XX話_テレジア➀

彼女との出会いは、19歳の時だった。

地元の予備校に通っていた頃に、共通の友人を介して知り合った。居酒屋に入り、一目みた瞬間、よくいる量産型の女子、それが彼女の第一印象だった。何次会だったかは覚えていないが、カラオケに行った。

その時に歌にもならない洋楽をうたった後に、連絡先を尋ねられた。交換し、そこからそれぞれの帰路についた後、彼女から連絡があった。

「ありがとう、これからよろしく」
要約すると、そんな他愛ない内容だったが、やたらと絵文字が多かったのを覚えている。

それから数日が経って、二人で会うことになった。彼女は、その当時、地元の大学に通っていて自宅から車で30分程度のバイトをしていた。

僕は予備校生だったが、不真面目だったので、時間の融通はきいた。
待ち合わせは、実家から徒歩で15分程度のレンタルショップの裏の駐車場。当時、免許は持っていたが車の無い僕に、彼女が車で迎えに来てくれた。

少しでも良い印象を与えたかったのか、妙にテンション高く会話を続けていたのを覚えている。そんな僕に彼女もつられて笑っていた。


それから何度か会う度に、何がきっかけだったのか忘れたけれど付き合うことになった。車で地元の色々なところに出かけた。そのうちにキスをして、流れのままに求めると

「ごめん、できない」 そう言われた。

彼女は続ける。

「言わなければならないことがある。実は、私、人を殺したんだ……人殺しなんだよ」

「え、どういうこと?」

突然の言葉に声を失っていた

「去年、付き合っていた人との間に子供ができたの。でも生むことができないからとおろすことになった」

涙ながらに話を続ける姿に、何を言えば良いのかわからなかった。

「なんだ、そんなことか大丈夫。」

全然大丈夫でもなんでもない。動揺しているのに、そう言った。その後は、抱きしめながら、沈黙の時間が過ぎていくばかり。

だけど、彼女は強かった。

「ありがとう、私の気持ちが落ち着くまで待っててくれる?」

僕はただ「わかった、待つよ」と答えた。

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