書評:「営業と詐欺のあいだ」 坂口孝則 幻冬舎 2008年

 生活をするにはお金が必要だ。わたし達は日々お金を使って生きている。この「使う」は主に消費を意味するが、ただ漫然と「使って」いて損はしていないだろうか?ものを売る側は、不当ではないにしても、高い値段でものを売付けてはいないのだろうか?そんな疑問をもつとき、「営業」する側のテクニックを知ると、考え直してみようという気になる。営業は人の心理を利用し統計的なデータで成り立っていることを本書は教えてくれる。
 誰でも、詐欺に会う可能性はあるが、他人が詐欺にあったと聞く時、自分は大丈夫と思ってしまう。詐欺の手口は基本的なものから、マインドコントロールのような過激な手法まで様々のものがあり、年々巧妙化している。自分は大丈夫というのは単なる過信であることを知らされる。
 なぜ、営業と詐欺の「あいだ」なのだろうか?それは営業が合法ではあっても、人の心理を巧みに操ることで成り立つからであり、グレーゾーンがあるからである。営業をする側がそれと気づかずに、善意からグレーゾーンに踏み込む場合もあるのだろう。
 本書は営業と詐欺を対比して扱いながら、その裏側に消費に関わる人間の本質的な部分、本性とも言えるものがあることを示唆している。

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