が優れていると思ったので、逆に私があなたを敬うよという態度を見せて、とりあえず、ナオの敬語という壁をぶち壊すところからナオの懐に飛び込んでいった。
私たちはそうやって仲良くなったとも言える。



電話の切ったナオに、私は抱きついた。

「怒ってくれてありがとう」

その夜は、絡みつくようにセックスした。
ナオはいつもと違った雰囲気で
激しく私を求めてきた。貪るように。
嫉妬しているのが手にとるようにわかった。
正常位や騎乗位、バック。
あらゆる方向からついてくる。
前戯もやたらと執拗だった。

ナオは相変わらず私のフェラがお気に入りで
「気持ちいい、ぱいのフェラは愛を感じる」
なんてことを言う。
普段のナオでは考えられないような全くナオらしくない発言に、少し苦笑いしそうになる。
その後もナオらしくない発言が続く。

騎乗位で動く私を見て
「綺麗。めっちゃ綺麗」
と何度も言ってくれた。

"愛" とか"綺麗"とか"可愛い"とか
普段そんなセリフを一切使わないナオが
今日は連呼していたのは、どういう心境の変化だろうか。

今日の佐野さんとの一件で
何かに気づいたのだろうか。


私の思惑通り、いや、それ以上のシチュエーションになったと言えば、その通りだった。
ナオに少し嫉妬させるつもりが、
嫉妬を通り越して激怒してくれたこと。
嬉しかったけど少し怖くて、
でも嬉しかったんだ。

しかしざらっとした感情は残る。
ナオと佐野さんの友情関係を、今回の一件で
引き裂いてしまうことになるかもしれないということ。

ナオは、明日の朝に佐野さんが謝りに来たら
彼を許すつもりでいるのだろう。
(彼はキレることはあるけどあくまで友情を大切にする人間だから、人間関係を簡単には切らない)

でも一方で、元々ナオの性格をあまり好いていない佐野さんは、もしかしたら今回の一件でさらにナオのことを嫌いになり、2人は絶縁状態になるのではない。

しかし、よく考えれば
ナオだけ一方的に友情を感じてる関係なんて
ない方が良いだろうと、開き直った!
(佐野さんが私に手を出してきた時点で、
それはもう「ナオが佐野さんに純粋な友情を感じ、信頼を寄せていたこと」に対する冒涜だ😠!!!)


それでも私は、
すごくズルくて最低なやり方をしたと思う。
自分がここまで最低なことをやる女だったことに、正直驚きを隠せないでいる。
(というか登場人物全員狂ってる🙄)

それほどにまで私は我を忘れて
落ちてしまっているのか。。

無論、当時は自分がどんどん理性を失っていることに気づく術がなかった。

そんな風にしか愛を確かめられないのは
少し悲しいけれど、
というかこれを愛と呼ぶのかは謎だけれど、
それでも私はそこまでしてナオが欲しかったのだ。

その夜は、ナオを手に入れたかのような
特別満たされた気分になった。




※"ヤクザのような口調"は少し誇張表現すぎました。笑
あくまで理詰めです、言葉の綾です。笑



つづく




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?