【読了】金融システムの教科書

FinTech企業の内部監査人としてはエンジニアさんと会話できないとやばい

はじめに

金融業界のシステムの特徴
・金融サービスは情報処理産業(お金はデータ化されていてモノをやりとりすることはない)であるため、早期からシステム化が進んだが、そのせいで複雑かつブラックボックス化した構成になってしまっている
・金融サービスは許認可事業なので、規制対応にかかるシステム要件が多い
・金融サービスはインフラであり、金融機関にとっては信用が重要なので、非機能要件のレベルも高い

ネットワーク効果:ネットワーク型サービス(携帯電話など)では、加入者数が増えれば増えるほど、加入者の便益が増加する

第1章 SEならば知っておくべき金融業界の基礎知識

システム化される前、例えば銀行業務(預金出金、利息計算など)は労働集約的な手計算と紙面点検により行われていた

融資/資金調達の方法
・直接金融(市場取引):金融機関の仲介が不要、株式投資など
・間接金融(相対取引):金融機関の仲介が必要
 ・銀行預金:伝統的な間接金融
 ・金融機関が資金需要者が発行した商品をパッケージ化して資金供給者に提供する方式:投資信託、証券化商品
 ・金融機関が資金供給者を集めて融資する方式:ファンド、年金、シンジゲートローン

銀行中心の金融システムだと銀行にリスクが集中してしまうため、様々な資金調達の方法があった方がリスク分散されて良い

金融サービス事業者の分類

・預金取扱期間(預取):銀行、信託銀行(信託と併営ができる銀行)、共同体金融機関(信用金庫など)
・公的金融機関:政府系金融機関
・金融商品取引事業者:証券会社、投資信託委託会社(ファンドマネージャ)
・保険会社:生保、損保
・ノンバンク
 ・消費者金融/事業者金融
 ・クレカ会社
 ・信販会社
 ・リース会社
 ・ファクタリング会社
 ・ベンチャーキャピタル

金融業界システム化の歴史(日本)

・1960年代(第1次オンライン):本支店間の勘定系システムが連結され、預金入出金業務が容易になった
・1970年代(第2次オンライン):
・1980年代(第3次オンライン):SWIFT(1973年稼働開始)に接続
・1990年代
・2000年代:上場企業株券の電子化(日本唯一のCSDである保振が管理)
・2010年代:電子記録債券機関のサービス開始(2008年電子記録債権法)
・2020年代

利用者保護のための法規制

金融庁によるシステム統合リスク管理態勢のチェック

証券化商品

ABS(資産担保証券)
・MBS(不動産担保証券):不動産ローンを裏付け資産としたもの
・CDO(債券担保証券):企業債務を裏付け資産としたもの
 ・CLO(ローン担保証券)
 ・CBO(社債担保証券)

CDS

企業の債務不履行に伴うリスク(信用リスク)に備えた保険のようなもの

ストレステスト

市場リスクの管理方法
・従来はVaRという手法により市場リスクをモニタリングしていた
・リーマンショック以降、VaR(過去データに基づく統計的推測)では「例外的ではあるが起こり得るイベント」に対応できないことが明らかになったため、ストレステストが導入された
・ストレステストは、統計モデルに依存せずに、金融機関のエクスポージャ(リスクに曝されている金融資産の金額)を算定できる
・具体的な手法には以下がある
 ・特定の市場性リスクファクタを変動させて金融機関のポートフォリオに及ぶ影響を測定する手続(感応度分析)
 ・想定されるイベントについてシナリオを設定し、それに基づいて感応度分析する手続(シナリオ分析)

第2章 金融業をとりまく法規制やルール、金融検査のしくみ

○業法:特定の事業者が守るべき法規制
・銀行:銀行法、信託法、預金保険法
・証券会社:金融商品取引法
・保険会社:保険業法
・貸金業:貸金業法、割賦販売法

○金融取引に関連する法
・金融サービス提供法(金融商品販売法から2020年に改称):消費者への説明義務
・個人情報保護法
・犯罪収益移転防止法:本人確認や疑わしい取引届出の義務
・預金者保護法:キャッシュカードの不正利用対策
・金融商品取引法

銀行業に対する規制

BIS規制(バーゼル規制)
・1988年:システミックリスク(破綻連鎖リスク)を押さえるため、一定値(国際業務ありなら8%、地銀なら4%)以上の自己資本比率の確保を義務付ける
・2006年:バーゼルⅡの適用開始、査定方法が詳細化
・2023年:バーゼルⅢの適用開始、リーマンショックを伴った金融危機を踏まえた見直し

保険業に対する規制

ソルベンシー規制
・1995年:ソルベンシー・マージン比率(支払余力)の導入
・2025年:経済価値ベースのソルベンシー規制の導入

証券業に対する規制

自己資本規制比率
・140%を下回った場合、証券会社は金融庁に届け出る
・100%を下回った場合、証券会社は金融庁から業務停止命令を受ける可能性あり

金融庁の役割

・監督(オフサイト):定期的な報告要請(モニタリング)、「監督指針」に基づく
・検査(オンサイト):必要に応じた立入検査、「検査マニュアル」に基づく(2019年に廃止)

金融サービス業のリスクカテゴリ

○財務リスク(3大リスク)
・信用リスク:貸倒損失を被るリスク、定量化(バーゼル規制対応)に基づき適切な引当とポートフォリオ見直しを行う
・市場リスク:金利/株価/為替などの変動に伴う損失を被るリスク、VaRなどの手法で管理
・流動性リスク:資金繰りに失敗するリスク(取り付け騒ぎ、大量解約)、市場流動性リスク(価値が暴落して市場で買い手がいなくなり、著しく不利な価格でしか売れなくなる)

○非財務リスク(オペリスク)
・事務リスク:従業員のミス
・モデルリスク
・事業継続リスク:最低限のオペレーショナルレジリエンス(オペレジ)の確保
 ・外部委託リスク
 ・システムリスク:システム障害、サイバー攻撃
 ・感染症リスク
 ・自然災害リスク
・法務リスク
 ・個情法違反
 ・AML/CFT規制違反
・労務リスク
・レピュテーションリスク:評判が毀損する
・コンプライアンスリスク
 ・コンダクトリスク:違法行為には該当しないものの社会規範に悖る
・戦略リスク
 ・気候変動リスク
 ・経済安全保障リスク

○業態固有のリスク
・決済リスク(銀行業):予定通りに決済ができずに損失を被る
・保険引受リスク(保険業):保険料の設定ミスで損失を被る
・流出リスク(暗号資産交換業):ウォレットの秘密鍵が流出して損失を被る

第3章 銀行の業務内容とシステム

銀行システムの特徴
・銀行は古くからシステム化されたため密結合になっており、勘定系が稼働していないとシステム全体の処理が止まる
・一方、一般的な企業ではシステム同士が疎結合であるため、勘定系(会計システム)が稼働していなくても他システムは動く

○情報系
・顧客管理システム
・営業支援システム
・経営管理システム

○勘定系
・オンライン
・バッチ

○市場系:市場で資産運用を行うためのシステム、各種金融機関(銀行、保険、証券、アセマネ、商社など)が同様の業務(資金証券部門、資産運用部門)を行なっているためパッケージ製品が導入されていることが多い
・フロントシステム:取引執行(注文約定、プライシング、ポジション管理、与信管理、市場分析)
・ミドルシステム:リスク管理(時価評価、業績測定、リスク測定、ストレステスト、コンプライアンス)
・バックシステム:事務管理(資金管理、証券管理、法定帳簿管理、報告)

○国際系

○チャネル系
・対内接続:営業店、ATM
・対外接続:全銀システム、日銀ネット、ほふり、SWIFT、CAFIS、共同CMS(資金管理)
・対顧客接続:ファームバンキング、ネットバンキング

第4章 保険会社の業務内容とシステム

生命保険システムの特徴
・超長期に亘る契約を管理するためデータ量が膨大:新契約システム、契約保全システム
・複雑な数理計算ロジックが必要:数理分析システム(保険計理人向け)
・健康状態などプライバシー情報を扱う
・営業職員を経由して契約することが多い:営業タブレット端末システム

損害保険システムの特徴
・代理店を経由して契約することが多い:代理店システム
・自賠責保険は国が制度を定めているため保険内容が共通:e-JIBAI

第5章 証券会社の業務内容とシステム

・注文系システム:顧客の口座残高を確認(買付余力の与信)し、コンプライアンス違反(インサイダー取引など)の有無を確認し、証券取引所に注文を送信する(申込日
・約定系システム:約定日(T)に証券取引所から売買結果を受信し、取引明細を管理する
・決済系システム:清算機関である日本証券クリアリング機構(ネッティングを行う)と連携し、受渡日(T+2)に売買代金を清算する(口座残高から差し引かれる)、清算後に決済機関である証券保管振替機構の内部で証券が受け渡し(決済settlement)される

証券会社システムの特徴
・ディーリング/トレーディングシステム:アルゴリズム取引
・システム開発運用は自社ではなくアウトソースしている場合が多い

第6章 ノンバンク(クレジットカード会社、信販会社、消費者金融)の業務内容とシステム

第7章 金融市場と資金証券システム、証券取引所、金融市場・機関間のネットワークのしくみ

具体的なプロダクト


取引モニタリングシステム(TMS)・ALM/CFTシステム

・AMLion(アムリオン):DTS

・シンプレクス

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