その㉗Splitting Up Frequencies With Phase
1.はじめに
EQによる周波数分割によって、帯域ごとに異なるエフェクトをかけて、サウンドデザインをより独創的なものにできる。こんなことはエレクトロミュージックを創作する者であれば、当たり前のトピックかもしれない。
しかし、今回は動画を見て、実際に検証してみて色々考えさせられた。
単純にEQで帯域を分割すると、位相歪により音色が変わってしまうのだ。
まあ、そのサウンドの変化が好ましいものであれば、良しなわけだが。なかなか元音との比較が難しい。GainMatch等で聴感上の音量を揃えて色々比較してみたけど、難しい。「何が良い音なのか?どういう音を目指しているのか?」禅問答にようになってしまった。
2.ネタ元動画の紹介
Mr.Billは動画で、EQ8による帯域分けだと音色が変わるので、逆位相をぶつけてこの問題をほぼ解決できるとしている。詳しい手順は動画で確認してほしい。
確かに逆位相をぶつければ音は消える。
つまり、ローパスした音に逆位相をぶつければ、ローパスの音は消えハイの音が聞こえる。実際に実験したが、その通りである。
しかしである。Peak値で元音より音量が上がってしまうのである。
そこでGainMatchにより聴感上の音量を揃えるわけだが、音色が変わるのは位相歪が関係しているのは、間違いないであろう。
3.少し考察した結果
何を言っているのか分からない人も多いと思う。私も全てを理解しているわけではないし、何も分かっていないのかもしれない。ただ自分の耳を信じて考察した結果を以下に記しておく。※GainMatchした比較。
a)EQ8による帯域分け(位相調整なし)
→明らかに音色が変わる。Peak値は上昇する(元音に対して約3dB)
b)EQ8による帯域分け(位相調整あり)※Mr.billが動画で紹介している手法
→若干音が暗くなるような気がするが、a)より変化は分かりにくい。Peak値は上昇する(元音に対して約1.7dB)
c)MultibandDynamicsによる帯域分け
※Ableton純正のプラグインを使うコンプが作動しないように設定(レシオ1:1.00)にして帯域分けの機能のみを使用する。位相調整しているのかは不明。
→ほとんど音色変化はないように感じるが、元音より若干重心が下がる感じがする。Peak値は上昇する(元音に対して約2.2dB)
d)HofaSystem MultiBand機能による帯域分け
純正でないが、HofaSystemのプラグインでも試してみた。
→遜色なし。音の変化は私の耳では感じられない。GainMatchも0.1db程度の差しかない。非常に優秀。
ただし、Peak値は上昇する(元音に対して約2.8dB)
【結果】
音質変化の少ない順はd>C>B>Aとなった。(※CとBは、ほぼ同じかな)
Ableton純正なら、MultiBandDynamicsを使用した帯域分けを使用すればサウンドデザインにおいては問題はなさそうだ。
位相調整のないEQ8による帯域分けは巷のAbletonTipsに溢れているが、音色の変化がもろに分かるのでお勧めはできない。
HofaSystemはかなり優秀なことも分かった。
【補足】
サウンドデザインの観点で言えば、そんなに神経質になるものでは無いかもしれないが、単純なEQ8による帯域分けは、かなりイメージが変わるし、素人にも違いが分かるレベルなので、Mulbandを使った方が良いでしょう。
ちなみに位相歪については、下記のサイトはが非常に参考になります。
それにしてもPeak値は上昇するのは何故なのかモヤモヤしている。
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