FASS 資産編(完)

全体のポイント

概要

当社→売上先:通常は売掛債権が発生する
・与信管理
・会計処理
・台帳処理

仕入先→当社:通常は買掛債務が発生する
・下請法
・会計処理
・台帳管理

商品:通常は在庫が発生する
・実地棚卸
・評価
・会計処理
・リードタイム調整

固定資産:商品以外の営業用資産
・分類:有形/無形/投資その他
・評価
・会計処理
・台帳管理
・固定資産税
・ソフトウェア会計基準

資産の分類

企業は、債権者や株主から調達した資金(BSの貸方)を、①事業に投下し、②資金として回収するサイクルを繰り返す(企業の資本循環サイクル)
そのため、資産(=BSの借方)も、①費用性資産②貨幣性資産に区分できる

費用性資産
・事業に投下した段階(未回収)の資本:換金性が低い
取得原価(過去の支出額)で評価する
・将来的に費用に変わる(期末ごとに費用として配分される):使った分は費用、残った分は資産
・例:
 ・棚卸資産(商品/製品):販売時に売上原価を費用計上する
 ・固定資産(有形/無形):期間に対応する費用(減価償却費など)を計上する
 ・前払費用

貨幣性資産
・回収中/回収済な段階の資本:換金性が高い
回収可能価額で評価する
 ・正味実現可能価額NRV(IFRS)≒正味売却価額(JGAAP):今すぐ現金化した場合の金額
 ・割引現在価値PV(割引現価):将来の回収額を現在の価値に換算した金額
・将来的に現金に変わる
・例:
 ・現金預金:新たな事業への投下を待機している資本
 ・売掛金
 ・受取手形
 ・貸付金
 ・立替金
 ・差入保証金
 ・未収収益
 ・有価証券:ただし、非貨幣性資産に該当

共通論点

・職務分離:現物取扱者と記録者を同一人物にしない(内部統制=リスクコントロール)
・書類突合:自社作成書類と外部作成書類で突合するのが基本
・調査:まずは自社内の業務処理にミスがなかったかどうかを確認してから、外部のミスを疑う
・台帳管理:主要簿・補助簿とは別に、台帳を作成して管理する(各資産のプロフィールを一元管理するため)
 ・給与台帳:従業員の家族構成や勤務履歴も記録する
 ・売掛金台帳:年齢も記録する
 ・固定資産台帳:個々の固定資産について、取得→減価償却→処分(売却/除却)の経緯も記録する
・会計処理は経済的実態に合わせて実施する(契約上の名目ではなく)
・当期の収益に対応しなければ資産計上するしかない(費用にできない):使った分は費用、残った分は資産
経過勘定(くまのみみ)
払費用(資産):既に支払ったが、当期費用にできないので繰延べる(頻出)
 ・払費用(負債):まだ支払ってないので、将来の支払い見越して当期に負債計上する(工簿の賃金勘定ぐらい?)
 ・受収益(負債):既に入金されたが、当期収益にできないので繰延べる
 ・収収益(資産):まだ入金されてないので、将来の入金を見越して当期に資産計上する
・会計上で費用計上できても、税務上で損金算入できるとは限らない

売掛債権管理(AP)

業務フロー

与信

契約締結

受注

売上計上:収益認識時=売掛債権の発生時

請求:販売担当者と請求担当者は別人にする(職務分離)

回収

与信業務

目的:代金回収の確実性を高めるため

プロセス
①調査:業界の評判を元にしたり、信用調査機構(データバンク)を利用する
 ・定性的分析:評判、交友関係
 ・定量的分析:利益率、在庫回転率
②判断:社内与信基準に基づく判断(取引可否、取引先別の限度額設定、権限者による承認)
③契約締結
 ・契約金額
 ・当社の納品方法・納期
 ・先方の検収方法・検収期日
 ・先方の支払方法・支払期日
 ・当社(売主)の瑕疵担保責任
 ・法規制チェック:独禁法、派遣法(人材サービス)、外為法(外国為替)など
 ・許認可&届出チェック:建築業法など
④継続的管理(月末のみではなく常時)
 ○営業部門
 ・取引先の動向をチェックして経理部門に報告:売ったら終わりではない
 ○経理部門
 ・与信管理台帳と他帳簿を突合し、取引先別に限度額調査を防止
 ・与信限度額の定期的な見直し
 ・取引先に変化(社長交代、業態変更、資本金変更)があった場合、再承認の要請
 ・債権回収

担保の種類
○物的担保
・質権:動産を預かる
・抵当権:不動産を預かる
・留置権:占有権
・先取特権:他の債権者より優先的に弁済を受けられる権利
○人的担保:人質
・連帯保証:債務者本人になったも同然
・連帯債務:ひとつの債務について債務者が複数人
・債務引受:債務の内容はそのままで、債務を他者が引き継ぐ

収益計上業務

○伝統的な収益認識基準

販売基準:「モノの引き渡し」&「受取対価の確定」が揃った時点
・モノの引き渡し:大型機器やソフトウェアの場合は検収完了時点(試運用が必要なため)
・対価の確定:現金ではなくてもOK(売掛金、受取手形)

割賦販売業の場合(例外)
・販売した時点ではなく、実際に代金が回収できた時点まで収益認識を遅らせてもOK(代金回収を伴わない売上になる危険性が高いため)

長期請負工事業の場合(例外)
・完成した時点ではなく、進捗率に応じて段階的に収益認識していってもOK(工事進行基準を適用する場合

売上にかかる収益&費用の種類:区分計上する
・モノの引き渡し:売上高↔︎売上原価
・サービスの提供:役務収益↔︎役務原価

売上金額の計上ルール
・売掛金/売上から控除する:値引、返品、割戻(リベート、キャッシュバック)
・売掛金/売上から控除しない:割引(ディスカウント)
 ・営業部門が行う取引(値引、返品、割戻)とは異なり、財務部門が行う取引(受取利息は営業外費用)
 ・予め販売価格に受取利息相当額を含めておき、もし回収見込日よりも早く支払ってくれるなら、受取利息相当額は免除してあげる、という考え方
 ・回収時に売上割引勘定を計上する
・売上(収益)ではなく負債として計上する:預り金、仮受金、前受金
・概算単価により計上する場合:概算金額にも根拠が必要、精算時に実際売上額へ適切に調整する

請求業務

○内部統制
・請求書の作成後、契約書や得意先台帳の金額と突合する
・請求書には連番をつける(改竄防止)
・請求書の発送担当者は、モノを扱う者(販売担当者・回収担当者・出荷担当者)以外の者が行う
・再請求の場合は、帳簿に二重計上され内容に注意

○管理帳簿

売掛金年齢表:売掛金の未回収月数を管理
・滞留債権を早期発見できる:長期滞留債権は不正の兆候
・入金予定が把握できるので資金繰計画に連動できる
・事務処理ミス(請求漏れなど)を早期発見できる

得意先元帳:売掛金残高を取引先別に管理する(取引先=顧客の個別情報も併せて管理する)
・請求ミス防止
・与信管理の向上
・顧客と営業担当者の癒着防止
・主要な得意先に対しては、期末に残高確認通知を送付し、当社の債権残高と先方の債務残高が一致していることを定期的に積極的確認/消極的確認する(不一致が発生すれば原因調査する)

○回収の滞りに備えた業務:貸倒損失を最小限にするための対策を講じる
・担保の確認や見直し
・相殺できる債務が当社に存在するかを確認
・商品引渡の停止
・貸倒引当金の設定(期末における売掛債権の評価作業)

○貸倒引当金
・BSでは、売掛債権から貸倒引当金(見積額)を控除して、回収可能価額を開示する
・貸倒引当金は、債権区分に応じた方法で設定する
①一般債権(通常):債権をまとめて評価(貸倒実績率法)
②貸倒懸念債権(やや不良):(キャッシュフロー見積法)
③破産更生債権等(不良):売上先の債権ごとに評価(財務内容評価法)

○キャッシュフロー見積法
・貸倒懸念債権化すると、当初の返済条件から、貸付期間の延長や金利の引き下げを申し入れられる可能性がある
・債権から将来的に見込めるキャッシュフローを現在価値に割り戻す

入金確認業務

①入金額の確認
・複数の請求に対して合算して入金される場合があるため銀行から入金明細を入手する
・入金伝票の発行(入金計上)

②請求額と入金額のマッチング
・よくあるのは、振込手数料分の差額が発生するケース

③債権の消込(入金の充当)
・同時に債権台帳からも消し込む

クレジットカード決済による代金回収
①当社はクレジット会社(信販会社)から売上代金を回収
②クレジット会社は購入者(消費者)から代金を回収:貸倒リスクはクレジット会社が負担するため、クレジット会社は事前に信用調査を行なっている
③当社はクレジット会社に手数料を支払う
 ・原則:販売時(クレジット売掛金の計上時)に支払手数料を計上
 ・例外:回収時に支払手数料を計上
 ※GL上ではクレジット売掛金と売掛金は区分計上するが、BS上では売掛金としてまとめて表示する

収益認識基準の改正

○背景
・米国ではモノとサービスの組み合わせ提供が発達し、まとめて収益認識してしまうことに弊害が生じた
・従来は実現主義(曖昧)だったものを、履行義務アプローチ(支配が顧客に移転した時点で収益を認識)に改正した

○日本の状況:会計上の収益認識基準と、税務上の収益認識基準の適用が揃っていない状況(経過措置)
・2018/3:企業会計基準委員会(ASBJ)が「収益認識に関する会計基準」を公開
・2021/4:上場企業には強制適用(伝統的な収益認識基準は使用不可)、中小企業の場合は伝統的な収益認識基準を使い続けてもOK

○顧客への支配の移転
①当社が顧客から対価をもらえる権利を獲得したこと
②顧客が資産に対する法的所有権を獲得したこと(不動産なら登記済であること)
③当社が顧客に物的占有権を移転したこと
④顧客が資産の所有に伴う経済価値享受とリスク負担を開始したこと
⑤顧客側で資産を検収したこと

○適用範囲:顧客との契約から生じる収益
適用対象外
・固定資産の売却
・金融商品取引(有価証券など):金融商品会計基準の適用範囲であるため
・リース取引:リース基準の適用範囲であるため 

○収益認識の5ステップ(履行義務アプローチ)
計上単位を決める
①顧客との契約を識別:契約で当社が果たすべき義務の種類は何か?(販売、建設、顧問契約、など)
②契約における履行義務を識別:義務は何個か?(モノの引渡義務、メンテナンスサービスの提供義務、相談対応義務、など)
計上金額を決める
③取引価格を算定(値引や返金の額などを控除し、変動対価を考慮する):見込額
④取引価格を履行義務に配分
計上時期を決める
⑤履行義務が充足された(モノが引き渡された)/充足するにつれて(サービスを提供するに伴って)、収益を認識する

○顧客の定義

○グロス(両建総額経理)かネット(純額経理)か?
・グロス処理できる場合:当社が、履行義務の主たる責任(価格設定の裁量権など)を有し、在庫リスクも負担している場合
・ネット処理しなければならない場合:手配のみである場合
 ※ただし消費税法上は、ネット処理ではなくグロス処理しなければならない

個別論点


売上割戻

費用をどの期間に帰属させるか?(販売した期?回収した期?)

法人税法上の取り扱い
・会計上、収益認識基準を適用している場合(大企業):販売事業年度(見積額を未払金に計上している段階=まだキャッシュバックしていない段階でも費用計上できる)
・会計上、収益認識基準を適用していない場合(中小企業):キャッシュバックした時点まで費用計上できない

買掛債務管理(AR)

業務フロー

仕入前:下請法の考慮

仕入計上:買掛債務の発生時

支払

下請法(下請代金支払遅延等防止法)

・独禁法(公取委が管轄)を補完するための特別法
・目的:親事業者の不当行為から下請事業者を保護するため
・親事業者⇔下請事業者の関係に該当するかどうかは、取引内容や資本金差異により変わる(該当しなければ下請法の適用対象にならない)

①親事業者の禁止事項
・発注したモノを受け取らない
・有償支給材料等の代金を支払期日到来前に相殺/請求する

②親事業者の義務
・契約書や注文書に支払方法/支払金額/支払期日を文書化する
・委託内容をエビデンスに文書化し保管する(2年間)
・代金の支払いは60日以内に支払う(遅延した場合は利息相当額を支払う)

仕入業務

○買掛金/売掛金と未払金/未収金の違い
商品に対する未払代金/未回収代金→買掛金/売掛金
商品以外に対する未払代金/未回収代金→未払金/未収金

※例
・割賦購入した固定資産の未払分:未払金
・非経常取引(固定資産や有価証券の購入)代金の未払分:未払金
・継続する役務提供に対して既に提供された役務に対する対価の未払分(借入金やリースに対する支払利息):未払費用

○仕入の認識基準:仕入/買掛金の計上タイミング
・「モノの受け入れ」&「支払対価の確定」が揃った時点
・どれを選択するかは企業の自由(会計方針)

モノの受け入れ
・発送基準:発送された日

・入荷基準:着荷した日
 ・当社作成書類(注文書)と先方作成書類(納品書&請求書)を確認

・検収基準(推奨):検品が完了した日
 ・返品を確定した後
 ・検収報告書を作成し、納品書と合わせて購買部門に確認を依頼する

・支払基準:代金が支払われた日

支払対価の確定
・金額が確定していれば、支払タイミングは前払い/後払いのいずれでもOK

○費用の認識基準:2段階の過程
①まず「発生主義の原則」により認識する
②その後「費用収益対応の原則」により実現収益に対応する部分のみが費用計上できる

※例
①10個の商品を仕入れる(仕入費用が発生)
②販売できた商品が8個なら、8個分の売上原価は費用計上(PL)できるが、残り2個分は資産(BS)のまま翌期に繰越

支払業務

○期日別債務残高管理:金額ではなく支払期日に着目
○滞留債務のチェック:原因を調査しても判明しない場合のみ「雑収入」科目に振り替える
・支払漏れ
・先方から未請求
・保留している支払
・二重計上
・記帳誤り
・消込漏れ
・架空仕入

○仕入別元帳:仕入先ごとの買掛金残高に着目
・仕入先情報(支払条件、支払期日、支払手段、振込手数料、仕入額、売掛金残高など)をまとめて管理できる

○支払の流れ
請求書の到着

購買部による照合:購買部が、注文書(自社控)と検収書(先方発行)をチェック
↓記帳依頼
支払依頼書の作成:経理部が作成
↓支払依頼
財務部による照合:財務部が、支払条件に適合しているかをチェック

支払&支払伝票の作成:財務部が出金
↓記帳依頼
支払債務の消込:経理部

○買掛金支払時の注意点
・支払額が減額される場合
 ・仕入値引、割戻、割引
 ・当社債権との相殺
・請求書と管理簿に支払済である旨を明示する(押印など)
・出納/記帳/照合の担当者を別人物にする
・支払ったエビデンスとして、領収書を入手して保存する
・当社債権残高と先方債務残高を定期的に照合する
 ・内部牽制(内部ルールだけでなく外部ルールでも確認する)
 ・双方での不正を防止する

仕入値引・割戻・割引

○仕入値引
・値引が確定した時点で、仕入/買掛金の逆仕訳を行う
・その時点で仕入れた商品が売れ残っていれば、商品評価損を計上する

○割戻(リベート)
営業取引
・支払金額の減額、またはキャッシュバック
・仕訳の計上日
 ・仕入日:契約時点で算定基準が明示されている場合は、仕入時点で割戻を受けれることが分かるため
 ・割戻額の通知を受けた日:仕入時点では割戻を受けれるか不明な場合

○割引(ディスカウント)
財務取引
・当初の買掛金に含まれていた支払利息分を免除してもらった(収益を得た)と考える
 買掛金 / 仕入割引

在庫管理(MM)

在庫(=棚卸資産)の金額は、当期の売上原価(費用)を通じて売上総利益(利益)の金額に影響するため、定期的に実地棚卸による測定を行う必要がある

○棚卸資産:まだ売上原価(費用)になれていない費用性資産
・使いかけや売れ残り:材料→仕掛品→半製品→製品、商品
・貯蔵品:消耗品等(使えば「消耗品費」)、切手(使えば「通信費」)、印紙(使えば「租税効果」)

実地棚卸

・定期的(期末など)に物理的な在庫の数量や品質を確認すること
・帳簿残高(商品有高帳の記録など)と実際残高が異なる場合、帳簿残高を修正(修正仕訳)して実際残高に合わせる

・在庫数量が確定することにより、売上原価(=売上数量×単価)も確定できる
・不良品や陳腐化品を検出できる(在庫品質の適正化)

○事前準備:時間も手間もかかる作業なので準備が必要
・在庫の配置図
・実地棚卸スケジュール
・実地棚卸要領(マニュアル)
 ・必要な書類の作成方法
 ・実施結果の報告方法
 ・棚卸差異の会計処理方法

○実地棚卸が困難な場合(例外)
・継続適用することを条件(利益操作を防止するため)とし、サンプルに対する実施結果を以て全体を推定することも認められている(部分計画棚卸)

○棚卸差異の発生原因
・実地棚卸結果に誤りがある
 ・現品の数え間違い(棚卸札の集計ミスも含む)
 ・保管中の減耗(紛失、盗難)
 ・翌期仕入分を当期仕入分としてカウントしてしまう
・記帳に誤りがある
 ・入出庫伝票の誤りと紛失
 ・記帳時の誤り
 ・在庫処分の報告漏れ

○実地棚卸に伴う会計処理

①まず、期末在庫数量を確定させる
・継続記録法:受払記録を継続的に行えるような場合
 ・帳簿残高よりも実際有高が少なければ、減耗損を計上する
  ・正常な減耗損(原価性あり=営業上通常):売上原価または販管費
  ・以上な減耗損(原価性なし=営業上まれ):特別損失または営業外費用(金額が僅少な場合)
・棚卸計算法:払い出し記録を継続的に行えないような場合
 ・実際有高=売れ残った分として考えることにして、それ以外は全て売れた分(売上原価)として考える:減耗があったとしても認識できないため

②次に、期末在庫単価を確定させる
・棚卸資産は費用性資産なので、評価方法は取得原価
・取得原価の計算方法
 ・先入先出法
 ・平均原価法
 ・最終仕入原価法
 ・売価還元法(小売業のみ適用可):在庫の売価(管理可能)に原価率をかけて原価を見積もる

③最後に、売上原価を算出する
・期末在庫数量×期末在庫単価=期末棚卸高
・期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高=売上原価

④評価損の計上
・棚卸資産について「取得原価>正味売却価額」となった場合は、評価損を計上して簿価を引き下げる
 ・正常な評価損:売上原価に含める(投資の失敗として扱う) ※減耗損とは異なり販管費になることはない
 ・異常な評価損:特別損失または営業外費用(金額が僅少な場合)

在庫の受け払い

・現品の受け払いと帳簿上の受け払いを一致させる
・経理担当者が管理する会計帳簿とは別に、入出庫担当者は台帳(商品有高帳)を作成し、エビデンスと照合して入出庫管理を行う(内部統制)
・定期的に実地棚卸を行い、実際有高と帳簿残高の整合性を確認し、差異の原因を究明する

在庫が生じる原因

仕入から売上までの期間が
・長すぎると、過剰在庫
・短すぎると、過少在庫(欠品)
の原因になるため、適正在庫量(需要に対応する量)を維持できるように管理基準を設定する

過剰在庫によるデメリット
・在庫の陳腐化(廃棄損の発生)
・実地棚卸の作業コスト増加
・保管コストの増加

付随費用と取得原価

仕入にかかる付随費用
・商品が販売できるようになるまでにかかった費用は、全て取得原価に算入する(資産として計上され、売れるまでは費用計上できない)
・ただし、重要性の乏しい費用は直接費用処理することが認められている(例外)

販売にかかる付随費用
・販売管理費や廃棄損で費用処理する

固定資産管理(AA)

固定資産の種類

○固定資産の種類:使用目的(転売目的を除く)で1年超所有する資産
・有形固定資産
・無形固定資産
・投資その他の資産:投資有価証券、投資目的で所有している不動産(賃貸収入目的)、など

圧縮記帳

・固定資産の取得原価計上に関する特殊な処理
・元々は法人税法の処理
・固定資産を買い替える場合、旧資産の売却益は課税対象になってしまうため、新資産の購入資金が少なくなってしまう。これは事業継続を妨げるため、税法上の優遇措置として、売却益と同額の圧縮損の計上が認められている。圧縮損を計上した分、新資産の取得原価を減額させる。
・買い替えた期の課税所得は減額されるが、翌期以降の新資産の減価償却費が減ることになるため、結果的には課税の繰延(後払い)に過ぎない

減価償却

固定資産の取得原価を
・稼働日(取得日ではない)から
・経済的耐用年数(物理的耐用年数ではない)にわたって
規則的に費用化(期間配分)すること

※減価償却は、資産価値を記録しているわけではなく、適正な費用計上額を算出するために行なっているだけ
※非償却資産:土地や建設仮勘定は減価が起こらないため、減価償却しない

耐用年数
・税法上では、資産の種類/用途などごとに、法定耐用年数が規定されている
・法定耐用年数を会計上で使うことも認められている
・もし企業が独自の基準で耐用年数を定める場合、基準とエビデンスの整備運用が必要になる

残存簿価(残存価額)
・2007年税制改正まで、日本では、法定耐用年数が過ぎた後でも、固定資産の価値は10%残存する(残存価額)と定められていた(100%償却が認められておらず日本企業の設備投資を抑制していた)
・2007/4/1以降、耐用年数が到来した後の有形減価償却資産には、実質的な価値がなくなり、残存簿価(備忘価額)として1円だけ残すことになった
・残存価額および残存簿価の計算方法は、減価償却を行なう資産の取得年月日によって変わる


実務上の特例

○少額減価償却資産
・取得価額10万円未満または使用可能期間1年未満の資産
・取得時の費用として計上してOK(税務上も損金参入してOK)

○一括償却資産
・取得価額20万円未満の資産
・取得時から3年間均等分割で費用として計上してOK(税務上も損金参入してOK)

○租税特別措置法(青色申告を実施している中小企業・個人事業主のみ)
・取得価額30万円未満
・取得時の費用として計上してOK(税務上も損金参入してOK)

減価償却の計算方法

定額法
・償却率:1/耐用年数
・最後の期間は1円残す

定率法
・償却率:(1/耐用年数)×200%
・減価償却費が償却補償額を下回った場合、以降は改定保証率を使う
・最後の期間は1円残す

BS上の表示方法

・直接控除方式:資産勘定のみで直接表示
・間接控除方式:減価償却累計額を使って控除表示
※無形固定資産(価値がいくら減少したのかを考慮する必要がないため)は直接控除方式のみ

減損

・棚卸資産の評価損と同じ考え方(投資が失敗した場合の会計処理)
・損失の可能性に気づいた期に損失を計上する(先送りはNG)
・有形/無形/その他いずれにも適用される可能性があるが、以下は例外
 ・金融商品:「金融基準(金融商品に係る会計基準)」が適用されるため
 ・繰延税金資産:「税効果会計に係る会計基準」が適用されるため

減損会計の手順
①兆候を確認:不採算な案件を特定する
②判定:ざっくりと判定する
③損失の測定と計上:精密に計算(割引現在価値など)して損失計上し資産価値を落とす
 ・「正味売却価額」と「使用価値のPV」のいずれか大きい方を回収可能価額とする
 ・現在の簿価を回収可能価額にまで落とし、減損(特別損失)を計上する

BS上の表示方法
・直接控除方式(原則):資産勘定のみで直接表示
・間接控除方式(例外):減損損失累計額を使って控除表示
※無形固定資産は直接控除方式のみ

修繕費

・修繕費(収益的支出):期間費用として計上できる
・資本的支出:費用計上できない(資産の取得原価に算入される)

除却

・固定資産を使用しなくなること
・減価償却を仕切っていなくても、除却してOK(企業の自由)
・除却処理を行うと、固定資産勘定から除却固定資産勘定に振り替え、除却損を計上する

ファイナンスリースとして借りた固定資産

○リース取引を利用するシーン
・本来は自社で固定資産を購入したいが、購入資金が不足していた
・銀行から借り入れることもできなかった

○リース取引の種類
・FLとして見なされてしまう場合:原則として、借り手は複雑な処理(売買処理)を求められる)
 ・ノンキャンセラブル(中途解約不要)
 ・フルペイアウト
・それ以外はOL:借り手は簡単な処理(賃貸借処理)で済む

○FLに該当する条件:自前で購入したも同然と見做せる場合
・現在価値基準(フルペイアウト):リース料総額のPVが、購入金額の90%以上である場合
・経済的耐用年数基準(ノンキャンセラブル):リース期間が、購入資産の経済的耐用年数の75%以上である場合

○例外処理
・FLとなる要件を満たしても、以下の条件を満たせば、賃貸借処理(=オフバランス処理=BS計上せずPL計上のみの処理)にすることができる(実務を簡便にするため)
 ・所有権移転FLであり、かつ
  ・リース期間が1年以内
  ・少額資産
 ・所有権移転外FLであり、かつ
  ・重要性が乏しい(1件あたりリース料総額が300万円以下)
  ・リース期間が1年以内
  ・少額資産

○借入金とFLの仕訳の比較
・経済的実態が同じなので、会計処理も同じ(賃貸借処理ではなく売買処理)にしなければならない

▼借入金
<借入時>
現金/借入金
<固定資産購入時>
固定資産/現金
<返済時>
借入金/現金
支払利息/

▼FL
<契約開始時>
リース資産/リース債務
<リース料支払時>
リース債務/現金
支払利息/

資産除去債務

・有形固定資産に対して、除去する際に、法令または契約により要求される義務(原状回復義務など)
・認識時(有形固定資産の取得時)に全額を負債として計上する 
 ・将来における支出見積額の全額を、当期末におけるPVに換算し、資産除去債務として負債計上する
 ・資産除去債務と同額を取得価額として計上する

固定資産税等

・儲けとは無関係に、固定資産を所有しているだけで課せられる税金
・国税ではなく地方税

○種類
・自動車:自動車税
・土地や家屋:不動産の固定資産税
・備品や機械:償却資産の固定資産税
 ただし、以下のものを除く
 ・少額減価償却資産(10万円未満)として費用処理したもの
 ・一括償却資産(20万円未満)として費用処理したもの

○免税要件
同一地域内にある償却資産の課税標準額(≒簿価)の合計額が150万円未満なら、免税

○申告・納付
・固定資産を1/1時点での所有者
・申告期限:1/31
・申告先:資産の所在地
・納付時期:4月/7月/12月/2月

固定資産台帳による管理

・各固定資産の内訳明細帳

○メリット
・減価償却費の算出
・売却除却時の損益計算
・実地棚卸高との照合
・資産プロフィールの管理
 ・資産ID
 ・管理者
 ・所在地
 ・利用状況:稼働中/有休中/除却済/廃棄済
 ・実地棚卸情報

ソフトウェア管理

○会計基準:「研修開発費等に係る会計基準」

○定義
・プログラムおよび関連文書
・データは含まれない

○会計処理:制作目的別により異なる
・受注制作目的(売上先が決まっている):長期請負工事と似ている
・市場販売目的(売上先は不特定):製造業と似ている
・自社利用目的:固定資産の購入利用と似ている

○受注制作目的
・製造原価は仕掛品→製品→売上原価
・「工事契約基準」(「新収益認識基準」の成立により、将来的には廃止予定)を適用する
 ・進行基準
 ・完成基準

○市場販売目的
①計画設計段階:この段階で投下したコストは、研究開発費として費用計上
②製品マスターの完成後:
・メンテナンスのための費用:ソフトウェア制作費として費用計上
・バージョンアップ(製品化に向けた僅かな変更)のための費用:ソフトウェアとして資産計上
・著しい変更のための費用:研究開発費として費用計上(資産計上できない)
③製品(コピー可能)の完成後:
・製造(コピー)にかかる費用:仕掛品として資産計上

○自社利用目的
・完成品を購入して自社で使う場合と同様の処理
・制作したソフトウェアが自社ビジネスに
 ・確実に貢献している場合:資産計上し、将来の収益に対応させて費用配分する
 ・貢献しているか不確実な場合:費用処理するしかない

○ソフトウェア資産の減価償却
・市場販売目的:見込販売収益総額のうち、当期売上相当分を償却
・自社利用目的:見込利用可能期間のうち、当期利用経過月数分を償却

償却方法:残存価額はゼロ
・研究開発費:会計上では費用、税法上では3年で定額法償却
・市場販売:会計上でも税法上でも、3年以内(見込有効期間)に定額法償却
・自社利用:会計上でも税法上でも、5年以内(見込利用期間)に定額法償却

○ソフトウェア資産の除却
・除却要件:会計上よりも税法上の要件の方が厳しい(無形のものを利用しなくなったことを立証するのは難しいため)
 ・自社利用目的
  ・会計上:使用見込みなし
  ・税法上:実際に利用しなくなった
 ・市場販売目的
  ・会計上:販売中止
  ・税法上:ソフト原本の利用廃止

○ソフトウェア利用期間(耐用年数)に見直しがあった場合の処理
・当期以降に修正を反映すればよい(過去の償却費に遡って修正する必要なし)

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