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死ぬまでに一度行きたかったコンサート

先日マルタ・アルゲリッチのコンサートに行ってきました。

アルゲリッチというのは、
一言で言えば音楽の女神のような人。

現代を生きるクラシックピアニストの中で世界的に最も人気のある演奏家で、後世にも確実に語り継がれる伝説的な存在です。

若い頃から美貌もあいまって大変な注目を集めましたが、そんな彼女も今は82歳。

いつまで聴けるんだろう、
そう思うと居ても立っても居られなかった。
というわけで初めてチケット争奪戦に参戦し、
無事ゲットでき、聴いてきました。

アルゲリッチは、多くのクラシックファンにとってそうであるように、
ピアノを弾く私にとっても特別な音楽家です。
彼女のバッハやプロコフィエフを何度動画で観て胸を熱くしたことでしょう。
どれだけ興奮して涙を流したことか。笑

死ぬまでに絶対生で聴きたい!!!
と憧れてきました。

今回私が聴いたのは、

すみだトリフォニーホールにて
クレーメル🎻とのデュオ、
N響団員とのアンサンブル。

結論から申し上げて、
もう、一生ものの体験だった…!

高いチケット代を払う価値はある。
そしてまた行きたい。
彼女が元気でいてくれるなら!
練習のモチベ爆上がりの、
キラキラ体験でした。

以下、備忘録として書きます。

ーーー

まず開演が10〜20分くらい遅れました。
トラブルがあったのか、
体調不良か、
それとも出たくないとゴネていらっしゃるのかなど、想像が膨らみます。
でも自由奔放なアルゲリッチなら、
それくらいなんてことない。
そう思わされます。

そしてお待ちかね、
アルゲリッチとクレーメルが登場。
底の方から鳴るような万雷の拍手から
ホールの豊かな音響を感じ取ることができ、
期待が膨らみます。

なんと。
アルゲリッチの大きなため息!で、
演奏スタート。
そして演奏中も何度もため息、そして咳。
うなり声。(これはいろんな人がよくやるけども。)

うわー体調悪いのかな、
弾きたくなかったのかな、と。笑

けど2000人の聴衆の前でそこまで自然体でいられるのってすごい。
天真爛漫な彼女の魅力だと思いました。
というか、何をやっても魅力になり愛される存在。
これこそ「なりたい姿」だと思った。

そして肝心の演奏について。
テクニックや表現以前に、
まず音にやられました。

特別に大きな音でもないのに、
もう目の前で鳴っているかのようにありありと響く。
私の席はまぁまぁステージに近かったけど、
きっと一番後ろの席でも同じように聴こえているんじゃないか?と思った。
ホールの音響を柔らかくまとった一音一音に、
ハッとさせられる。
アルゲリッチ伸びやかメッセージとして
「魂から魂へ」というバッハの文言がプログラムに引用されていたけど、
本当にそんな感じ。

距離とか時間とか関係ない。
直接、魂に届くような音。
そんな音がピアノから出るんだ。

そのことを、一生覚えていようと思いました。
いつもそれを目指して私も弾こう、と。

さらには抑揚のはっきりした、
魅力的なメロディーの歌い回し。
そこへクレーメルの驚くほど伸びやかでまろやかで豊穣なヴァイオリンの音色が重なる。

すごいよね、
私はアルゲリッチしか興味なくて聴いてるのに、ヴァイオリンに耳を持って行かれざるを得ない。
クレーメルまじで名人、、

なんでこの人たちはかくも自然に、
こんな音を出すのか。

楽器というよりは声みたいだった。
話すように自然に、でも信じられないくらい惹き込まれる、心を奪われる。
そういう音楽のあり方。

(私にとってピアノは今のところ、
腕の延長みたいな感じがする。
自分の体だけでは体現できない世界をつくることができる、身体の拡張パックみたいな感覚があります。
碇シンジは非力だけど、エヴァとシンクロすればあらゆることが可能になる的な。
楽しい。

それはそれとして、
これからはもっと楽器の音を「自分の声」として捉えてみよう、と思った。
メロディーを奏でる時は特に。
目の前のクレーメルやアルゲリッチのように、声としての魅力、説得力がすごかったから!!)

ステージを去る時、
二人で手を繋いでいてかわいかったです。

ベートーヴェンやシューベルトのプログラムだったんだけど、一曲目だけヴァインベルクという20世紀ロシアの作曲家が混ざって新鮮でした。
新古典主義らしいスッキリした構成とクールなハーモニーの曲だった。

後半はN響メンバーとのアンサンブル。

これも楽しかった。
当然みんな素晴らしいんだけど、
同じヴァイオリンでも、クレーメルとこれくらい個性が違うんだな、と思った。
立ってソロを弾くのと、アンサンブルで座って弾くという違いも大きいから単純には比べられないのですが。

(また余談。
この直前に鎌倉をぶらぶらしていて、
その時とコンサートでの感情の対比がすさまじかった。
私は、例えば観光地に行って流行のスポットを見ても恐ろしいほどに心が微動だにしません。
鎌倉はいい町だったけど、デカい神社をみても「ふーん」以上なにも思えない。

一方で良い演奏に触れると、
もうビンビンに心身が反応してしまう。
この演奏をするために演奏家がどれだけ技を磨き、感覚を研ぎ澄ましてきたか、
どんな風に心を使って演奏しているか。

対価として捧げた時間や労力を思うと本当に涙が出てくる。
それを「聴く」という行為で分けてもらえることの有り難さ。
そういうのに触れることこそが自分にとっての「幸せ」だと、改めて確認できた体験でした。
いや私、お笑いとか見ても涙出るのよね。
芸事として同じに感じる。
どうかしてるよね!!笑)

話を戻しまして。

学べたことは、
音楽そのものだけじゃありません。

アルゲリッチの出入りの時の歩く姿、
そのまとう空気、オーラ、笑顔、
お辞儀の姿勢やタイミング、
演奏中の表情、
同じ空間に身を置いたこと。
全て忘れないでいようと思った。

最後に。

私はアルゲリッチになりたい。
彼女の真似をするんじゃない。
(それはできない)
彼女のキャリアを目指すのでもない。
(目指せるものじゃないけど。)
自分なりの「アルゲリッチ的な在り方」を目指そうと思った。

そんな私が日々、音楽の発見で大興奮しているインスタ🎹

ドビュッシー、ラヴェル〜
ショパン、スクリャービン、
ジャズ、分析など。
一緒に楽しみましょう😘




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